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006ファムの実力

本日はあと1話投稿します。

 倒れたままの少女に微笑んでから、ぐるりとハイゴブリンたちを見る。


「大丈夫だよ。これぐらいなら僕でも倒せるから……でも、一応強化はしておこっかな」


 そう言うと、ファムの両手の甲に淡い光を放つ紋様が浮かぶ。


 それはサキュバスが使用する淫紋。本来は催淫効果をもたらすものだが、サキュバスが自分自身に使う場合は強制的に興奮状態にすることで、魔力や生命力を活性化し、身体能力を強化するのだ。


 眷属であるファムも同様の作用が働き、淫紋強化をした状態であれば……。


「せやぁっ!」


「グギィッ!」


 ハイゴブリンを真正面から次々と拳で倒していく。その様子に人の言葉を発したハイゴブリンが驚愕する。


「グッ……コノ、シネ!」


「お前がね。それに……女の子に無理矢理するような屑は嫌いなんだ」


 次の瞬間、渾身の一撃がハイゴブリンの顔面に叩き込まれる。その威力に耐え切れず、声一つ上げることなく、頭は破裂し絶命した。こうして一分も掛からずファムは全てのハイゴブリンを倒したのだった。


「よし、これで終わりだね。あっ、魔石になった。聞いていたけど、魔物を倒すと本当に魔石になるんだ……あ! きみ、大丈夫?」


 魔物は絶命すると魔力が固められたもの、魔石になる。


 それを確認したファムは、少女へと目を向ける。少女は目を見開いて、口をだらしなく開けてファムを見ていた。


「ま、魔人を……一瞬で……ハイゴブリンってだけでも、強いのに……もしかして高名な冒険者とかですか……?」


「ううん、冒険者にはこれからなるんだ……あ、怪我してるね」


「え、あっ、大丈夫です! 止血して、街に戻って治癒してもらえば……っ!」


 少女の言葉が途切れる。ファムの唇が彼女の唇に重ねられたからだ。そして舌に唾液を纏わせて彼女の口内を舐る。


「~~~~っ!?」


「ちゅっ、んんぅ……ちゅぱぁ……んあっ、ふぅ…………うん、怪我は治ったみたいだね」


 彼の唾液は肉体完全回復薬。ハイゴブリンによって深く斬りつけられた傷は癒える。


 ファムの唾液を口内に流し込まれた少女の傷は完全に癒えていた。だが、突然キスをされたことが衝撃的すぎて、傷が癒えたことに気付いていない。


「ほわわわわわ……キキキキキキスを……しかも、舌を絡める……大人のキスっ! ふわぁぁぁぁ……きゅうぅ……」


「えっ、ちょっと!」


 少女の頭は処理し切れず、顔を真っ赤にさせて意識を失ってしまった。


「う、ううん……」


「あ、起きた?」


「あれ? わたしは………」


「待って、血を流しすぎたみたいだから、まだ立たない方がいいよ」


「血を? はっ、キス!」


 意識を失う直前のキスを思い出して、慌てて起き上がろうとした少女をファムは止める。  


 そして少女は後頭部の柔らかな感触に気付く。それで自分がファムに膝枕をしてもらっているのだと察した少女は、また慌てて起き上がろうとするが、額にあてられたファムの手によって再び押し止められる。


「落ち着いて。ハイゴブリンは倒したし、今のところ近くに他の魔物はいないみたいだから」


「ふえ? ……あっ、そうだ私……ハイゴブリンに襲われて……あれ? 怪我、治ってる? もしかして、あなたが?」


「うん、そうだよ。僕の唾液って治癒の効果があってね」


「そうなんですか!? だから、キ、キスを……あ、ありがとうございます! ハイゴブリンから助けてくれたうえに、怪我まで治してもらって……」


「気にしないで。困った時はお互い様だし……それにちょうど良かったよ。僕、山奥から初めて人のいるところに出てきたんだ。だから街のこととか教えてもらいたくて……君ってアルヒの人?」


「はい、アルヒで冒険者をしてます……あ! すみません、自己紹介がまだでしたね。わたしセヴァっていいます」


「僕はファムだよ。セヴァって冒険者なんだ……それにしては……」


 ファムはセヴァの装備……いや、装備というほどのものではない。何処にでもいる少女が大きめの鞄を持ち、ナイフを携えているだけだ。とても冒険者の格好とは思えない。


「私は冒険者といっても弱くて……薬草採取ばかりしてるんです……」


 力なく笑うセヴァ。冒険者は別に非力な人間でもなれる……だが、苦労はする。冒険者の最も稼げるのは魔物を倒すこと。だから非力な冒険者は稼げないし、未来はないと言っても過言ではない。


 セヴァの様子から何か事情がありそうだと察したが、ファムは何も聞こうとはしなかった。サキュバスとの三年間の生活の中で様々なことを学んだ。その中には人の心についても深く学ぶ機会もあった。サキュバスは人を魅了する魔物。人の心を知らなくては魅了することはできない。


 加えてファムはサキュバスの眷属。心の機微に聡くなっている。そして今はこれ以上は踏み込むべきではないと判断した。


「さてと……それじゃあ日が落ちるといけないし、そろそろ街に行こうか。辛いようならおぶってあげるよ」


「い、いえ……充分休ませてもらいましたし大丈夫です……よいしょっと…………ん?」


 セヴァは上半身を起こして自分の状態に気付いた。ハイゴブリンによって引き裂かれた服は、肌が露出して胸の部分が完全に丸出しになっていた。


「きゃああああああああああああっ!?」


「あ、そっか……普通おっぱいは隠すんだよね」


 サキュバスは露出が高い服を、胸を丸出しにしていることさえあったので、ファムはそうした気遣いはできなかった。


 ファムはセヴァに持っていた着替えを貸して、彼女が着替えてからアルヒへと向かう。

しばらく「キスされたうえ、おっぱいまで……」とブツブツ呟いていたが、それ以外は何も問題なく日が暮れる前にアルヒに辿り着くことができた。


 街に入るには入市税が必要で、そのうえ身分証のないファムは高くついたが、メイリダが潤沢な活動費用を持たせてくれたので問題なく街へと入れた。


 街の中は仕事を終えたらしい多くの労働者で賑わっている。その中を二人は歩いて行き冒険者を取りまとめる冒険者組合の建物へと向かう。


 冒険者組合の建物は酒場も併設していて大きい。中に入ると多くの冒険者で賑わっていて、ほとんどの冒険者が酒場のスペースで酒を飲んでいた。


 ファムはセヴァの案内で一人の受付嬢のもとへと向かう。

読んでくださりありがとうございます。


もっと他の話も読みたい、面白かったなど思っていただけたら、☆で評価・ブックマーク・いいねをしていただけると嬉しいです。


よろしくお願いします。

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