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恋と嘘  作者: yukko
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犬から貰う癒しの時間

職場で訓練士の馬場大和と付き合っていることになってしまった。

無関係なのに知らないうちに、訓練している犬の飼い主と付き合っていることにされてしまって申し訳ないと思っている。

そのことを話すわけにもいかない。

そして、土曜日、馬場大和がやって来てカイの訓練が始まった。

公園までの散歩から訓練である。

リードを持って、左を見ると、カイが歩いている。

ただし、飼い主を置いてけぼりに近い感じで……少し前を歩いている。


「橋本さん、止まりましょう。」

「はい。」


止まると、リードを引っ張るように歩いているカイが止まった。


「呼んでください。」

「はい。」

カイ!」

「来ましたね。おやつを上げて褒めてください。」

「はい。…good boy!」

「つけ!と言って、左側に……カイ君が行ったら、おやつを上げてください。」

「はい。………つけ!」

「つけ!出来ましたから、おやつを上げて褒めてください。」

「はい。……good boy!」

「これを繰り返します。」

「はい。」


公園に着いてから、お座りと伏せをおやつなしですると、してくれた。

嬉しくて「good boy!」を何度も言った。

無意識に私はカイを抱きしめていた。


「可愛いですよね。

 犬は喋らないけれど、なんとなく人に寄り添ってくれます。

 喋らないからいいんですよね。余分なこと言わないでしょう。

 助かる時有りますよね。

 僕は犬に助けられたんです。

 だから、今は犬を捨てる人を減らしたいんですよね。

 訓練をするのは、飼い主さんに犬をちゃんと見て欲しいからなんです。

 訓練すると、たぶん、飼い主さんの犬への気持ちも変わるんじゃないかと思って

 ます。

 まぁ、僕にはそんな力は無いんですけどね。

 それも、犬に助けて貰ってるんです。

 その為にも、去勢手術受けさせませんか?」

「きょせい手術?」

「そうです。

 カイ君も飼い主さんにとって望まぬ出産で生まれて来た子ですよね。

 そういうことを防げます。」

「そうなんですね。」

「主治医に相談してください。

 いつ手術が出来るかを…。

 訓練も入りやすくなりますし……。

 マーキングやマウンティングも減ります。

 メリットについては主治医にも聞いてくださいね。

 去勢手術することでならない病気もありますから……。」

「はい。」

「……辛いことがあった時、抱きしめると楽になりますよね。

 カイ君の体温を感じられて……。」

「ええ。」

⦅駄目だ。優しくされると泣きそうになる。しっかり!⦆

「そうしてカイ君を抱きしめている橋本さんの笑顔は自然でいいです。」

⦅えっ? いつもは不自然で張り付いた笑みだったの、ね。⦆

「そうですか?」

「優しい笑顔ですよ。飼い主さんが愛犬に向ける笑顔って、皆さん優しい笑顔で

 す。僕が好きな笑顔です。」

⦅やだ、皆さん!なのね。私だけじゃないのに、笑顔が不自然だと思い込んでた

 のかな?⦆

「そうでしょうね。癒されますもの。」

「その癒される分、カイ君を亡くなるまで飼ってあげてくださいね。

 お願いします。」

「はい! 勿論です。」

「ありがとうございます。じゃあ、去勢手術のこと、よろしくお願いします。」

「はい。」


公園からの帰りもつけ!の訓練をして、今日の訓練は終わった。

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