生と死
佐伯陽菜に昨日の葬儀のことを話した。
富田優一の話はしなかった。
ただ、奥様が余命宣告を受けていても友田悠はプロポーズして結ばれたのだと話した。
「そうだったのね。友田君、忘れられないでしょうね。一生……。」
「うん。そうだと思う。」
「忘れるって簡単じゃないものね。」
「うん。」
暫くの間の沈黙を経て、陽菜が勇気を振り絞ったような表情をして言った。
「沙希子、私ね。ママになるの。」
「え? 本当?」
「うん。」
「おめでとう! ついにママか……。」
「ありがとう。」
「ダーリンは?」
「うん。喜んでくれた。」
「そりゃそうだ。……きっと、いいパパになるよ。
そういう感じの人だもんね。」
「そうなって貰わないと困るのよ。私、会社辞めないから!」
「大丈夫だよ。………たぶん……。」
「たぶん、って……。」
「イクメンになってくれるよ。」
「だといいけど……。」
「イクメンに育てないとね。」
「私が?」
「陽菜だけじゃなくて、周囲がね。」
「周囲ね。」
「うん。お姑さんとかが言ってくれたら、いいんじゃないかな?」
「難しいかな?」
「理解あるお姑さんって居ないよね。」
「うん!」
「陽菜、なるようになるって思うのも大切よ!」
「そうだね。案ずるより産むが易しっていうもんね。」
「そうそう!」
佐伯陽菜が無事に出産することを心から祈っている。
その幸せな陽菜を見ていると、友田悠の悲しみと、富田優一の悲しみを思った。
愛する人を永遠に失うことの苦しみ、悲しみは私には分からない。




