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第54話 再認識

スコル「幼いリーヴェさんは、どうして城の外へ出たんですか。魔物が出るってわかっていたはずなのに、何故1人で?」

リーヴェ「それは……」


 何でだっけ。幼かったあの頃は、まだ戦う力なんてなかったはずだ。

 魔物に襲われたという事は町の外へ出たという事。王女であるリーヴェが町を出る程の移動なら、普通は乗り物などを利用するはずである。一般の市民だって、遠出する時は乗り物を利用する事があるのに。


 1人で飛び出すのは、割とやんちゃだったから在りえなくはないけど……。思えば、兄の真似をしていろいろやったなぁ。

 リーヴェは意外とお兄ちゃん子だった。一緒にいる時間が、両親や他の大人達より多かったからだ。


リーヴェ(て、そうじゃない)


 今、思い出したいのはあの時の事だ。

 リーヴェは小さく唸りながら過去の記憶を呼び起こす。


 ――ねえ、いつ帰ってくるの?

リーヴェ「あ……」


 ――…………はなおらないの。死なないよね?

 リーヴェ「っ、そう……だった」


 あの日、自分はずっと療養で帰ってこない母とリジェネに会いたかったんだ。会って、力になりたかった。あの頃は、自分に癒しの力があるって知ったばかりの頃だったから。


 リーヴェが泥の魔物に襲われたあの頃、当時4歳だったリジェネが流行り病にかかって苦しんでいた。

 母は彼の治療のために「癒しの街 エケブラール」に、滞在したまま何か月も帰ってこなかったのだ。母は移してはいけないという配慮と、なかなか回復しないリジェネのために街での治療を選んで。

 でも当時のリーヴェは詳しい事は知らなかったから、覚えたての魔法で助けられると思っていた。戦う力なんて、まだなかったのに。


リーヴェ「衝動的に城を飛び出して、それで……近道しようとして池の傍を通ったんだ」


 池は地図に載らない程度には小さく、人が見る分には大きなものだ。

 最近、池で変な魔物が出没すると大人達が話していたが、リーヴェは知らなかった。兄達は、それを知っていたから池に直行したのだろう。

 他の大人達よりもいち早くリーヴェの思惑に気づけたのは、誰よりも身近で彼女の様子を見ていたのが兄達だったから。そのおかげで自分は助かったのだ。


リーヴェ「はは……今思えば、子供の足で行ける距離じゃなかったのにな」


 リーヴェが住む城がある王都ティファーレントから、癒しの街エケブラールまでは大人でも乗り物を利用する程の距離がある。

 途中で湖を越えなくてはならないし、徒歩で行こうとしたら何十日かかる事だろうか。魔物も徘徊しているし、まず子供が1人で行きつけるものではない。


スコル「仕方ないですよ。弟さんを助けたくて必死だったんでしょ?」

リーヴェ「そうだな。周りを頼るという発想が思いつかないくらいに、必死だった」


 ちゃんとお願いすれば、何かしてくれたかもしれないのにな。

 2人で話していると、左手のほうからリジェネの声が聞こえて来た。


リジェネ「そんな所で何やってるんですか?」



 祭街にやって来たラソン達3人は人込みの中を歩き回っていた。通りすがる人や店の中などを注意しながら進む。


セレーネ「探そうとすると案外見つからないものね」

ラソン「アイツ、どこ行ったんだ」


 本当にこっちへ向かったのか、とクローデリアに確認する。彼女も方角までしか見ていない。向かった方向は確かでも、ここにきているかはわからいないのだ。

 勝手な先入観でアタリをつけてきたしまっていることに、ラソン達は気づいていない。

 他を探すかと提案しようとした時、人波のなだらかな通りの端を歩いていくリーヴェの姿を見つけた。誰かと一緒にいる、ような気もする。


クローデリア「早くしないと見失っちゃいますぅ」

ラソン「急ぐぞっ」

セレーネ「うん」


 リーヴェの後を追いながら、ラソンとセレーネの心中では思う所があった。湿原での戦いの時の事を、冷静になってから考えて感じたことだ。


 何とか見失わずに尾行し、リーヴェの意図を目の当たりにする3人。リーヴェが宿をこっそりと出た理由、湿原で放心した際の詳細と知らなかった事ばかりだ。否、聞かなかった事だろうか。


ラソン(ちゃんと原因を聞いていなかったな)

セレーネ「過去の恐怖か……あたし、悪い事言っちゃった気分だよ」

ラソン「そう、だな。なんか気まずいな」


 その行動には原因があるって、何故気づかなかったんだろ。魔物と戦う事が日常の一部になっていたから、恐怖に対して多少マヒしていたかもしれない。いや、怖くない訳じゃないんだ。

 でも動かなければ、戦える力があるなら戦わなくては生きていけないから。大した戦闘力のない人々だって、魔物に襲われない対策を少なからずしているモノだ。

 これは、ある意味で落とし穴であった。


 すっかり盗み聞きしたまま、出るに出られない状態になってしまったラソン達。そこへ背後から声がかかる。


リジェネ「そんな所で、何やってるんですか?」

ラソン「ふわぁっ」

セレーネ「ひぇっ」


 2人はほぼ同時に声を上げて飛び出していた。



 唐突に、あらぬ方向から覚えのある声を聞いたリーヴェは振り向いた。

 飛び出したラソンとセレーネは慌てて隠れるが姿はバッチリと見られている。


クローデリア「ふふっ、今更隠れても無駄ですよ~」


 唯一クローデリアだけが、余裕な態度で微笑みリーヴェに歩み寄った。


クローデリア「言って下されば協力しましたのよ? 泥のお人形さんなら、わたくしも作れますのにぃ~」

リーヴェ「いや、思いつかなかったんだ」

リーヴェ(それでは本末転倒だろう)


 挽回を示す相手に頼んでは意味がないし、秘密の特訓にもならない。頼み辛かったというのもある。

 少し遅れてラソン達も近寄ってきた。リーヴェがここにいる理由を尋ねると、彼女が予想だにしなかった答えが返ってきた。


ラソン「オマエが祭街のほうへ行ったって聞いて、酒とか悪い遊びに走っちまうかと思って」

セレーネ「ええ!? あたしはてっきり、自棄になって男を引っ掻けてるのかと」

リーヴェ「……お前達、いったい私をどういう奴だと思っているんだ」

リジェネ「もう、さすがにソレは極端すぎないですか?」


 2人が黙り込む。祭街に行ったからと言って想像が激しすぎる。リジェネに言われて赤面する2人。

 しばらくして火照る顔が冷めるの確認した2人が、真剣な顔で口を開いた。


ラソン「けどさ、改めて思ったけど……治癒の支援があるって相当に恵まれてたんだよな」

セレーネ「うん、あたしも思った。考えてみたら、治癒魔法の援護があるって凄い事よね」

リジェネ「そっか、こっちには魔法を使える人はいないですもんね」

クローデリア「わたくし達の世界では考えられませんわよね~」


 人が魔法を使える世界と、使えない世界とで反応が異なるの当然だ。

 戦いを何度なく経験し、ともに戦ってきて当たり前になっていた。けど違う。地上人にとっての常識は、戦闘で魔法による援護ないのが普通なのである。


 リーヴェがああなって、初めて治癒魔法のありがたみを再確認した。前衛で戦う3人は、改めて後衛2人に感謝を伝える。魔法が使えてありがとう、いつも援護してくれてありがとうと。

 リーヴェとクローデリアは照れるばかりだ。特別な事をしているという認識がないから戸惑う。そしてこれは、後衛だけの話ではなかった。自然とそれぞれがやって来た事に目が向く。


