会うこと
友田悠は懸命に走った。
富田優一にナビゲートして貰って走った。
でも、居ない。
姿が見つからない。
「悠、居たか?」
「居ない………。」
「……可笑しいな……道はこの道なのにな……。
ちょっと待ってて、電話で今どこに居るのか聞くから……。」
「ごめん。……頼む。」
「おう!」
一旦電話を切って、優一からの電話が鳴るのを待っている間も周囲を見回して、橋本沙希子の姿を求めた。
電話が鳴った。
「優一! どうだった?」
「悠、あのな……沙希ちゃん、義叔父さんが迎えに来て車に乗って…
家族で桃の花を観に行っているそうだ。」
「……そうか……。」
「悠、今から戻って来るか? うちに来る?」
「いいや、止めとくよ。
考えたら恥ずかしいことしたよな。」
「大丈夫だって!」
「いや、大丈夫じゃない……。奥さんに申し訳なかったと謝っていたって伝えてく
れ。頼む。」
「それはいいけど……。お前はいいの? このままで……会えなかっただろ。」
「仕方ないよ。」
「悠、お前、どうしたかったんだ?」
「どうって?」
「沙希ちゃんを追いかけて何言うつもりだったんだ?」
「……分からない……分からないんだ。……ただ、身体が動いた。」
「そっか……それがお前の本音だな。」
「そう……だな……。」
「麻美さんのこと、気持ちに区切りがついたんだな。」
「そうなのか、な?」
「会わせてやれるよ。沙希ちゃんに……。」
「………!」
「毎週土曜日に沙希ちゃんか義叔父さんと義叔母さんかが、海君を連れて来てくれ
るんだ。
澪が頼んだんだよ。海君とお散歩したいって、ね。
それで、来てくれるから、沙希ちゃんが来てくれるって分かったら連絡出来る
ぜ。」
「うん。ありがとう。」
「じゃあ、そういうことで……。」
「うん………優一、ありがとう!」
「どういたしまして! じゃあな。」
「うん。また……。」
夏でもないのに走ったから汗びっしょりになっていた。
暫く涼んでから帰宅しようと思った。
「沙希子に会える。」ことが、これほど嬉しく想えるようになるとは……それを驚いていた。




