嘘の彼氏
会社で私の彼氏ということになっているのが、馬場大和だったと気づかされた。
会社でスマホに写っている海を見ている時に、笑顔になっていたのだ。
そのスマホの画面をまた見られてしまった。
「おっ! 爽やかイケメンだなぁ~、相変わらず、橋本の彼氏はっ!」
「友田君!」
「おう、元気そうだな。」
「うん。」
「この間の葬儀、ありがとうな。」
「うん。……何て言ったらいいのか……。」
「何も言わなくていいよ。……いつか必ず来る日だったんだ。それも、そんなに先
じゃなくて、ね。」
「素敵な恋……ね。」
「素敵な恋……か……。」
「うん。それだけ愛されて……奥様はきっと幸せな結婚生活だったと思う。
それが、短くても……。
愛した男性が夫になって……その夫に看取られたんだもん。
幸せよ。凄く……そう思う。」
「……うん。……ありがとう。」
「今は、まだ大変だと思うけど、ゆっくり出来るようになったら、ゆっくりして身
体を労わってあげてね。」
「………うん。」
「そして、奥様との想い出の地とかに行くのもいいんじゃないかなぁ……。」
「……うん。」
「いつも、友田君の心の中に奥様が居るもんね。奥様、幸せだね。」
「……う…ん…。」
ハンカチを差し出して友田悠に渡した。
受け取って涙を拭いてから、「これ、洗って返すわ。」と言うので、奪い取るようにハンカチを取って「いいよ。このままで。」とポケットにハンカチを入れた。
友田悠は「おい。………悪い。」と言った。
友田悠の涙は美しい。
富田優一の涙も美しかった。
愛すればこその涙だからなのだろう。
「あ! しまった! また訂正するの、忘れた。
ああ―――っ! 噂の彼氏……嘘の彼氏なのに……。
どうしよう。馬場先生、ごめんなさい。」




