永遠の世界で飛び続ける紙飛行機
「見ろ」
おじさんが紙飛行機を飛ばす
その紙飛行機は永遠に飛び続け、一向に落ちてこない
「この世界から終わりが無くなった」
「…………」
「それってどういうこと?」
「ここに虫がいるだろう」
それを何の躊躇もなく踏み潰す
しかしその虫は何事も無かったかのように平然と動いている
「今のこの世界はどんな生き物も死なない」
「俺たちは永遠に生き続けることになる」
「それっていいことじゃないの?」
「どうなんだろうな…この歴史上、一度も無かったことだからな」
「ただ、誰も死なないってことは…」
「戦争も永遠に続いていくことになる」
「…………」
~~~~~
空襲のサイレンが鳴り響く
空から無数の爆弾が投下される
人々は地下シェルターへ逃げていくが、そこまでの必死さは感じられない
永遠の世界になった今、爆撃で死ぬことはないからだ
とはいえ、建物の倒壊によって身動きが取れなくなる可能性がある
なので生き残る為ではなく、仕方なしという感じで走り歩きをしながら皆は逃げていく
しばらくして空襲が終わる
当然、死亡者はいない
そして、空にはまだ飛び続ける紙飛行機があった
たった一つの紙飛行機すら落とせないのに、何の為に戦争を続けるのか
「…………」
空を眺める
どれだけ時間が経っても太陽は沈まない
永遠に今日が続いていくのだ
突然始まった永遠の世界
この永遠からは誰も抜け出せない
「僕はいつ大人になれるの?」
おじさんにそう聞いた
「永遠の世界では時は流れない」
「お前はいつまでもずっと子供のままだ」
「そんなの嫌だよ、大人になりたい」
「どうしたらいい?」
「さあな、俺には永遠に分からない」
「…………」
どうして世界はこんな風になってしまったのか
それが分かれば、世界を元に戻すことが出来るかもしれない
「おじさん 僕、旅に出るよ」
「旅?」
「そう、この世界のことを知るために」
「……そうか」
「行ってもいい?」
「俺はお前の親じゃねえ、好きにすればいいさ」
「そっか」
「…………」
「行き先は決まってるのか?」
「ううん、どこに行けばいいかも分からないから」
「そうか、それなら北に進むといい」
「その先には王国がある」
「世界を知るにはそこに行くのがいいだろう」
「分かった、ありがとう」
「……お前と一緒に過ごす日々に終わりが来るなんてな」
「死なないとはいえ、気を付けろよ」
「うん、行ってきます」