縁
縁とは不思議なもので、もう二度と会うことは無いと思っていた富田優一と会うきっかけが出来た。
それも不思議な縁だと思う。
不思議なことに従妹が富田優一に恋してしまったのである。
つい「どこで出逢ったの?」と思ってしまった。
聞けばベタな……昔そんな漫画があったのではないかと思う出逢いだった。
駅で階段から落ちそうになった時、受け止めてくれたのが富田優一だったようだ。
その時に富田優一が怪我を少ししたそうで、それで名前が分かったそうだ。
「それで、なんで? なんで、私が出て来たの?」
「橋本だから?」
「橋本って多いでしょ。」
「うん。でもね、富田さんと話していて、『橋本沙希子っていう小学校の同級生が
居るんだ。』って言ったの。
橋本沙希子って聞いたら、やっぱ直ぐに思いついたの。沙希ちゃんのこと……
それで、富田さんに『私にも橋本沙希子っていう従姉が居ます。』って話した
のよ。
するとね、『会いたい!』って……。
勿論、私も一緒よ!
ねぇ、沙希ちゃん、いいでしょう。」
「いい!って言わないといけないんでしょう?」
「えへへ………。」
「いいわよ。日時を決めてね。」
「了解しました!…………ありがとう! 沙希ちゃん。」
それから、従妹を通して富田優一と会った。
どの位時が経っていたのか……忘れていた。
そう、あの空港での日から2年経っていた。
従妹・橋本澪、そして富田優一と会っていることが不思議で堪らない。
「お久し振りです。富田さん。」
「お久し振り。橋本さん。元気だった?」
「はい。お蔭さまで……。」
「あの……富田さん、私も橋本なんですけど……。」
「あ……そっか。どうしようか?」
「あの……名前で呼んでください。」
「いいの?」
「はい! 是非、お願いします。」
「じゃあ、澪ちゃん。……これでいい?」
「はい! ありがとうございます。」
「お礼を言って貰えるようなことじゃないよ。
あ……じゃあ、沙希ちゃん……って呼んでいい?」
「えっ?」
「駄目かな?」
「いいえ。どうぞ……。」
「じゃあ、俺のことは優君と……。」
「優君って呼んでいいんですか?」
「勿論!」
「ありがとうございます。……えっとぉ……優君。……キャッ……。」
「澪ちゃん、喜び過ぎじゃないの?」
「沙希ちゃんも、優君でっ!」
「えっ? 私も?」
「勿論、沙希ちゃんも頼みます。」
「じゃあ、優君……。」
「……ということで、三人で幼馴染みたいに食べようか?」
「はいっ!」
澪はずっと頬を染めていたから、きっと富田優一に気持ちは知られているだろうし、知られたいのだと分かっていたが、自分との違いに単純に澪が羨ましかった。
食事が終わって、お茶を飲んで雑談している時、澪が席を外した。
その時、二人になってから富田優一は聞いて来た。
「沙希ちゃん、友田のこと澪ちゃん、知らないよね。」
「私の想いですか?」
「うん。」
「知りません。」
「そっか……。じゃあ、今でないと話せないよね。」
「何を?」
「友田の近況、知りたくないかもしれないけれど、知っておいた方がいいかもしれ
ないから……。」
「……。」
「澪ちゃんが帰ってきたら話せないから、言うよ。
友田はあっちで一人の女の子と付き合ったけど、別れたんだ。
それで、こっちに帰国したんだけど……。」
「帰国したんですか?」
「うん。一週間くらい前に……。」
「そうなんですね。」
「それで、すぐに、その女の子が追いかけてきて…。
追い返したんだ、って言ってた。」
「そうなんですか……。」
「帰国したら本社勤務で、沙希ちゃんとは別になっただろう。
要らない情報だったかもしれないけど……無理に聞かせてごめん。」
「……いいえ、ありがとうございます。」
「そんなに出逢うことは無いと思うけど、会うかもしれないから……
話したんだけど……辛かったよね。ごめん。」
「いいえ、気にしないでください。
教えてくださってありがとうございます。」
「そう言って貰えると嬉しいよ。
……ところで、敬語止めてくんない? 頼むよ。」
「そうですね。……じゃない。そうね。これからは敬語はなしで……。」
「うん。」
「なぁに? 何の話?」
「あのね、私の同期が優君の幼馴染なの。」
「そうなの?」
「うん。そうだよ。」
「それでね、その人の話してたのよ。」
「ねぇ、沙希ちゃん……その人、女の人?」
「違うわ。男の人!」
「良かったぁ~。」
店を出て帰るときに富田優一に頼んだ。
「優君、澪ちゃんを送ってくれる?」
「いいよ。……沙希ちゃんは? 送らなくていいの?」
「私は大丈夫。社会人だから……。
澪ちゃんは、まだ大学生だから送ってあげて、ね。」
「分かった。
……じゃあ、澪ちゃん、帰ろうか?」
「はい!」
二人で並び歩き出したその後姿を見送った。
⦅友田君が帰国……。
彼女が追いかけて来た……。
凄いな……彼女になったら、そんなこと出来るんだ……。
私じゃ、無理だなぁ……。
私、友田君にとって女性じゃないもん。
ハハハ………男友達みたいなもんじゃない……。
羨ましいなぁ……。いいなぁ………。⦆




