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嘘
友田悠の失恋を知ってから、優秀な人の顔以外の友田悠を見てしまった気まずさが心の中に湧いて出て来た。
それからというもの……なんとなく友田悠を見てしまっている自分に気付いてしまった。
気付くと怖くなった。
「これは片思いじゃない。恋じゃない。同情だ!」
そう言い聞かせるようになると、もっと友田悠が気になってしまった。
「マズい、マズ過ぎる! あんな奴のこと、なんとも想ってない!」
否定すればするほど、目で追ってしまうのです。友田悠の姿を……。
「ヤバい! ヤバい! この気持ち、一生隠し通さなくっちゃ……。」
知らぬ振りをする努力を続けるのは大変だった。
もう、せめて仕事が別だったら良かったのに…と思う気持ちと、一緒の仕事をできる喜びとが同居していた。
それからは、自分に対して嘘をつくようになった。
「友田悠を好きではない。」と………。
嘘を塗り重ねていき、自分の気持ちを消し去ることだけを考えるようになった。
でも、これが片思いの……恋の……始まりだった。