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第59話 待ち時間での出会い

 リーヴェ達が戻ってくるのを手近にあった木陰で待つラソン達。

 3人を待つ間、ラソンは岩の上に腰かけ雨がそぼ降る様を眺めていた。川に来た頃より、少しだけ雨脚が緩んできたように思う。警戒はもちろんしているが、特にやる事もないのでぼんやりしてしまうのだ。

 クローデリアも今回は木陰で休んでおり、ニクスは幹に背を預けて瞼を閉じ耳を澄ませている。


クローデリア「リーヴェさん達、遅いですね~」

ラソン「なぁ……ちょっと言い過ぎたんじゃないか?」

ニクス「…………」


 間違った事を言ったつもりはなくても、後で不安になったり後悔が湧いてくるを止められない。ラソンはニクスのほうにそっと視線を流した。彼にもこんな気持ちはあるのだろうか。表情が見えないし、声音から感じ取るのも難しい。

 本当によくわからない人だ。それにしても静かだな。いつも何かと騒がしいセレーネや、よく会話に参加して来てくれるリジェネがいないと、こんなに静かになるのか。

 ここまで静かだと、逆に落ち着かないような気がする。


ラソン(ああ、早く帰って来てくれよ)

ラソン「クローデリア、何か曲を……」

クローデリア「すぅすぅ」

ラソン「て、寝てるし」


 いつの間に寝てたんだ。ていうか、よく寝れるな。

 しかし困った。どうやって時間を潰そうか。意外にパッとは思い浮かばないもんだな。正直にいってどうでもいいような事をラソンが考えていると、視界の端から冒険者風の戦士達が近づいてくるのが見えた。こっちにはまだ気づいていないようだ。


剣士「いったい何処やったんだよ?」

調合師「おっかしいな、確かにここら辺だと思うんだけど……」

踊り子「ちょっと、本当にココなんでしょうね」

女騎士「探す範囲が広いと苦労しますね」

踊り子「こんなだだっ広い所でどうしろって言うのよ」

調合師「あはは……そう言わずに頼むよ。大切なモノなんだ」


 随分と困った様子なのが遠目にもわかった。

 ラソンは立ち上がって彼らに歩み寄り、ニクスはその場で同行を伺っている。クロ―デリアは……まだ眠っていた。


ラソン「あの、何かお困りですか?」

剣士「ん? ああ、ちょっと探し物をね」

調合師「君、この辺りで革製のカバンを見なかったかい」

ラソン「え、カバン? どんな奴だ」


 ラソンがカバンの詳しい特徴を聞く。

 厚手の皮でできた四角いカバンで、身振り手振りで示された大きさはランドセルくらい。背負うタイプのようだ。思っていたより大きい。むしろ、どうやって失くしたんだよ。

 けれど、余程困っていたので一緒に探すことにする。


クローデリア「ふあぁぁ、どうかしたんですかぁ」

ラソン「あ、丁度いい所に。この人が失くし物をしたから、探すのを手伝ってるんだよ」

クローデリア「では、わたくしも手伝いますぅ」


 彼女が冒険者の元へ歩み寄る。彼らは近づいて来た彼女を見上げた。


剣士「巨人……」

クローデリア「ぷぅ、わたくし巨人さんほど大きくありませんわ~」


 クローデリアが頬を膨らませてそっぽを向いた。剣士の男に踊り子の女性が肘打ちをする。

 このパーティは、装備からして女騎士が壁役で剣士は攻撃役みたいだ。


踊り子「ごめんなさいね~、こいつ気が利かなくて。後でみっちり占めとくから」

クローデリア「いえ、そこまでしていただかなくても……」

剣士「そ、そうだよ……俺、死んじゃう。ぐふっ」

踊り子「あははは」


 再び鋭い肘打ちを食らった剣士が座り込んでしまう。クローデリアが「大丈夫」と駆けより治癒をかけた。魔法に驚く彼らにラソンが探索を促す。

 剣士が彼女に礼を言ってから、仲間達とともに辺りを調べ始めた。


ニクス「…………」


 少し奥へ行った茂みと木々がある場所で、ニクスはスキル「エリアサーチ」を使う。

 これは戦闘外スキルのひとつで、自分周囲にある隠された(見えない)アイテムを探す事ができる。効果範囲は狭いが、範囲内に何かあればすぐにわかる探索スキルだ。

 ちなみに何かある場合は該当ポイントが光って見える。


 だが、どうやらここではないようだ。他にも似たような場所がいくつかあったと記憶している。そちらを当たってみよう。周囲を警戒しながら移動し、何度かスキルを用いて探索していく。

