待ち合わせ
今日は友田悠と佐々木風花を会わせる日。
仕事を早く終わらせて、約束の場所へ向かう。
足取りは重く……出来ればしたくなかった、と繰り返し思う。
笑顔を張り付ける用意をする。
駅のお手洗いに入って、鏡を見る。
そして、心の中で言う「スマイル!」と……。
頑張って、このまま笑顔を張り付けていなければと言い聞かせる。
さぁ出陣だ!
そういう気持ちだった。
佐々木風花との待ち合わせ場所に着くと、明るい笑顔の佐々木風花が待っていた。
「ごめん。遅かった?」
「ううん、今、来た所……って、なんか恋人同士の待ち合わせみたい!」
そう言って可愛く笑う佐々木風花が眩しかった。
「行こうか……。」
「うん。……ねぇ、友田さんのこと、なんて呼んでるの?」
「友田君。」
「そうなんだ。」
「ねぇ、あの人よね?
アメリカに留学した人…。」
「うん。」
「やっぱ! 私の記憶力いいわぁ!」
「?」
「あ……あのね、私、会社の社内報を見たのね。
出てたの。友田さんの写真とアメリカ留学の記事!
本社で会った時に、『あのエリートだ!』って分かったのよ。
それでね、独身だったら、絶対に紹介して貰おうって思ったの。」
「……そ…うなんだ。」
「うん。」
「もし、彼女が居たら?」
「関係ないよ。既婚者で無ければ……。
私を好きになって貰えばOKでしょ。」
「……そ……う……ね……。」
「ねぇ、着いたんじゃないの。」
「そうね。」
「あ! 友田さんだっ! 橋本さん、もう挨拶が終わったら帰ってね。」
「うん。……分かった。」
声がした。
大好きな人の声……。
「こんばんは。待たせたかな?」
「いいえ。」
「じゃあ、行こうか?」
「はい。」
⦅笑え! 笑うんだ! スマイル! スマイル!⦆
「あの!」
「なぁに?」
「どうした? 橋本……。」
⦅スマイル! スマイル! 笑え!……理由、考えろ!⦆
「私、実は仕事が……。えっと……今、メッセージが入ってて……
会社に戻らなくちゃ……いけなくて……。
ごめんね。佐々木さん……
ごめんなさい。友田君。
会社に戻ります。
二人はゆっくり……ね。
じゃあ……。」
「うん。分かった。今日はありがとう。バイバイ。」
「橋本!………気を付けて……な。」
「うん。ありがとう。ごめんなさい。」
振り向き様に走り出して駅に向かった。
走っている間、涙が出て止まらなくなった。
顔を上げられなかった。




