優一と澪
あれから、富田優一と従妹・橋本澪は付き合い始めて、そして、結婚すると決まったと澪から聞いた。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
「早いけど、この秋に結婚するの。」
「そう、おめでたいことは早い方がいいわ。」
「来てね。」
「当然よ。」
その結婚の報告は富田優一から友田悠にもされていた。
「そうか……。付き合って直ぐだな。」
「おう、こんなに惚れられたこと無いからな。俺……。
このチャンスを逃したら、もう無いと思うからな。」
「そっか……。」
「今だから言えるけどな。」
「うん。」
「俺、好きだったんだ。ずっと……。」
「誰を?」
「大学の時から、ずっと好きだった。恋してた。」
「うん。」
「お前の奥さんだよ!」
「嘘だろ? だって、お前、俺に言ったよな。『病気も全て受け入れて二人で最期
の時まで生きろ。』って!」
「おう、言ったよ。」
「なんで?」
「なんで? 愛してるからだよ! 愛する人の幸せだけを祈って願ったんだ。
あの人を幸せに出来るのは、お前。お前ひとりだったから……
最初から諦めてた……。」
「………知らなかった。……すまなかった。」
「いいよ。俺が自分で決めた道だから……。
今度は俺が幸せになる番だと思う。」
「うん。……幸せになれよ。」
「おうよ。」
「俺、どんだけ、お前を傷つけてたか分かんないよ。」
「お前が気付かなかったから良かったとも言えるけどな。」
「そうか?」
「うん。気付かれてたら、もう友達でなくなったかもしれないからな。」
「それは、嫌だ、な。」
「俺もだよ!………あのな………。」
「うん。」
「もう一人、辛い片思いをしてた女性が居るんだけどな。」
「アイリーン?」
「違うよ。片想いだから……。」
「そんな女性、居ないぞ。」
「居るんだ。居る。………沙希ちゃん……。」
「さきちゃん、って誰?」
「橋本沙希子……沙希ちゃん、お前のこと、ずっと好きだったんだぞ。」
「え? 嘘だろ? 橋本が? 嘘だ!」
「嘘じゃないよ。最初から諦めてた俺と同じなんだ。
自分の気持ちに気付いた時には、もう終わってた。
だから、諦めて諦めて諦めた。……俺、沙希ちゃんの気持ち、分かりすぎるほど
分かるんだ。
だから、ごめん。
結婚式にはお前を呼びたいけど、呼べない。」
「え?……」
「もう、沙希ちゃんに笑顔を無理に作らせたくないんだ。
ごめん。本当にごめん。」
「本当なんだな……橋本が俺のこと……って、の……。」
「嘘、つくわけないじゃん。」
「そうだな……。すまん。ちょっとパニックだ。俺……。」
「うん。……悠、本当にすまん。別の日にお前と澪ちゃんを会わせるから……。」
「う……?」
「澪ちゃんには別の日の会わせるから!」
「おう。頼む。」
沙希子の気持ちを友田悠に話したことに罪悪感を感じながら富田優一は帰路に就いた。




