表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/619

第57話 再会

 リーヴェ達は川辺を歩き、進行方向に見覚えのある人影を発見した。近づくにつれて予感が確信に変わる。間違いなくニクスだ。


ニクス「この辺りにいる筈だが、奴はどこだ……」

リーヴェ「ニクス」

ニクス「っ!? ……お前達か」


 考え事をしている最中に声をかけられ、咄嗟に身構えるニクス。だが声の主を確認すると構えを解く。

 声をかけられるまで気づかないなんて、前に会った時とは大違いだ。以前は小さな物音にすら反応できる敏感さを見せていたのに。


 ニクスと初対面のセレーネとクローデリアが挨拶をした。彼もそれに応え、互いに自己紹介をする。

 目撃者の話から、魔物の事を調べていると推察できるが念のため本人に確認を行う。ニクスは、ここに他所から来た魔物が住み着いた、という噂を聞いて調べているのだと答えた。


リーヴェ「私達も魔物の事は気になっている。どうだ、一緒に行かないか?」

ニクス「…………」

リジェネ「ニクスさん、一緒に行きましょうよ」

ラソン「ニクスがいてくれると助かるんだけどなぁ」

ニクス「……わかった。また協力して貰おう」


 リーヴェ達が揃って笑顔になる。またしばらくよろしく、と声をかけニクスを迎え入れた。

 ニクス(Lv39)が一時的にパーティに加わった。彼は、必ずリーヴェ達よりもレベルが高い状態で参戦するキャラだ。

 彼を再び仲間に加えた一行は、改めて川の探索を開始する。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード32  ……気になる】

 ニクスを仲間に加え、川辺を探索するリーヴェ達。

 5人と微妙に距離をおいて行動するニクスに、セレーネがそろっと遠慮がちに近づいて声をかけた。


セレーネ「ねぇねぇ、貴方ってどこの人?」

ニクス「何故だ」

セレーネ「だって、今まであった人と雰囲気違うんだもん。異国の人なのかな~って」

ニクス「……まあ、そうだな」


 うっ、さっそく会話が止まってしまった。セレーネは急いで次の話題を用意する。

 何かないかなぁ、と彼の姿に目をやり、ふと思った事を口にした。


セレーネ「そういえば、その恰好辛くない?」

ニクス「ん?」


 眉を顰めるニクスにセレーネが言い方を変える。面倒だし直球で聞くか。


セレーネ「いやぁ、顔の布濡れて気持ち悪くないのかな~とか。下が気になるっていうか」

ニクス「…………」

セレーネ「な、何で黙ってるの」


 返答が来ないことに彼女が戸惑いを見せると、遅れてニクスが声を発した。声のトーンが少し低いような気がする。


ニクス「別に問題ない……俺よりもあっちの方が大変じゃないか?」

セレーネ「え」


 ニクスが視線で示すほうに目を向ける。リジェネとクロ―デリアだ。

 確かに服装だけみたら、彼らも十分大変そうである。リーヴェやラソンの服装も大分雨で重くなっているが、鎧を着ているリジェネや裾の長いクロ―デリアは辛そうだ。

 水精人種と言えども、張りついた服で陸を歩くのは堪えるらしい。むしろ、水中にいる時よりも辛いんのではないか。

 セレーネは思わず苦笑いした。結局、彼の素顔についてはわからず仕舞いだ。


セレーネ(うう……気になる)



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【タルシス辞典  スキルの習得方法】

 冒険に欠かせないスキルの習得方法は、いろいろな方法で覚える事ができる。

 1つ目はレベルアップ(成長)によって覚えられる「習得」だ。こちらは説明するまでもないだろう。

 2つ目は「派生」で、特定のスキルを使い続ける事で稀に閃く事がある方法。覚えられるかは運に次第なため、最後まで習得できない事も少なくないぞ。


 3つ目は「伝授」である。これはイベント等で覚える方法で、誰かに教わったり自主練したりしてスキルを身につける事になるだろう。

 4つ目は「解禁」だ。特定の条件によって能力が解放されるスキルはこの分類に入る。キャラが本来もっていた能力や騎乗生物のスキルが含まれる。

 基本的な習得方法は上記に含まれるが、この4種に含まれないスキルがあるという噂も……。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 川の探索を続けるリーヴェ達は、男を襲ったのと同種の魔物「シャボンフィッシュ」に襲われていた。

 敵の数は8と多く、激しい雨の影響でセレーネがしょっぱなから絶不調である。まあ、不調なのはセレーネ本人と言うよりは……。


エルピス『ガルガルッ! キュウゥゥ……』

セレーネ「エルピスもういい。下がってっ」

リーヴェ「やはり、2人には辛いか」

ラソン「セレーネ、さすがに雨が酷いっ。味方のフォローに専念してくれ」

セレーネ「くっ……了解!」


 悔しそうに舌打ちし、雨に濡れた髪を後ろへ払って中間地点まで後退。彼女の交代と同時にリーヴェが前に出た。攻守交替だ。


 前に出る際、足元の状態を感触と視界で素早く確認。

 地面は砂利で、苔の類はなく見た目ほど滑らなそうだ。しかし雨が酷くて視界が悪いのも考え、あまり大立ち回りをするのは控えたほうが良い。

 瞬時に情報を脳内に叩き込んで行動を開始する。事前に雨での戦闘をシミュレーションしていて良かった。考えられる最低限を念頭に入れて戦う。

 他のメンバーも激しく走り回るのは極力控え、援護しやすいように距離を広げ過ぎずに戦っていた。


リーヴェ「虹華星空斬(こうかせいくうざん)っ」

ラソン「くそっ、数が多いな」

リジェネ「何とか数を減らさないと後衛に被害が」


 リーヴェがラソンの警戒領域から離れている敵を攻撃。

 リジェネも目の前に2匹の敵と対峙しており、ラソンも周囲4体を一手に引き受けている。あれ、1匹足りないとリーヴェが気づいた時、中央で後衛の守護に回っていたセレーネから声が上がった。


