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恋と嘘  作者: yukko
29/92

手術が終わった

日が経ち、今日は生後6ヶ月になったカイの去勢手術の日である。

朝から父が落ち着かない様子で、見ていて面白い。


カイ、頑張るんだよ。」

⦅何を?⦆

「あぁ……取っちゃうんだなぁ……。」

⦅お父さんが手術を受けるんじゃないのよ!⦆

カイ、お父さんが付いてるぞ!」

⦅手術室には入れません。⦆

「あぁ~~~っ。止めるのは……。」

「駄目です。何を言ってるんですか? お父さん!」

「いやぁ~、カイ小さいから、心配なんだよ。お母さんは心配じゃないのかい?」

「先生を信じて待つんです。それに、カイは強い子ですから……。」

カイ、強い子でもなぁ~。」

「お父さんの……を取るんじゃないですよ。」

「分かってるさ! 分かってるよ。」

⦅あ……そういうことなのね。

 見てて飽きないなぁ……。⦆


「さぁ、行きますか?」

「え? もう?」

「行きますよ。お父さん!」

「え? もう行くの? お母さん。」

「時間ですからね。」

「あぁ~~っ!」


さっと、カイを抱き上げて車に乗り込んだ母の後を、父が追いかけて車に乗った。

それを見ていて吹き出しそうになった。

父は何故か運転席には乗らず、後部座席で母とカイの傍に座った。


「お父さん、運転しないの?」

「沙希子、してくれ!」

「分かった。じゃあ、出発進行! なすのおしんこ!」

「なんだそれ?」

「クレヨンしんちゃん!」

「馬鹿言ってないで、ちゃんと安全運転だぞ!」

「Roger.」


動物病院に着いて、カイを先生に委ねて帰宅した。

父だけが落ち着かない様子だった。

病院からの電話で無事に手術が終わったことを知った。

家族で迎えに行った。

カイとの再会で父は泣きそうになっていた。

見ていて面白かった。


その日、父はカイの傍に居て離れなかった。

急変があった時のために傍に居るのだと言っていたが、何も起こらなかった。

良かったと家族全員で胸を撫で下ろした。


父が入浴中に母が急に話し始めた。


「沙希子がお嫁に行ったら、行くと決まったら、お父さん大変ね。」

「お母さん、私、行けないかもよ。」

「そうなの?」

「そうなの。そういう人……居ないの。」

「そう……。」

「お見合いをしたい気持ちにもならないの。」

「そうなのね。」

「お母さん、ごめんね。」

「何を謝るのよ。」

「だって、友達、もう結婚してるし、子どもが生まれる友達も居るし……。」

「人は人、沙希子は沙希子でしょ。」

「うん。」

「どういう人生でもいいのよ。」

「お母さん。」

「沙希子が幸せだったら、それだけで親孝行だわ。」

「………お母さん、ありがとう。」

「お礼を言うのは私の方よ。生まれて来てくれてありがとう。」

「お母さん………。」

「さぁ、お父さんがお風呂から上がってきた時に、その顔は駄目よ。

 心配するから……ね。」

「はい。」


カイの去勢手術が終わったら、訓練も終える予定だった。

その日を決めようと思っている。

両親は「続けてもいいけど……。」と少し続けたそうな様子だった。

私は終えるつもりだ。

あれから、莉緒さんが何かを言ってくることは無いまま過ぎていったが、あの経験は二度としたくない経験だった。

それが心に残っていて終わりにしたいと両親に話した。

そう話すと、両親も終わることを理解してくれて「じゃあ、切りが良い時に終わろう。」ということになった。

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