いつでもどこでも短編小説『星の降る夜』
星の降る夜
乙女は草原で祈りを込める。世界の平和を願って。
あたりに寄せる草の波。風と木々の音だけがする。
乙女は世界の平和を予感した。
やがて草原の丘に日が昇り、明日が来る。日が西の山へ沈むと月が昇る。
それを何度も繰り返す。
星の降る夜
少女は瓦礫の上で祈りを込める。世界の平和を願って。
たちまちあたりは赤い火の海。鳴り響くサイレン。
少女は気づいた。
降っていたのは星ではなかったと。
それでも丘には日が昇り、明日が来る。そして山に日が沈めば月が昇る。
やはり何度も繰り返すだけ。
星の降る夜
老婆は高層ビルの上で祈りを込める。世界の明日を願って。
あたりは閃光に包まれた。世界の終焉を告げるテレビ放送はとっくに途絶えてしまった。
老婆は知っていた。
彗星がすべてを奪ってしまったと。
もう日は昇らなかった。