表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/50

承……(3-13)

 その次の日、歩は《人助け》をしなかった。


 ――あれだけ助けたいと豪語したくせに。


 そう思った僕が訊いてみると、


「あれじゃ、本当に助けたい人は助けられない気がしてねぇ」

 なんて妙に年寄り臭い言い方をされた。


「……じゃあ、もう誰も助けない?」


 訊ねると歩は首を横に振った。

 ベンチに背を預け、大きく空を仰ぐ。


「最後の最後まで助ける。

 ほら……こんな悲劇的な場面には都合のいい、困った人が現れるに決まってるよっ」


「……なんて脳天気な」

「ほら! 今に病棟から困り果てた老人が……」


 歩が両手を広げて病棟を示す。


「……」

 少しだけ待つが、老人どころか患者一人出てこなかった。


 歩が今度は憂いを帯びた微笑を浮かべた。

 まるで、その表情こそが本当と言ってる気がして――


「なーんてねっ」

 冗談めかして笑い、もう一度空を仰いだ。


「……私、昨日は徹夜しちゃった」

「そっか……」

「ていうか、眠れなくて」

「怖いの?」

「んー? どうだろ……。怖いのかな?」


 自分でも分からないという表情を長いこと張り付けて、


「ん! そっか、私怖いんだね! 考えてみたら、昨日は寒くないのに震えてた」

「なんで……」


 笑いながら言えるんだ。そう、訊ねそうになった。

 とっさに止めたが、伝わってしまう。


「だって、これが怖いっていうことなら……今までずっと怖かったから」

 それでも笑うが――憂いは、消えていなかった。


「ねえ――」

 そのままの表情で、歩は一つ提案をする。


 僕は断ることが出来なかった――何故だろう?


読んで頂きありがとうございます!

ブックマーク、評価など頂けると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下のサイトにURL登録しています。

小説家になろう 勝手にランキング



ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