漫画とは違う現実
誰にも知られたくない想い。
どうして知られたくないのか……自分でも分からない。
もしかしたら、この片思いは叶わない想いだから知られたくないのか?と思ったりする。
自分で自分が分からないまま日だけが過ぎていった。
冬になってクリスマス、そして忘年会の季節になった。
たぶん、友田悠には新しい彼女が居ることだろう。
そう思いながら暮らすようになった。
仕事は産休、育休中の人達の分を担っているので大変だが、元々、サポートだったので、自分だけの仕事自体が少ないから増えたとしても、それは仕事を覚えられる良いきっかけだと思っている。
「そうだ、私はまだまだ覚えないといけないことが多いんだ。
仕事、もっと頑張ろう!」
「漫画だったりすると、ここで、友田悠から告白をして貰えるんだろうな。
告白ってして貰ったこと無いから、ちょっと分かんないなぁ。
まぁ、したこともないけどね。」
「いやいや、恋じゃないって……。
これは同情から始まった……なんだろう?
兎に角、恋じゃないって!」
モテない=年齢だから恋ではないと思いたいのだ。
こんな心の中を誰にも知られないままに、たぶん、終わる。
それも、間もなく……若しくは、既に……終了だ。
今日は残業しないで帰られる!と喜んで帰宅の途に就いた。
「お先です。」
「お疲れ様~。」
仕事をしている友田悠と目が合った。
「お先です。」
「もう、帰るのか?」
「うん。お先です。さようなら。」
「お疲れ様。」
胸が苦しくなった。
『否、これは恋じゃないんだ! 心臓でも悪いのかも……。』
そう自分に嘘をついた。
こんな嘘を何度も繰り返してきた。
出来れば、これで最後にしたいと毎回思うが、それが、なかなか思うようにいかない。
自分の気持ちさえ思うように出来ないのが恋なのだと知ったのは、もっと後だった。