 川のある方向へ目をやれば、ラソンや剣士達の姿が覗えた。あまり離れすぎないように注意する。


ニクス(物探しばかりしている気がするな)


 別に嫌いではないが、どうしてこう大事な物を失く奴ばかりいるのか不思議でならない。慎重に視線を走らせながら歩いていると、何やら光る物が……。


ニクス「こいつか?」


 見分けずらい木陰の茂みに隠れるようにしてカバンを見つける。先程光って見えたのは、カバンの留め金らしかった。結構重みがあり、微かに割れ物の音が聞こえる。この音は磁器か。ニクスも磁製とメノウ製の乳鉢を持っているので何となくわかる。

 中身の詳細はわからないが、割れやすい物が入っている事は確実と判断し丁寧に抱えて戻る。


ラソン「お、ニクスが見つけたのか」

ニクス「ああ」


 確認して貰うために剣士が調合師を呼んだ。調合師が大急ぎで駆け寄ってくる。あんまりにも危なっかしい足運びに、ラソンは思わず「気をつけろよ」と言ってしまった。

 案の定、途中で滑りこけそうになっている。言った傍から大丈夫だろうか。ちょっぴりクローデリアを見ているようだ。でも、彼女のほうがまだ動けるぞ?

 若干泥にまみれながら駆けつけた彼に見つけたカバンを見せる。


調合師「あっ、それです。間違いありません! ああ~、良かったぁ」

ニクス「もう失くすなよ……」

調合師「ありがとうございます」


 ニクスがカバンを手渡す。

 カバンの中身が無事かを確認する調合師。中身は薬草と乳鉢&乳棒などだった。おいおい、調合師がコレを忘れてどうするんだよ。そうは思ったが、ラソン達は敢えて何も言わない。

 代わりに、彼の仲間達が「困った奴だよ」とツッコミを入れている。地上人にとって薬は大事な生命線の筈だが、本当に大丈夫なのかこのパーティ。


クローデリア「それにしても、何故失くしたのですかぁ?」

調合師「え、それは……ははっ」

女騎士「大方、以前休憩した時にでも置き忘れたのでしょう」

剣士「たく、忘れるか普通」

踊り子「まったくよ。背中が寂しいとか思わなかった訳?」

調合師「だから、探しに来たんでしょうがっ」

冒険者3人「気づくのが遅いわ!」


 賑やかな人達の様子を眺めていると、リーヴェ達がセレーネを連れて戻ってくるのが見えた。ゆっくりこちらへ歩いてくる。

 それに並行して、会話が収まった冒険者達がラソン達に礼を言ってきた。


剣士「今回は本当に助かったよ」

調合師「あの、コレお礼です……て、アレ?」

ニクス「…………」


 ニクスにお礼の品を渡そうとした調合師がキョロキョロと視線を巡らせる。

 気が付くとニクスは、騒がしさから逃げるようにもとの木陰へ退避していた。仕方がないので目の前のラソンに品を渡す。

 冒険者達はリーヴェ達とすれ違い、手を振りながらキルファン方面へ歩き去って行った。


クローデリア「お帰りなさ~い」

リーヴェ「ただいま」

リジェネ「今の人達は?」

ラソン「ああ、旅の冒険者だよ。探し物を手伝ったんだ」

リジェネ「へぇ」


 一通り言葉を交わし終わると、視線はセレーネのほうへ向く。


ラソン「もう行けそうか?」

セレーネ「うん、何とかね。ホントごめん」

ラソン「ま、いいさ。な! ニクス」

ニクス「……ああ」


 ニクスもチラリとセレーネに視線を寄越して言った。様子は今までと変わらない。パーティが合流した。

 リーヴェ達は再び、川の探索を続けるべく歩き出したのである。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード33  試してみたい組み合わせ】

