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「命までは取るつもりはございませんわ」
国王陛下へ向かい微笑みながらデスワーは答える。
「ですが、甘い処罰をするつもりもございませんの」
「当然だな……そのような真似をすれば神は元より元老院も黙ってはおるまい……では落としどころとしてどう考えているんだね?」
「両殿下には王籍を抜けていただきますわ、その後シュアーク殿下は公爵家の所領にて労役についていただきます」
「ほう?……公爵家に鉱山などはなかったと記憶しているが、なにをさせるんだい?」
「陛下には申し訳ありませんが、あのような体力もないヒョロヒョロ坊やに鉱山労働などすぐ死んでしまうではありませんか」
「ふむ……確かにな、では?」
「所領の神殿巡りですわ」
「ん?それが労役なのかい?」
「基本は徒歩と野宿ですわね、まぁ最初はきついかもしれませんが体力はつくでしょう。それで神殿を巡って神罰の恐ろしさについてご自分の口から実体験を語っていただきますわ! 今のシュアーク様のお姿なら聴衆の方は震えあがりながら真剣にお話をきいてくださいますわよ」
「……その前に神罰を受けたものとして石投げの的になりそうだが……それにシュアーク自身が神罰を受けたと話すとも思えない」
「そこは事前に、神官様に贖罪のための語りだと説明していただきます、実際その通りですから神官様方も喜んで協力くださるとお返事いただいておりますわ!アークヤーク公爵家に抜かりはございませんのよ!」
自慢げに胸を張るデスワーを微笑ましいものを見る目で見つめつつ国王陛下は
「では当然シュアーク本人のほうも対処済なのだろうね?」
と問いかけた。
「きちんと心から悔い改める気持ちを持ちつつ、贖罪の旅をしなければずっとその姿のままだとお伝えしましたわ、本人は地下牢か塔へ幽閉される気でいたようですが、もうすぐ無一文で城からたたき出されますわよと教えて差し上げて、このまま牢馬車に乗って国民に見世物にされながら全国行脚と手枷付きでも普通の馬車で神殿に行くのとどちらが良いか聞いたら、さすがにごねてもムダと判断したようで渋々手枷を選びましたわ」
静かに話しを聞いていたレーノだったが
「あの顔の落書きみたいなマークって消えるんですね……ずっとそのままなのかと思ってました」
「ちゃんと贖罪をすれば消えますわよ、ただし心からの懺悔が必要ですからシュアーク殿下には難しいかもしれませんわね……よほど衝撃を与えられるような出来事でもない限りは」
「そうですか……あ、あのピンク髪の女性はどうするんです?」
「あの令嬢も平民落ちですわね、そしてそのままシュアーク殿下とともに贖罪の旅をしてもらいます」
「一緒にですか⁉」
「えぇ、愛を誓った相手とずっと側にいられるのですから本望でしょう? シュアーク殿下は王子として何不自由なく暮らしていた箱入り息子ですもの、最初は世話するものがいなくては着替えすらムリでしょうし、そのような些末なことでいちいち神殿の方の手を煩わせるのは申し訳ないですもの、あの令嬢に世話してもらいましょう?」
「なるほどな……」
深く考え込んでいた国王陛下が納得したように頷く。
【アレの事だ、溜まった鬱憤を晴らそうと令嬢につらく当たるのを見越しての判断か】
【適度にガス抜きをさせねば耐えられませんでしょうから……それにあの令嬢は神に対して真実の愛を誓ったのですもの……引き離すなどできませんわ】
【愛する男に日々虐げられる……これもまた罰の一つとなるわけだな】
【はい】
音なき声での会話に気が付かないレーノは
「早く贖罪が終わるといいですね」
と気づかわしそうに国王陛下を見る。
「そうだね……二人には新しい人生を頑張ってもらいたいね」
と複雑そうな顔でレーノに答えた。
「それで……グーシャはどうするつもりなんだい?」
その問いに少し考えたデスワーだったが
「陛下、この後わたくしとグーシャ殿下で話し合いをさせてくださいませ……その答えによって考えますわ!」
「そ、そうか……では長く引き留めるのもあれだ、早速行っておいで」
「お気遣い感謝いたしますわ! では御前失礼いたしますっ!」
そう言い残すと風のように去っていった。
その様子を見て耐えきれなくなった国王陛下は
「はははははっ! あれではまるで赤い嵐のようだな!」
と笑う。
「はい……デスワー嬢らしいなぁ」
驚くやら感心するやらのレーノであった。
話し合いに入れるか迷った設定
そうは言っても聴衆に向かって、自分がやった罪の告白なんてシュアークがするわけないので最初は首枷に自白魔法を仕込んだ魔石が付いてて、横の立ち合い神官がスイッチオンして話させる方式。
それしなくても自発的に話だしてからが真の贖罪の第一歩と認められるかなと。




