訓練終了
海のCD1試験は無事に終わり、無事に合格して父は大喜びである。
その日は祝杯を挙げた。
その中に訓練士の馬場大和が居る。
「お父さん、良かったですよ。」
「先生、良かったのは僕じゃないですよ。海です。
海、お前は賢いいい子だなぁ……♡ 」
「勿論、そうですけど、お父さんがハンドラーだからこその合格ですよ。」
「そうですかぁ……。」
「そうですよ! お父さんだから、海君、落ち着いてましたよ。」
「ええ――っ、そうですかぁ?」
「本当にすっごく落ち着いてました。」
「落ち着いてなかったのはお父さんの方よね。」
「そうそう、お父さん、すっごく緊張してた。」
「そんなことないぞ。」
「そんなこと、あるある、よ!」
「そう、あるある、だったわね。」
「おい、そんなに緊張してなかったぞ。」
「緊張は誰でもしますよ。でも、海君はお父さんがどんなに緊張してても信頼して
見つめてましたね。お父さんを……。」
「そうでしょう! そう、見つめてくれてたんですよ。」
延々と続く父の海自慢、馬場大和はにこやかに、そして頷きながら聞いてくれた。
父の話がなかなか終わらなくて困っていたが、母がお開きにすると言ってくれて宴は終わった。
海は疲れたのか、父の横でお臍を見せて寝ている。
「海君のこのリラックスした寝姿、写真に撮ってもいいですか?」
「どうぞ、いくらでも。」
「じゃあ、撮らせて頂きます。」
「あの、先生。これからのことですけれど……。」
「はい。」
「前にお話ししていたように訓練を止めようと思います。」
「はい。伺っていましたから、次の訓練は入れていません。」
「そうですか。良かった。ありがとうございます。」
「馬場さん、今まで本当にありがとうございました。」
「こちらこそ、訓練以外でご迷惑をお掛けしたのに、引き続き僕に訓練のお手伝い
をさせて頂けたこと感謝しています。ありがとうございました。」
「馬場さん、あの………。」
「何ですか?」
「あの人は、どうなりました?」
「莉緒のことですね。僕は彼女とは別れました。
その後のことは分かりません。」
「そうだったんですか……すみません。先生の個人的なことをお伺いして……。」
「いいえ、当然です。お父さんもお母さんも沙希子さんのこと、ご心配だったと思
います。もう大丈夫です。」
「ありがとうございます。良かったわね。沙希子……。」
「うん。………先生、ありがとうございます。」
訓練は終わったので、馬場大和と会うのも今日が最後だった。
別れ際、馬場大和は再度謝罪した。
「沙希子さん、貴女には本当に嫌な思いをさせてしまいました。
本当に申し訳ございませんでした。」
「先生、もういいのです。終わったことですし、あの一度だけだったんです
から……
それよりも、先生。
先生のご多幸とご健康をお祈りしています。」
「ありがとうございます。」
「これからも頑張ってくださいね。」
「はい。……沙希子さんも……。」
「はい。」
「では、本当にありがとうございました。」
馬場大和は深く頭を下げて、そう言った。
そして「さようなら。」と言って笑顔を見せた。
帰っていく馬場大和の後姿を両親と見送った。
「海、寂しがるかしら?」
「大丈夫だ。家族が居るから……。」
「そうね。」
「お父さんが居るからじゃないの?」
「そうよね。」
「やっぱり、そうだよなぁ……。」
父は嬉しそうに家に入って行った。
その後姿を母と見た。
父はスキップを踏んでいるかのような軽やかな足取りだった。




