噂の上書き
海の躾はゆっくり進んで、伏せや待てが出来るようになり、名前を呼んだら振り向いてくれたりetc.
とても楽しく…… 後はトイレトレーニング!
ちゃんとトイレに出来るのが100%になってくれれば……と、子どもを見る眼になった私。
馬場大和の訓練の様子をスマホで撮って、職場でその動画を見ていたら、覗き込む人の気配で振り向くと、そこに友田悠が居た。
「何? なんか用?」
⦅ビックリした。止めてよね。その距離感……。⦆
「橋本、君んち犬飼ってるの?」
「うん。可愛いでしょ ♡ 」
「うん。めっちゃ可愛い……って、この人かなぁ~?」
「は? 何?」
「分かった。この人なんだ。橋本の彼氏!」
⦅違うし……!⦆
「ちが」
「何ぃ~? 橋本さんの彼氏?」
「見せろよ、な。」
「いや、だから……。」
「おっ、イケメンじゃん。良かったな。橋本さん。」
「本当! 爽やか君ねっ! 良かったわねぇ~。」
「あの……ち」
「橋本、本当に良かったな。君、いい奴だから、きっと彼氏はいい人だな。」
⦅止めて! 彼氏なんか居ないから!⦆
「もう……止めてよ!」
「あ……いけなかった?」
「あ、あの………奴は止めてって言ったでしょう。」
「そうだぞ。友田。橋本さんにいい奴って言って、橋本さんの彼にいい人って可笑
しいだろ。」
「あ……そだった。ごめん。橋本、君はいい人だ! で、彼はいい奴だ!
これで、OKですね。」
⦅もぉ、どうでも……いい。勝手に言ってれば、いい。⦆
「もう、いいですか。」
スマホの動画の画面を閉じた。
そのまま、その場を一人離れてお手洗いに籠った。
涙が出て来た。
まだ、好きなのだ。
いつか、ゆっくりと時間を掛ければ忘れられるんだと自分に言い聞かせた。




