薄れいく想い
亡くなった妻・麻美の物を実家に送ったことを富田優一に電話で話した。
「そうか……それが正解だろうな。」
「うん。」
「前に進んでるんだな。」
「そうかな?」
「進んでるよ。先ず、麻美さんのご両親。それからお前。
進んでるよ。」
「うん。」
「それで、この前元気がなかったんだ。」『それは……違う……。』
「そっちは?」
「お陰様で順調っす! もう、うちの親、初めての孫じゃないのにさ。
今から待ちかねてるよ。」
「ハハ……おばさんらしいな。」
「親父もだぜ。」
「そっか…!」
「沙希ちゃんも楽しみにしてくれてて……
澪の両親と一緒に何か作ってくれてるんだ。」
「……そうか……。橋本、元気なのか?」
「うん。元気だぜ。海君と一緒に澪が散歩してたりして……。
妊娠生活をenjoyしてるよ。」
「そっか……。優一は……頭の中、奥さんの妊娠だけなんじゃないか?」
「そりゃあ、パパになるんですから、ね!」
「幸せそうで良かったよ。」
「ありがとう! 悠も、な。幸せになれよ!」
「ありがとう。鋭意努力するよ。」
そう言って電話を切った。
橋本沙希子のことを知りたくても聞く勇気が無かった。
亡くなった妻・麻美、そして沙希子のことが頭から離れない。
ただ依然と比べて段々と、麻美のことが薄れていった……。
それが罪悪感になっている。
その薄れる麻美への想いに重なるように、沙希子への想いが少しずつ溢れていくようだった。




