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第60話 雨天水流を操るモノ

 何度か魔物に遭遇しながら川辺を上り、道中でリジェネがLv36になった。


リジェネ「先程頂いた物はなんだったんですか?」

ラソン「そういや確認してなかった……えーと、何だコレ」


 小袋の中から出て来たのは謎のカードだった。どこで使うのコレ。もしかして、ただのコレクション的なアイテムだろうか。

 でもカードの表面は光を反射し、筋状の模様が光沢を放っている。大きさも小さく、我々の知っているUSBメモリ程のサイズだ。水を弾く素材で出来ているのか、加工されているだけか本当に不思議なデザインだった。


ニクス「それはっ」


 ラソンの手にあるカードを見たニクスが明らかに反応を見せる。


リーヴェ「知ってるのか?」

ニクス「い、いや……」


 一瞬取り乱した様子を見せたが、すぐに元の平静状態に戻ってしまう。重要なモノだったりしないだろうか。心配になったリーヴェが少し強めにニクスへ問いかけた。

 彼は少し言い淀んでいたが、ボソッと控えめな声量で言葉をこぼす。


ニクス「アズガルブで制作されたゲームの、情報メモリだ」

ラソン「えっ、それって箱庭コレクションとか言う」

ニクス「知ってるのか」

リーヴェ「ああ」


 言われて見てみると、端の方に製品番号と情報名らしき文字の表記が為されていた。製品番号はともかく情報名のほうは普通に読むことができ、「P・ソーダ水(NL)」と記されてある。

 うーん、読めるけど意味がわからないぞ。ソーダ水は知っているが、PとかNLは何の事を言っているのだろう。ニクスに再度問いかける。


 今度はあっさりと答えてくれて、Pは希少度(レア度)の値で、NLはゲーム内で使うアイテムの種類らしかった。簡潔な説明だったが意外と詳しいようだ。

 ニクスの答えを聞いたリジェネとセレーネが、揃ってにニヤッとする。


セレーネ「へぇ、ニクスってゲームとかに興味あるんだぁ」

リジェネ「意外ですね」

ニクス「うぐっ、そんな訳ないだろ!!」

セレーネ「ああー、照れてる照れてる」


 あ、何故か言い淀んだ理由に合点がいった他の面々。今の彼が、明らかに狼狽えているは非常にわかりやすかった。声音や所作から十分に見て取れる。


リーヴェ「2人ともそのくらいにしておけ……そろそろだ」

ラソン「ヤベーな、こりゃ。ピリピリした空気が伝わってくる」

リジェネ「いよいよ、ですか」

セレーネ「よぉーし、やったるぞ!」

クローデリア「やったりますわ~」


 気持ちを切り替えて必要な準備を整えてから奥へと足を進める。



 今までで一番広い場所に出た。現在位置は、ちょうどキルファンとテールル村の中間辺り。川幅が一際広い場所だ。砂利で占められた岸辺もかなり広い。

 一行が何者かの警戒域に侵入した瞬間、前に聞いた声らしき音が上空から降ってきた。直後、緩んでいた雨脚が再び強くなる。


セレーネ「せっかく弱まってたのに、誰よ!」

魔物「ヴゥアァァァァ――!!」

リジェネ「来たっ」


 上空から「化蛇」の姿をした魔物「プテリュクスオプス」が現れた。具体的な姿は、人面にも見える頭の蛇に鳥の翼が生えた生物だ。フサフサの鬣を持っている。大きさは約4m。

 一行は素早く各々の配置につく。初期配置はラソンとリジェネが前衛、リーヴェとセレーネが中間、クローデリアとニクスが後衛だ。

 バトル開始早々にクローデリアが攻撃バフをかけ、ラソンが真っ先に突っ込む。敵の注意を引きつけてから攻撃に転ずる。


ラソン「精風刃」

魔物「ヴゥゥ」

ラソン「何っ」


 攻撃を躱された。敵が飛行しているのを鑑みて、飛距離がある技を選んだつもりだが当たらない。敵の反撃を剣で軽く受け流して距離を調整する。

 敵の視線がラソンに向いている隙に、リジェネは上空からの攻撃を試みる。上手く背後を取って突きを放つ。さすがに空中戦はお手のものだ。

 プテリュクスオプスは飛行と水棲の種族を持っている。効果は抜群だった。


ニクス(ヴォルキル・スフェラ)


