告白
友田悠は緊張していた。
唇が渇くのだ。
胸はずっとドキドキしている。
こんなに告白することは勇気が要るのだと思った。
麻美の時は……思い出せない。
思い出す必要も無いのだと思った。
何気ない話を続けている。
「いつまで続けるつもりなのだ!」と心の中で自分に言った。
声が震えている。
目の前に会いたかった橋本沙希子が居る。
「何故? 俯いてる………。顔を上げて、俺に笑顔を見せてくれ!」と、言いたかった。
何故か言えない。
「いつからか……分からないんだ。」
「何が?」
「信じて貰えるか分からないけど……。」
「やっぱり………。」
「うん? 何? やっぱり、って……。」
「……再婚するの、ね。」
「再婚! 誰が!」
「友田君。」
「ちょっと待って! 誰がそんなこと言ってた? 誰?」
「……誰も……。」
「橋本……なんで?」
「もう、そろそろかなぁ~?って勝手に思ってた……から……。」
「俺は!」
「ごめんね。奥様のこと忘れられないよね。
でも、もう、そういうことがあっても……いいんじゃないかって……。」
「橋本! 聞いて! 頼むから……俺の話を聞いてくれ!」
「うん。」
「顔、見せて……。さっきから、ずっと下向いてる。
俺を見て! 話を聞いてくれないか?」
「ごめん。」
「顔、上げてくれないんだな……。」
「ごめん。」
「じゃあ、そのままで聞いて! 俺の言葉だけを聞いてくれないか。
俺は、いつからか分からないんだけど……
好きだよ。……橋本沙希子が好きだよ。」
「ありがとう。」
「じゃあ……。」
「これからも……。」
「うん。」
「いい友達……違うね。いい同期で……!」
「いい同期……。」
「うん。」
「嫌だ! 俺は嫌だ! 俺の言葉、分かって無いよね。」
「分かって」
「分かってない! 俺は橋本沙希子を愛してる!
いい同期? 嫌だ! いい同期なんか嫌だ!
俺のこと、橋本……お前、俺のこと、嫌い?」
「…………。」
「やっと顔を上げてくれたね。
なんで? なんで泣いてるの?」
「………嘘……そんなはず……ないわ。」
「俺、そんな嘘つきじゃないよ。」
「……信じられないの……。」
「信じて貰うには、どうしたらいい?」
再び、俯いた沙希子の頬を流れる涙を、悠は掬うように拭いた。
手を伸ばして沙希子の頬に触れのは、勇気が要った。
頬の涙に触れた時、愛おしさが込み上げて来た。
「もしかして、俺のこと好き?」
沙希子が小さく頷いてくれた。
胸いっぱいに喜びと安堵と……様々な想いが湧きあがった。
「橋本沙希子さん、俺の恋人になってください。
……頷くんじゃなくて、言葉をくれないか?
俺のこと好きだと言ってくれないか?
俺、凄く不安だったんだ。
安心させて! 頼むから………。」
「……はい。」
「恋人になってくれるって意味の『はい。』だよな。」
「うん。」
「よっしゃ~! ありがとう。……今日、送ってもいいかな?」
「いいの?」
「彼女を送らない彼にはなりたくないよ。」
「私、彼女なの?」
「何回も言った方がいい?」
「……別に……いい。」
「言うよ。何度でも……橋本沙希子は友田悠の彼女です。
彼女になってくれました!」
「……嬉しい……。」
「うん。……俺も……嬉しい!」
沙希子はどうしても信じられなかった。
それほどの有り得ない友田悠の言葉だったのだ。