 アズゥルードでの、とある戦闘中の事。


エルピス『ガルルルーアッ』

セレーネ「っ! ラソン、風の中距離攻撃を合わせて」

ラソン「え、わ、わかった……精風刃」

セレーネ「レーベ・イグニス」

エルピス『ガオーンッ』


 エルピスの状態に合わせてセレーネがタイミングを指示。

 上手く両者の技が融合し敵に直撃した。雨で失速してた火力が息を吹き返している。晴天時と同じくらいの威力を敵に叩き込む。

 雨が降っていなかったら、きっと凄い事になっていただろう。ラソンは口をあんぐりしている。


セレーネ「やったー、エルピスナイス!」

エルピス『ガルルッ』


 雨で溜まっていた鬱憤が、少しだけ解消され喜ぶエルピス。「あぁ、スッキリした」そんな顔だ。

 川に到着してからここまで、エルピスは妙に怒りっぽくなったり、急にしょげたりと情緒不安定だった。彼は体温の高低で、態度が変わるデリケートな性格をしているのだ。

 体温が上がり過ぎると、とんでもないことになったりする。


 順調に敵を倒していき、残り1匹になった所でラソンが意気揚々と声を上げた。


ラソン「ニクス、援護頼む」

ニクス「了解」

ラソン「クイックコンフュージョン」

クライス『キキッ』


 ラソンがクライスに指示し、敵1体に混乱を確実にかける。そこへニクスの「クロスチェイン」が炸裂。

 味方が状態異常スキルを使い、且つ敵に状態異常が入ったので「追撃+即死」攻撃へ変化した。追撃とは、ダメージ計算が必ず2番目以降になるというものだ。

 敵に即死耐性がないので、効果が確定で入り瞬殺。魔物相手だと、蘇生の心配をほぼしなくて済むのも嬉しい限りである。今の所は、蘇生してくる魔物がいないというだけだが。


ラソン「よっしゃぁー、やっと成功したぜっ」


 ずっとやってみたかった組み合わせだ。

 以前は上手く状態異常をかける事ができず、ここに至るまでも攻撃タイミングがズレて成功した事がなかった。本当に何度目かもわからない。

 こんな時だが、本当に1度だけでも成功させてみたかったのだ。

 最後の1匹を撃破する。敵の後続が来ないことを確認し、ラソンは子供のように歓声を上げた。


セレーネ「子供ねぇ」

ニクス「はぁ……」

ラソン「何だよ、良いじゃん。一度はやりたいだろ、即死攻撃!」

リジェネ「即死攻撃をしたのはニクスさんですよ?」

ラソン「いやいや、オレ達の状態異常あってだろーが」


 いつにもまして賑やかな一行。

 わざわざ敵を1体残してやるか、と疑問を上げる女性陣。攻撃をした当人であるニクスも、若干呆れている様子だ。付き合わされるのも楽ではない。

 頑なに「オレやったぜ」主張をしてしまう彼の姿は、外見通りの子供になってしまったみたいだ。

 今までできなかった事、新しい技をついつい試してみたくなる子供心? を隠し切れないラソンであった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【タルシス辞典 ゲストキャラクター】

 物語が進むにつれて登場する人物の中には、ゲストと呼ばれる戦闘パーティに参加してくれる人々がいる。

 彼らは本編のほんの一部分に、少しだけパーティへ加入する頼れる助っ人達だ。ずっと旅に同行できないが、代わりに能力が強力だったり個性的だったりと様々。特定のストーリーやイベントで参戦してくれるぞ。


 中にはパーティに装備可能者がいない武器を装備している人もいる。

 この場合は新しく入手&購入はできないが、初期から(サブ枠も含め)最強クラスの対応武器を装備しているので安心して欲しい。なお2種類装備でき、一方が両手持ちだった場合は一時的にアイテム(装備)に該当武器がストックされる仕組みだ。

 本作では数人の登場人物がゲスト参戦する予定なので、彼らの登場を楽しみに待っていて欲しい。

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