不安
友田悠は、両親の家から沙希子の家に送っていく車の中で、優しく話しすよう努めた。
「沙希子、不安は共有したいんだ。
解決したいし……叶えられるものもあるかもしれないから……
話してくれる?」
「………。」
「ゆっくりでいいんだ。」
「ありがとう。」
「当たり前だよ。」
「ありがとう。」
「うん。」
「私……私ね……結婚式に憧れてなかったの。」
「そうだった?」
「うん。だから……しなくても……って思ったの。」
「そっか……。」
「ごめんね。色々、考えてくれて、嬉しかった!
ごめんなさい。」
「いいよ。俺が先走り過ぎたから……。
沙希子に何も聞かないで、話、進めたね。
俺こそ、悪かった。」
「そんなことない! 友田君は悪くないの。
悪いのは私なんだから……。」
「ありがとう。
これからは、もっと話そう。」
「うん。」
「不安に思ったら、悩む前に俺に話して!」
「うん。」
「必ずだよ。」
「はい。」
家に着いた時、抱きしめた。
何だか沙希子が離れて行くようで怖かった。
悠は後悔していた。
沙希子の気持ちを優先すると決めてたのに出来ていなかった。
ゆっくり身体を離して沙希子の顔を見ると涙の跡があった。
それを見た途端、離したくない! 帰したくない! と思い、また抱きしめていた。
腕の中で沙希子が謝った。何度も……。
「ごめんなさい。」と……。
その言葉を聞くたびに、悠は「謝らないで!」と言った。
沙希子が顔を上げた時、そっと沙希子の唇に触れた。
沙希子にとって初めての口づけは、優しくそっと触れるような口づけだった。
ゆっくり離して……もう一度抱きしめた。
暫く沙希子を抱きしめていた。
家の中から音がした。
驚いて沙希子を離した悠は「帰らないと、ね。」と言って、車から下りて沙希子と玄関まで歩いた。
沙希子が玄関ドアを開けると、そこに海が居た。
海は悠の姿を見つけると、走って行って甘えた。
「こんばんは。海君。」
「お帰りなさい。まぁ海ったら……。」
「ただいま。」
「すみません。遅くなってしまって……。」
「そんなに遅くないわよ。上がって! 友田君。」
「いいえ、今日はこれで失礼します。」
「まぁ、送って頂いて本当にありがとうございました。」
「こちらこそ……急に親が会いたいって言いましたから…。
急で申し訳ありませんでした。」
「いいえ、有難いことですわ。
ねぇ、沙希子。」
「うん。」
「じゃあ、失礼します。」
「はい。ありがとうございました。」
「沙希子……また……。」
「うん。またね……。」
家を出て車に戻って帰路に就いた。
もう沙希子の涙を見たくないと思った。
もっと、ちゃんと話し合えるようにならないと……。
これからは夫婦になるのだから……。
そう思った。