 素早く数本の矢を上へ放ち、敵1~3体に飛行特攻の攻撃。射撃は飛んでいる敵にも平常通り当たる。

 クローデリアが防御バフもかけ、演奏終了と同時に詠唱へ移った。クローデリアもラソンと攻撃を行っているが命中させるのに苦労している。

 魔物が翼を羽ばたかせ、水の竜巻を飛ばしてきた。縦横無尽に動く竜巻を全力で回避し、止んでからリーヴェは詠唱に入る。


リーヴェ「‐天使の祝福、輝きの翼よ。光羽で抱きて眠りへ誘え‐ アーンギルピロー!」

リジェネ「テンペスト・スフィア」

カナフ「ピィ」


 リーヴェが飛翔し翼から光の羽を飛ばす。光の羽は敵を包み込んで張り付き、まばゆい輝きを放つ。飛翔は一瞬だったため反動は受けない。


 リジェネの指示でカナフシルトは、全身を上手く用い乱気流の大玉を作り出す。十分な大きさに生成すると尾で敵目掛けて飛ばした。

 上手く着弾し、内部に取り込んだモノを無数の刃で切り刻む。魔物の羽が散乱するが傷は浅い。聞いていはいるみたいだが。


セレーネ「炎撃拳」

クローデリア「アクア・スワロー」

魔物「ヴァガガー」

セレーネ「ダメ、炎も水も効かないみたい」


 雨を降らせている時点で予感はあったが、見た目や能力に捕らわれてはいけない。可能な限りいろいろな攻撃を試してみる。

 攻撃の有利不利を互いに報告し合い、情報を集めながら戦った。HPを3分の1まで削った魔物が翼を羽ばたかせる前兆を見せる。


ラソン「竜巻来るぞ!」


 掛け声で回避行動に集中。竜巻が消えるのを待つ。


ニクス(ネーベル・スフェラ)

リーヴェ「フォトン・ブレット」

ラソン「今度こそ当てる! 烈風断滅砕」


 ニクスが放った弾丸が霧を発生させ、敵に一定時間暗闇と俊敏力ダウンを付与する。ダメージがないので確定のはずだが暗闇はかからなかった。俊敏力ダウンは有効だ。

 後続の攻撃が当たりやすくなった。

 何度か竜巻を繰り出されつつ、徐々に敵のHPを削りとうとう半分まで来た頃。


魔物「ウゲアァァァ――!」

全員「っ!?」


 魔物が一度水中に潜り、浮上とともに大波を発生させてきた。魔法攻撃だ。範囲が広く、避けきれない。飛行しているリジェネ以外に直撃。大ダメージを食らい咳込むリーヴェは仲間の生存確認を行った。


ラソン「2人いないぞ」


 姿が見えないのはセレーネとクローデリアだ。


リジェネ「セレーネさんが川にっ」

リーヴェ「ならクロ―デリアが助けに行ったのか」


 泳ぎが得意だと聞いているが、果たして大丈夫だろうか。次に返事がない事に気づきニクスを探す。

 彼は後方まで流され力なく倒れていた。急いで駆け寄るリーヴェ。ラソンとリジェネは心配しつつも、敵の攻撃を自分達に引き付けている。


リーヴェ「ニクス、返事をしろ」

ニクス「うっ……」


 辛うじて声が漏れた。良かった生きてる……だが、殆どダメージのなかった彼のHPが半分以上削られていた。さすがに回避できなかったらしいが、たった1撃でここまでの重傷を受けるなんて。

 リーヴェは治癒を行いながら疑問に思った。まさか、魔法攻撃にもの凄く弱いのか。やがて治癒が効いてニクスが意識を取り戻す。


リーヴェ「ニクス、君は魔法攻撃に弱いんだな?」

ニクス「……すまん」

リーヴェ「今は戦闘が優先だ。立てるか」

ニクス「ああ」


 リーヴェとニクスが戦線に復帰する。2人が戻った頃、川辺の水面にセレーネとクローデリアの姿が浮上した。クローデリアに助けられ岸に上がるセレーネ。

 彼女を引き上げようと手を伸ばした時、高度を下げた魔物の胴体が水面ギリギリを薙ぎ払った。意図した攻撃ではなく無意識によるものだ。飛び退るセレーネの前を掠め、クローデリアは水中に顔を引っ込める。


