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004黄金の魂の恩恵

 三年前、彼は黄金の魂の可能性を考えられ、利用価値があるからこそ彼女に拾われた。


 黄金の魂と深く魂が結びつくことで魂の格を引き上げることができる。深く魂が結びつくには、まず彼に心を許してもらわなければならない。ただ、彼の心は奴隷として酷い扱いを受けて壊れていた。だからまずは心を癒すことから始められた。


 十分な衣食住を与え、摩耗した心はサキュバスの力で良い夢を見せるなどして心を癒した。


 彼の世話はメイリダ以外のサキュバスたちも交代で行った。

サキュバスの多くは人間である彼の世話することに消極的だった。面倒臭そうに世話をしていたが、三ヵ月も続けていると情が移っていき、親身になって彼の心を癒すようになった。


 その頃にサキュバスたちは話し合い、ファムという名前をつけた。


 そして一言も発さなかった彼が「お姉ちゃん」と、サキュバスたちのことを呼んだ時、ほとんどのサキュバスが落ちた。愛くるしい人間の少年に、逆に魅了されてしまったのだ。


 それから黄金の魂の恩恵を受けるために魂を結ぶ行為に進む。

 魂を深く結びつける……その言葉から様々なものが挙げられるが、サキュバスという種族柄、性的接触が効果的だと判断された。性交は新たな生命を生み出す行為であり、重大な儀式的な行為でもある。それが魂を深く結びつける行為であっても不思議なことではない。こうしてサキュバスたちの夜の相手……いや朝昼夜問わず相手をファムはしている。


 四六時中サキュバスの相手。性欲旺盛の淫魔の相手となれば、普通の人間であれば生命力が吸い尽くされ死んでしまう。


 だが、ファムはメイリダが飼うと決めた時点でサキュバスの眷属になっている。

 それも当初はメイリダ一人だけの眷属だったが、心が癒されるまでの間に、メイリダの配下であるサキュバス全員、千を超えるサキュバスたちの眷属となっていた。


 サキュバスの眷属になれば、サキュバスの相手が務まるほどに精力絶倫に。また生命力も通常の人間よりも大きく上回る。サキュバス一人の眷属であってもそれなのだ。複数のサキュバスの眷属になった結果……二十四時間ぶっ通しでサキュバスたちの相手をすることも可能な体になっていた。


小さな、まるで少女のような容姿であっても、とっても暴れん坊だ。


「良い匂い……はぁ、このまま食べちゃいたい……んちゅぅ、ちゅうっ、ちゅぱぁ……」


「あうっ、メイリダ様ぁ……」


 ファムの耳に唇を寄せて舌で優しく舐めるメイリダ。くすぐったそうに彼は小さく身悶える。その仕草がよりメイリダの情欲を刺激して、ファムの腹部に回していた彼女の手は徐々に下へと……。


「んんっ、魔王様。今はそのようなことをするべきではないかと……」


「っ! わ、わかっているわ!」


 声を発するまで、気配を感じさせず部屋の隅に控えていた執事服を纏った麗人。バトラーサキュバス、メイリダの秘書である。


 普段はサキュバスの頂点として威厳のある態度を示すメイリダだが、ファムの前では形無しで話が脱線したり、職務を放棄したりすることも。そのたびにバトラーサキュバスはメイリダの行動をただしている。


「メイリダ様、今日はファムに大事な話をするために呼んだのでしょう? 何かをするなら、せめて話を終えてからにしてください」


「大事な話、ですか?」


 ファムはバトラーサキュバスの言葉に、顔を上げてメイリダを見る。


 自分を見上げるファムが可愛く思わず顔が緩むが、バトラーサキュバスが「んんっ」と咳払いをしたことで、気を取り直す。


「えっとね……ファムはここに来て、もう三年になるわよね? 三年前と比べて、あなたはだいぶ成長したわ」


「そう、ですか? あまり背は伸びてないですけど……」


「背が伸びないのは私たちがそうさせ……んんっ! いえ、見た目の話じゃなくて、力の話。今ではサキュバスの中でも、あなたとまともに戦うことができる者も少ないでしょう? ねえ、バトラー?」


「そうですね。魔王様、私、それからヒーロー、アイドル、キーパーといった上位種でなければ、ファムの相手は務まらないでしょう」


 サキュバスバトラー、サキュバスヒーロー、サキュバスアイドル、サキュバスキーパーはサキュバスの上位種。魔王であるメイリダには劣るものの魔王になりうる力を保持する者たちだ。三年前までは普通のサキュバスだったが、ファムのおかげで進化した。


 ファムはこの三年間、心を癒してもらい、そして魂を結びつける行為をしていただけではない。心は癒されたが、男たちに嬲られたことで負った傷は古傷のように残っていた。


 その傷を癒すため、もうあのようなことにはならないように、サキュバスたちによって鍛えられた。自分を支配するのは自分だけ……そう教え込まれながら。


 ちなみに、メイリダが言いかけた背が伸びないことに関しては、サキュバスたちが今の可愛らしいファムが好き過ぎるあまり、一部のサキュバスのスキルによって肉体的な成長を止めているのだ。


「そんな強くなったあなたに、お願いがあるの。外に出て、人間の世界を見てきてくれない?」


 メイリダはファムに優しくお願いするのだった。

読んでくださりありがとうございます。


もっと他の話も読みたい、面白かったなど思っていただけたら、☆で評価・ブックマーク・いいねをしていただけると嬉しいです。


よろしくお願いします。

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