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001特殊な体質

久し振りに長編のファンタジーを投稿します。

ある程度は書けているので、しばらくは毎日投稿します。

本日は数話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

 フォールという国には強欲の迷宮と呼ばれるダンジョンが存在する。


 ダンジョンは魔物の王、魔王によって作られた施設とされていて多くの異形の生物、魔物が生息している。


 魔物は人類の敵とされていて、実際魔物は人間を襲う。そしてダンジョンは人類を滅ぼすための魔物たちの拠点という説が有力ではあるが、ダンジョンはどういった理由で存在しているのかは不明。


 そんな怪しい場所ではあるが、ダンジョンに潜る者は後を絶えない。


 魔物から得られる素材は金になり、ダンジョンによっては薬草や鉱石なども採取できる。さらに滅多にないが、誰でも魔法が使うことができる貴重なマジックアイテムを入手できるのだ。


 ダンジョンから得られるものは多い。だから人は命の危険があっても、ダンジョンに潜るのだ。


 ただ、誰でもダンジョンに潜れるわけではない。ダンジョンに潜るには冒険者と呼ばれる、主に魔物を相手にする職業に就く者でなくてはならない。


そして、このダンジョン、強欲の迷宮にも多くの冒険者が訪れていた。


 強欲の迷宮の中層。そこには十人ほどの男たちで構成されたパーティーが小鬼の魔物、ゴブリンの群れと戦っていた。


 苦戦することなく男たちはゴブリンを倒した。息絶えたゴブリンは姿を消し、その場には拳ほどの大きさの白く濁った水晶が残る。

 魔物は死ぬと魔力によって構成された魔石を落とす。また稀に魔力が濃く宿った身体の一部が残る。これらを冒険者組合に持って行けば換金をしてもらえ、冒険者にとって大切な収入源だ。


「やっぱり強欲の迷宮はいいな! よそでゴブリン倒しても、この大きさの魔石は手に入らねえぜ」


「まったくだ……ん? お前、腕から血が出てんじゃねえか?」


「おいおいゴブリンごときに怪我したのかよ」


「ちっ、油断したんだよ! おいっクソガキっ! 早くこっちに来い!」


 ゴブリンの戦いで負傷をした男は、自分たちの後方に控えていた人物を呼ぶ。

 その人物は背が低く、まだ年端もいかない子供のように見える。その子は麻袋に手と頭を出す穴が開いたような粗末な服を着ていて、首には武骨な鉄製の首輪をつけていた。


 その首輪は奴隷の証。この子は冒険者たちの奴隷、所有物だった。


 男に呼ばれて、腰まで伸びる手入れされていない長い髪を揺らしながら急いで駆け寄る。その子が男のもとまで来ると、男はその子の顎を掴み自身の唇を重ね、そして舌を捻じ込み口内を蹂躙した。


「んっ……ぷはっ、よし回復っと」


 口内を丹念に舌でねぶって口を離す。すると怪我をしていた腕は治っていた。血が付着しているが、傷跡は綺麗になくなっている。


「おい、ちゃんと口をゆすがせろよ。お前の唾液でベトベトじゃねえか」


「わーってるよ。それにしても良い買い物したよな」


「ああ、性欲処理に買ったつもりだったが……まさかこんな力があるなんてな」


 奴隷に口を開けるように命令して、口に向かって乱暴に水魔法で水をかける。溺れるようにゴボゴボと苦しそうにするその子の様子を見ながら、男たちは笑った。


「唾液が肉体完全回復薬と同等の効果があるって知った時は驚いたぜ。くくっ、本当にとんでもない代物だ。マヌケな奴隷商でよかったぜ。まあ、スキルじゃなくて、体質だから気付けなかったのも仕方ねえか」


 人はスキルと呼ばれる特殊な力を持っている場合がある。


 ただ、この子の場合はスキルではなく、特殊な体質で、体液に様々な効果があった。スキルの場合は鑑定魔法と呼ばれる魔法で、確認することができるが、体質の場合は分からない。


 この奴隷の子は、唾液は肉体完全回復、汗は状態異常完全回復、血は魔力完全回復、涙は身体能力超向上など体液に様々な効果がある。もし、同等の効果があるポーションを購入したら、一回分で一年は遊んで暮らせる金が必要だ。


「でもよ、やっぱり貴族に売った方が金になるんじゃねえか?」


「馬鹿言うな。俺たちで使えば、こうしてダンジョンを深いところまで潜れるんだ。長い目で見れば貴族に売るより稼げる。何度も言っただろ? それによ、穴としてもなかなかの代物だ……手放すのはもったいねえ」


 そう言って、水で濡れたその子に下卑た笑みを向ける禿頭の男。他の男たちよりも体が一回り大きいその男はどうやらリーダーらしい。


 その後、リーダーの男は「休憩だ」と告げて、その奴隷を連れて他の男たち離れていく……穴として使う為だ。使われる間、その子は何も抵抗せず、一言も発さずに、終わるのをただ待つ。


 奴隷になり、男たちに使われる日々に、すっかり心は壊れていた。壊れていなければきっと自ら死を選んでいただろう。


 それは、この子にとって不幸中の幸いだ。


 死を選ばなかったおかげで、強欲の迷宮を訪れ、この先にいる自分を救ってくれる人物に出会うのだから。

読んでくださりありがとうございます。


もっと他の話も読みたい、面白かったなど思っていただけたら、☆で評価・ブックマーク・いいねをしていただけると嬉しいです。


よろしくお願いします。

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