海(カイ)
友田悠は二か月後、結婚した。
今も、心の中に友田悠が居る。
それが、とても苦しい。
恋の上書きは出来そうにない。
それに、会社でも家でもニコニコしているのが辛くて堪らなくなる時が往々にしてある。
会社と家との往復しかないけれど、時々友達に会っていたが…その友達たちが次々と結婚して会えなくなってしまった。
友達にも会えなくなると、寂しさは募っていった。
そんな時だった。
父が知人から子犬を貰ってきたのだ。
「お父さん、困りますよ。子犬なんて……。」
「めっちゃ、可愛い♡
この子、なに犬? 何ていう名前の犬なの?」
「雑種だ。」
「へ? 雑種?」
「返してきてくださいね。お父さん………。」
「雑種なの?」
「うん。雑種。飼っている柴犬が産んだんだそうだ。
知らない間に妊娠したんだな。」
「そんなことあるの?」
「あったから、あるんだろうな。」
「お父さん、返してきてください。
世話するの、私でしょう?
お父さんしませんよね!」
「世話はするよ。運動になるから散歩もする。
病院へも連れて行くぞ。」
「本当に? 出来るんですか?」
「出来るんじゃなくて、やるんだ!」
「ねぇ、名前はどうするの?」
「オスだからな。……………沙希子に任せる。」
「お父さん、全く思いつかないんでしょう。」
「沙希子、名前つけてやってくれ。」
「じゃあ………日本の犬だからぁ……漢字で、海と書いて カイ!
どう?」
「いいな。」
「飼うことに決定なんですね。お父さん……。
何度も言いますが、私は世話をしません。
分かった?」
「分かってるよ。
カイ、海と書いて、カイ! いいな。 うん、いい!」
「じゃあ、名前、決定ね。
お母さん、私も世話をするから安心してよね。」
「不安だわ……。」
可愛い子どもが橋本家に来てくれて、両親にも良かったと思った。
そして、このカイ君が心を癒してくれた。




