デート
友田悠に連れて行って貰った店に入った。
奥の席は空いていなかった。
どこに座って待っていようか?と考えている時に、「ここに座ろう。」と……。
振り返ると悠が居た。
先に座った悠の後で向かい側に座ると、急いで来た悠が息を整えていた。
「良かった。来てくれた。」
「あ………。」
「来てくれなかったら、どうしようか……って……。
凄く不安だった。」
「どうして?」
「なんとなく……不安なんだ。
……何、飲む?」
「ウインナコーヒー。」
「すみません。ウインナコーヒーとブレンドで…。」
「はい。承知しました。」
「この後、ご飯食べよう。」
「うん。」
「何食べたい?」
「なんでも……。」
「それ、一番困るやつ!」
「あ………じゃあ、ラーメン。」
「ぷっ……。」
「何か変なこと言った? 私………。」
「前もラーメンって言ったと思って………。」
「前?」
「うん。俺が麻美に振られた直後位だったと思う。
残業して二人で食べたよな。あの時、沙希子、今と同じ返事だった。
ラーメン好きなんだな。」
「よ…く…覚えてるね。」
「あの頃、俺、酷く落ち込んでてさ。
沙希子があの時に居てくれて助かったんだ。
だから、覚えてるんだ。
……麻美に関して覚えてるのは嫌?」
「……ううん。そんなことない……。」
「良かったぁ~。」
店を出る時、悠は手をそっと重ねて繋いだ。
今日は強引に手を繋ぎたくなかった。
「手を繋ぐの嫌?」
「ううん。」
「良かった。」
ただ、歩いているだけなのに緊張している二人。
「初デートだね。」
「うん。そうね。」
「休みの日、会いたいんだけど……。」
「うん。」
「いいかな?」
「うん。」
ずっと頬を染めて「うん。」くらいしか言えない沙希子から他の言葉を聞けるようになりたいと悠は思った。
⦅そういえば……沙希子。
マッチングアプリで出逢った奴とデートしたんだ。
上書きしたい!⦆
この日、友田悠は橋本沙希子に聞く勇気が無かった。
聞きたいことを知っている可能性がある富田優一に聞くことにした。
⦅俺、こんなに狭量だったのか?⦆
狭量だと思われても、知りたい気持ちを抑えられなかった。