セレーネ「クローデリア!」

リジェネ「まさか直撃したんじゃ」


 助けようと川辺へ走るリーヴェ。ラソンとニクスが移動を支援してくれ無事にたどり着く。


リーヴェ「クローデリア、無事なら返事をしろ」

クロ―デリア「……はぁ~い」


 少し遅れて小さな声が聞こえて来た。深い所に潜っているせいか聞き取り辛い。

 返答が返ってきた後、魔物の背後にある水面が勢いよく立ち上がった。クローデリアが跳躍。水中から飛び出した彼女の足が尾ヒレに変化しており、空中回転してヒレビンタを食らわせる。

 精霊人の装着している宿体は体形の変化にも対応していた。


 彼女の種族特性「水辺の人魚」のもう一つの効果。

 水中行動時、人魚形態となり俊敏力が大幅にアップする。


クローデリア「‐神の怒り。螺旋の如く巡りて、飛翔せし者に裁きを下さん‐ スピラ・ケラヴノス」


 水中で詠唱を済ませ、陸に上がると同時に魔法を発動させる。彼女を中止に発せられた落雷が敵の翼や胴に命中し墜落させた。全員が一斉にスキルを叩き込む。


リジェネ「地属性が効きます。クロ―デリアさん!」

クローデリア「は~い、大地のマーチですぅ」

ニクス(べトンアロー)


 地属性攻撃ができる者が集中的に追撃を行う。落下している時間は長くは持たない、急がなければ。

 べトンアローとは、小範囲の敵に地属性の中ダメージを与え、確率で石化を付与する技だ。


魔物「ヴガァァ――!」

リーヴェ「不味い。リジェネはニクスを空へ」

リジェネ「はいっ」


 最後の足掻きとばかりに大小の波を連発する。

 唯一飛行しているリジェネにニクスを拾って貰う。騎乗は無理でも、攻撃が収まるまで引き上げて引き上げておくことは可能だ。

 ラソンは剣を深々と突き立て、ウィンガードを使用し防御の耐性を整えた。全体攻撃ではないが範囲が広いため回避は難しい。それを連発されては被弾は免れないだろう。

 リーヴェも多少のダメージを覚悟して受けて立つ。


クローデリア「皆さんしっかり」

リジェネ「カナフ、頑張って」

カナフ「ピィ……」


 水の攻撃に強いクローデリアが継続治癒を行って支援していた。彼女でもHPダメージは避けられないが、敢えて攻撃を受けることでMPを補充しつつ回復魔法をかけ続ければ耐えられる。

 スキルを中断させられないよう意識を集中させていた。一番近くにいたセレーネとエルピスが、自分の身体を盾にクローデリアを守る。彼女の魔法が切れるのだけはダメ、という一心での行動だ。

 耐える事数十秒、ようやく敵の猛攻が止む。


リーヴェ「今だ、一気にやるぞ」

ラソン「おう。ここで終わらせるぞ」

他4人「了解」


 クローデリアには引き続き治癒とバフを行って貰い、リーヴェも攻撃に積極的に参加して戦った。為攻撃や特攻が良い具合にダメージを叩き出していく。

 最後の一撃となったのは、ニクスのシュトローム・ルヒルだ。


魔物「ヒギャァァァ――……」


 悲鳴と墜落音を響かせて巨躯が崩れ落ちる。プテリュクスオプスを無事撃破。

 撃破時に「水宮の玉」が確定ドロップする。確定ではないが「雨乞いの奏杖」もドロップ。フルートの音色がする楽杖器だ。


 リーヴェとクローデリアがLv38になった。

 ラソンがLv37になった。スキル「クイックフォートレス」を習得。

 セレーネがLv37になった。妖精スキル「ファイアアサルト」を習得。

 ニクスがLv40になった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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