セレーネ「ニクス、後ろ!」

ニクス「っ!!」


 ニクスの死角から敵が迫る。セレーネが急いで助けに入るが間に合わない。雨で勢いづいた魚は素早かった。

 ニクスは咄嗟にガード(受け身)体勢をとる。魔物の体当たり攻撃が直撃。ガードには成功したが、何かがおかしい。目撃した全員が目を見開く。

 彼は攻撃を無力化され、仰け反った魔物を瞬時に仕留める。いや、ちょっと待て。


リジェネ「今、なにか変じゃなかったですか?」

セレーネ「そうよ。硬いものが擦れた音が聞こえたわよ」

クローデリア「音? わたくしは、彼にあまりダメージがない様子が気になりますわ~」

リーヴェ「話は後だ! 目の前の敵に集中しろ」


 すぐに戦闘行動に戻っていたリーヴェとラソン。

 叱咤したリーヴェの声に、皆の緊張も再び張り詰めた。ニクスが弓を構える。

 狙いを定めるのと同時に矢へ効果の付与を行う。


ニクス(シュトローム・ルヒル)


 放たれた矢は電流を帯び、鋭い音で空気を切り裂きながら敵1体に向かっていく。雨によって威力が強化された雷撃が魔物を貫き、被弾とともに3回火花が爆裂する。水棲特攻の弓用派生スキルだ。

 どうやら、一行と会う前にも魔物と遭遇し習得したらしい。魔物を瞬殺。


クローデリア「負けませんよ~、ライトニング・スフェラ」

魔物達「!!(悲鳴)」


 残っていた魔物数体をクローデリアが撃破した。戦闘が終了。



 武器を収める一行は、改めてニクスの周囲に集まる。皆、先程の事が気になるのだ。


セレーネ「ちょっとちょっと、さっきのアレは何!?」

クローデリア「ニクスさんは後衛なのにタフなのですねぇ」

ラソン「いやいや、おかしいだろ」

リジェネ「そういえば、以前地下で戦ってた時も妙に打たれ強かったですよね」


 全員、大混乱だ。一気に捲し立てている。


リーヴェ「皆落ち着け。それでは彼も答えられないぞ」

全員「…………」

ニクス「…………」


 場が一気に静まり返った。急に静かになると、ちょっと話かけ辛いな。

 リーヴェは落ち着いて息を吸い、ニクスに思い切って問いかけた。


リーヴェ「ニクス、君は特殊なスキルでも持っているのか?」

ニクス「…………」


 スキルかと思ったのは、彼のクラス的に盾の類は装備できないだろうと予想したからだ。

 ニクスは沈黙して思案する。リーヴェ達からはわかりづらいが、彼は非常に悩んでいた。打ち明けるべきか、話すならどの程度、しかし話すには自分の素性を幾らか明かさねばならない。

 彼らを信用していない訳ではないが、より込み入った事を話す程の仲ではないと思う反面で、話しても大丈夫なのではないかと感じてもいる。

 ニクスは大いに答えを躊躇っていた。


リーヴェ「ニクス?」

ニクス「っ! ……ああ、スキルだ」


 悩んだ末にニクスが明かしたのは、「ガード時は物理攻撃がほぼ効かない」スキルを習得しているという事だけだった。まぁ、デメリットがない訳ではないが、弱点を自分から言うのは好きじゃない。

 まさかこの思想と躊躇が、後に悲惨な事態が自身へ降りかかるとも知らずに。


セレーネ「ソレ羨ましい」

ラソン「てか、オレの立場ねーじゃん」

リジェネ「ですが、この手のスキルがノーリスクな筈ないですよね」

リーヴェ「確かになにかありそうではあるが」

ニクス「…………」


 何度聞いても生返事を繰り返すだけだ。聞かれること自体が辛そうである。聞かれる度、表情に翳りがさす。

 リーヴェ達は、それ以上応える気がないニクスに無理強いはせず探索を再開した。



 探索の途中、川の流れをずっと見ていたセレーネが大声を上げる。


セレーネ「ああ! 皆ストップ」

ラソン「なんだ、また魔物か」

リーヴェ「魔物っ」

セレーネ「違う違う。ほら、あそこ」


 セレーネが指さす方向に視線を向けると、川の中央に辛うじて残っている小島があり上に宝箱が見えた。よく見つけたな。

 案の定、宝箱が欲しいと彼女が言う。だが、周囲には橋にできるモノはないし、今の川では取りようがなかった。足場があったのかもしれないが完全に水没している。


リーヴェ「どうやって取るんだ」

セレーネ「クローデリアが水を操って取れたりしない?」

クローデリア「う~ん、川のマナは気が立っていてお願いを聞いてくれませ~ん」

全員「…………」


 リーヴェ達は言葉の意味を理解するのに時間がかかった。


リーヴェ「要するに操れないという事だな」

クローデリア「ごめんなさ~い」

セレーネ「じゃあ、リーヴェ達が飛んで……」

ラソン「オマエ、2人を危険にさらす気か」


 翼を使えばHPを削られるだけではない。宝箱を取るには小島に着地する必要があり、雨に激流のど真ん中というリスクもある。

 飛んだまま箱を拾えないのかと思うかもしれないが、そこは……察して欲しい。ゲーム的な「アレ」だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