会いたい
佐伯陽菜は、友田悠の気持ちが橋本沙希子に向いているのではないかと思いだした。
「あのね、沙希子がデートしたって言った時、辛そうな表情だったのよ。
もしかしたら、友田君、沙希子のこと気になるようになった?
もしかしたら、好きになった?
ねぇ、あなた、どう思う?」
「たぶん、陽菜が感じたとおりだと思うよ。」
「ねっ! そうでしょ。そうよ。」
「でも、何も出来ないぞ!」
「どうしてそんなこと言うのよ。」
「陽菜が考えそうなことだから……。
見守っていたほうがいいぞ。沙希ちゃんのために……。」
「そうね……分かったわ。見守る。」
二人を見守ると陽菜は決めて過ごしている。
その後、友田悠と橋本沙希子が会う機会は無かった。
佐伯陽菜の家に沙希子が行ったのは、そんな頃だった。
陽菜の1歳の子は、とても愛らしくて……
陽菜の膝に乗っている姿に思わず言ってしまった。
「ねぇ、膝の上の我が子って言うんだって……。」
「何? それ?」
「あのね、うちのおばあちゃんが言ってたんだけどね。
膝の上に乗ってくれる間までが、一番可愛いんだってさ。」
「そういう意味なんだね。」
「ええ、そうらしいです。
それでね。もう一つ、おばあちゃんが言ってた言葉があるの。」
「何、なに?」
「子どもは三歳までに一生分の親孝行をする……っていうの。」
「ほ~~っ……。」
「三歳までの子どもは、可愛いでしょう。
その可愛さだけで、一生分の親孝行を終えてるんだってさ。」
「へぇ~~っ!」
「それでね、その後は、親が親として育つ期間なんだってさ。」
「なるほど………。生まれて直ぐに親になれてないからね。
時間を掛けて親に育っていくって言うことだね。」
「ええ、そういう風に祖母から聞きました。
だから、今、めっちゃ親孝行してくれてるんですよね。」
「そうだね。」
「いい話聞けたわ。」
陽菜の家から帰宅していると、寂しくなってきた。
いつもの通りだった。
友達に会った帰路、いつも寂しくなる。
陽菜には子育てという思い責任がある。
でも、沙希子には何もない。
それを思い知る時間だったのだ。
別に両親から結婚を催促されていない。
穏やかに暮らせることは幸せだと思っているが、何も無いことが不安を募らせる。
仕事に夢中でもない。
仕事で役職に就きたいとは思っていない。
沙希子は何も無いのだと改めて思った。
だから、寂しいのだと思った。
夜空を見上げながら、「会いたい……。」という言葉が口から出ていた。




