初デート
可愛い店で待ち合せた土曜日。
好きな人とのデートではないのに、ドキドキして洋服を選ぶのも通勤とは違っていた。
やっと服を選んで化粧をして家を出る時に父が驚いていた。
「誰と会うんだ!」
「友達と……。」
「本当か? 本当に友達なんだな。」
「うん。そうよ。」
「でも、いつもと違うじゃないかっ!」
「行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
「お父さん、沙希子の歳、少しは考えてくださいね。」
「それは……分かってる!」
父のことは母に任せて家を出た。
可愛い店に着くと、増田翔平は来ていた。
「ごめん。待った?」
「うん。少し、ね。」
「ごめんなさい。」
「いいよ、ちょっとだけだから……行こうか。」
「うん。」
直ぐに店を出た。
増田翔平が考えてくれたデートコースにした。
「俺が考えたコースでいいの。」
「うん。」
「何か希望は無いの?」
「無いわ。」
「じゃあ、映画を見ようか?」
「うん!」
二人で映画を見て、昼食を摂って、他愛に無いは話をしているうちに時間が過ぎていった。
楽しかった。
気負わずに一緒に居られた。
ドキドキする相手ではなかったけれど、友達になれると思った。
別れ際に聞かれた。
「どうだった? 初デート……。」
「楽しかった! ありがとう。」
「良かった~。罪滅ぼしになった?」
「なった。」
「良かったよ。ありがとう。」
「それは私の台詞だわ。」
「否、俺の台詞なんだ。
リハビリみたいって言ったら悪いんだろうけど、それが俺の気持ち。」
「リハビリになったんなら、私、嬉しいわ。」
「そう言って貰えると助かるよ。
もし、俺でも役に立つ時があったら連絡して。」
「ありがとう。」
渡された紙にはメールアドレスが書かれていた。
「いつでも破って捨てていいからね。」
「うん。ありがとう。」
「じゃあ、ここでバイバイだ。」
「うん。バイバイ。」
そう言って別れた。
見送って「ありがとう!」という言葉だけを増田翔平の後姿に掛けていた。




