話し合い
謝罪の後直ぐの訓練の日。
訓練士の馬場大和は、海の訓練開始前に再度謝罪した。
「謝らなくてもいい。」と言っても、馬場大和は謝罪した。
「本当に申し訳ございません。」
「だから、もういいのよ。気にしないでね。」
「優しいですね。あんな目に遭ったのに……。」
「大したことないわよ。もう分かってくれたんだから……。」
「莉緒が……沙希子さんみたいだったら良かったのに……。」
「えっ?」
「スマホ、勝手に見たのは初めてじゃないんです。もう何度も……。」
「それは、貴方のことが大好きだからよ。」
「でも……。」
「貴方も大好きだから、パスワードを教えたんでしょう。
そして、変えてない。違う?」
「違います。教えてません。」
「えっ?」
「教えて無いんです。それに、変えました。」
「えっ?」
「莉緒は僕が寝ている間に、僕の指紋で……。」
「そんなこと、出来るの?」
「出来たんですよ。僕、熟睡してたみたいです。」
「そうだったの。
……でもね、貴方が安心させてあげられてなかったんじゃないの?」
「どういう意味ですか?」
「ごめんね。怒らせるようなこと言うけれど、浮気疑惑を何度も持ってしまったと
か……は、そういう言動をしてたかもしれないでしょう。」
「疑われるような言動を取っていた、ということですか。」
「それしか考えられないのよ。」
「僕は僕自身を客観的に見られません。見たことがあるとは言えません。
だから、沙希子さんの言う通りかもしれません。
でもね! スマホを見る前に聞いて欲しかったんですよ。
全て、今回と同じなんです。」
「同じ?」
「ええ、仕事関係の女性全てが対象になるんです。」
「全て………。」
「だから、もう疲れてしまって……付き合うのをやめたいって言ったんです。」
「え?」
「そしたら、もっと酷くなって……。」
「ねぇ、今までちゃんと話合いできた?」
「いいえ、それが大変で……。」
「誰かに間に入って貰った?」
「いいえ。」
「じゃあ、次は二人の共通の友人が居たら、その人に間に入って貰って話し合うの
ね。その方がいいと思うわ。
それで、その時の話の内容を纏めて署名して貰うのよ。」
「署名……。」
「そう、前もって貴方が守って欲しいことを書面で第三者に見せて。」
「はい。」
「その守って貰いたいことを書いて、彼女が納得したらサインして貰うのよ。」
「サイン……。」
「そして、それを守れなかったら、彼女はペナルティを受けて貰うの。
ペナルティについても記載しておいて、守って貰いたいこととペナルティを彼女
が受け入れたらサインして貰うの。」
「別れ話の前に、もう一度ちゃんと感情的にならずに話し合った方がいいわ。」
「そうですね。友達に相談してみます。」
「あ、ごめんなさい。私が言ったことをしないといけないっていう訳じゃないか
ら、ねっ。」
「別れ話が全く進まないので、沙希子さんに教えて貰った方法で先ずは話し合って
みます。」
「この方法がいいという訳じゃないけれども、私の頭ではこれしか浮かばない
わ。」
「いいえ、ありとうございます。
凄いなぁ。沙希子さん!」
「何が凄いの? 凄くないわよ。」
「凄いですよ。文書とかサインとか……考えられませんでした。
沙希子さん、経験豊富なんですね。」
「ごめんね。私、彼氏いない歴=年齢なのよ。おほほ………。」
「あ………すみません。」
馬場大和が驚いていたことに沙希子は驚いた。




