結婚願望
沙希子は、これからのことを今までよりもしっかり考えないといけないと思うようになってから随分経つのに、未だに何も目標がない自分に辟易としていた。
何をどうすれば人生の目標が見つかるのか分からないままに日だけが過ぎて今なのだと分かっている。
分かっているのに見つからない。
そんな時に、父から話を聞いた。
桃の花を見ながら……
「綺麗だなぁ~。」
「うん。」
「僕はね。僕たちの世代って言うのが正しいかな?」
「何? お父さん。」
「沙希子たちと違ってね。就職するのが当たり前だったんだ。」
「それは、今も!だと思うけど……。」
「違うよ。違う。僕たちが就職するのが当たり前っていうのと違うんだよ。
僕たちの場合は、生きるために就職したんだ。
僕たちの上の世代はね。食べるのが大変だった。
それを聞いて育ったからね。
生きるため、食べていくために就職するっていう考えだったんだ。
だから、ニートはあり得なかった。
社会問題でもなかったんだよ。あったかもしれないけれど、あっても少なかった
と思うんだ。
沙希子が今、何に悩んでいるか分からないけどね。
仕事をすることで大きな目標を掲げなくてもいいんじゃないかと思うよ。」
「お父さん……。」
「人生の目標に向かって歩める人は幸せだけどね。全員じゃないよ。」
「…………。」
「先ずは日々の仕事を頑張りなさい。
親が死んだ後、自立できるように仕事をしなさい。
お父さん自身が目標などなかったからね。仕事では……。」
「他の目標があったの?」
「あったよ。
それはね。お母さんと笑顔で居られる家庭を作ること。
そして、沙希子を愛して無事に成人するまで育てること。
それだけが目標だった。」
「お父さんの目標は家族だったのね。」
「そうだよ。お前とお母さんの幸せ。」
「じゃあ、達成ね。」
「そうだったらいいね。
沙希子、悩むのはいいけどね。
生きるために働くでいいんだよ。
食べるために働くで充分なんだと思うよ。」
「うん。……お父さん、ありがとう。」
父の話を聞いて、思ったことが二つあった。
一つは、人生の目標を見つけられなくてもいいということ。
もう一つは、愛する家庭がある幸せ。
父と母の居る家が私にはあるのだと思った。
だから、幸せなんだと……。
でも、ずっと先に両親が亡くなって一人になったら?
私は……どうすればいいの?
何を支えに生きていけばいいの?
急に佐伯陽菜が、澪が羨ましくなった。
今までよりも羨ましいと思ってしまった。
誰かと共に生きていくことが、いつか出来ればいいなぁ~!と願った。
願ったけれども、その相手に……好きな人なのに、その人の顔が浮かばなかった。
片想いだから、当たり前のことだ。




