おあいこ
小学校の同級生といっても、その頃の記憶が全くなかった富田優一と食事をすることは不思議だった。
空港で食事をした。
食事を終えてから「ちょっとお茶を飲もう。」と誘われて、別の店に入った。
「橋本さん、何にする?」
「私はウインナーコーヒーにします。」
「俺はモカにする。」
注文してから、富田優一から聞かれた。
「間違ってたら、ごめんね。
あ……間違っていなくても、ごめんね、だな。」
「何ですか?」
「橋本さん、悠のこと好きなんじゃないかなぁ……って思うんだけど……。」
「なんで?」
「なんとなく、見てて思った。」
「………絶対に内緒にしてくださいね。」
「うん。」
「………そうです。私の片想いです。」
「……そうか……ごめんな。こんなこと聞いて……。
なんとなく、俺と同じかなぁ~、って思った。感じた、が正解かな?」
「そうですか……。」
「諦めることから始まった恋だよな。」
「ええ。……そうです。」
「俺の話、聞いてくれたけど、辛くなったんじゃないかと思って、気になって
今日、食事に誘ったんだ。
ビックリしたよね。知り合いでもないのに声掛けたから……。
ごめんね。」
「そんな……気にしないでください。」
「ありがとう。」
「それよりも……富田さん、大丈夫ですか?」
「うん?」
「大切な方が亡くなって……辛かったと……。
それから、幼馴染も外国へ行って……。」
「ありがとう。この前、君の前で泣いて……
泣く場所、無かったんだ。
だから、本当にありがとう。」
「いいえ。」
「あ…… あいつのことこれからも知りたい?
例えば……誰かと付き合ったとか、結婚したとか……。」
「いいえ、知りたくありません。」
「ごめん、そうだよね。」
「謝らないでください。私、これで……忘れられるかもしれないので……
だから、知りたくないんです。」
「そっか。次の恋が待ってるかもしれないからね。」
「……恋は出来るかどうか分かりません。
でも、これから、どう生きるかを考えたいと思ってます。」
「そっか、そうだね。これから先をどう生きるか……大切なことだな。」
「富田さん、ありがとうございました。今日は……。」
「えっ? お礼を言われる立場じゃないよ。言う方だから……。」
「いいえ。………ずっと、誰にも言わないでいました。
秘めた想いって……辛いですよね。諦めていても人に話すことで楽になったりし
ますもの。
私、今日、夫婦で来ていた子に最近、話せたんですけど……
今日、富田さんに聞いて貰えて、また楽になりました。
だから、ありがとうございました。」
「それを言うなら、俺の方だよ。誰にも言ってなかったから、酔いに任せて話した
けど…… あの日、橋本さんに話さなかったら、もっと辛かったと思う。
俺こそ………ありがとうございました。」
「おあいこですね。」
「そうだね。………帰ろうか?」
「はい。」
店を出て別れた。
お互いに連絡先を聞かなかった。
もう会うことは無いだろうと思った。