リーヴェ「ラソンが攻撃を防いでくれるように、皆がいるから今までちゃんと戦えていたんだな」

ラソン「ああ、互いにできる事とできな事があるから助け合える」

セレーネ「助けられてたんだね」

スコル「皆さん、仲が宜しくていいですね」


 いろいろと話していく内に普段の様子が戻ってきた一行。

 互いの持つ能力の重要性を少しは理解する事ができたのだった。何となくやって来た事の意味。当たり前、という言葉で片付けちゃいけないんだ。


セレーネ「よーし。明日から皆で実戦練習でもしない?」

ラソン「いいな。久しぶりにやるかっ」

リーヴェ「初心に帰ってやってみよう」


 3人の気まずい空気は、もう何処かへ行っていた。


クローデリア「わたくしも仲間に加えて下さいな~」

リジェネ「ぼ、僕もっ。秘密特訓の成果をお見せします!!」

セレーネ「それ、言ったら秘密の意味ないじゃん」

リジェネ「あっ、ああぁ。今のは聞かなかった事にして下さい」


 リジェネの慌てっぷりに笑いが起きる。

 その後、もう少し特訓を続けてから1日を終えるのだった。にしても、揃いも揃って夜歩きが多い一行である。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【タルシス辞典  蘇生と即死の状態異常】

 この惑星では限られた者だけが使える特別な魔法と、専用の回復薬でのみ行使が可能。専用の回復薬は高価な物で序盤のうちは入手困難。

 蘇生と言っても、死んだ者を蘇らせる(生き返らせる)訳ではない。あくまでも「瀕死」の状態を治癒できるだけだ。バトル中でHPがゼロになるダメージを受けるとまず「瀕死」の状態になる。だが、仲間に蘇生手段がないと即時で戦死扱いに移行する。


 これは即死の状態異常にも当てはまり、戦闘終了時に瀕死の仲間がいる場合は蘇生するか否かの選択肢が現れる。蘇生しないを選択すると、治療が間に合わず死亡という扱い(離脱)になってしまうので注意しよう。

 また、蘇生手段がない場合(アイテムがない等)は選択肢が出ても選択できない。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード29  最新のゲーム?】

 キルファンの街を散策中、リーヴェ達は昼間の遊び市場の前で屯している集団を見掛けた。


男性「むおぉぉー、ここにも無いなんて悲劇だぁ」

青年「あり得ねぇ……」

少年「ええ、ないの~」

少女「パパ、あれがないよぉ」


 年齢層はバラバラ、特に接点がある様子もない。どういう集まりなのかがわからない人々だった。ただひとつ共通して言えるのは、特定の何かを欲しがっているという事だ。


リーヴェ「ああもあからさまだと、逆に気になるな」

リジェネ「面白いものがあるんでしょうか」

クローデリア「でも、皆さん残念そうにしてますよ~」


 気になって群がる人々に歩み寄る。

 一向に立ち去る気配がなかった1人の男性に声をかけてみた。


リーヴェ「何がそんなに残念なんだ?」

男性「んん、君達知らないのかい」

リーヴェ「ああ」


 男性があんぐりと大口を開ける。そんなに驚く事か。

 一瞬遅れて、男性は激しい剣幕で捲し立てた。


男性「信じられないっ、まさかアレを知らない!? ゲームだよ、ゲーム!」

セレーネ「げ、ゲーム?」

男性「そうさ、今流行りのゲーム。その名も『箱庭コレクション』、またの名を『ボックスヤードクラフト』さ」

全員「はい?」


 男性は言いながら、小さな端末を見せてくる。リーヴェ達は、どういった遊びなのかがまったく想像できない。男性は他にもキューブやカードも見せてくる。

 しかもコレ、天空界の古い資料で見た「機械」という奴じゃないだろうか。何故、彼がそのような物を持っているんだ。むしろ、そっちの方が気になった。

 詳しい話を聞こうとしたが、男性が突然奇声を上げる。


男性「ああ、こうしちゃいられない。早く他を当たらないとっ」

リーヴェ「え、あの」

リーヴェ(行ってしまった)


 忙しなく走り去る男性。あまりの出来事に、反応できないリーヴェ達であった。

 設定の事など、いろいろな説明が後回しになってしまってすみません。

 ゲームにありそうな要素を小説に落とし込むのは非常に難しいです。細かい所を詰めていると、もう訳わからん事に……著者がこれではダメですね。

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[一言] 〈設定の事など、いろいろな説明が後回しになってしまってすみません。  ゲームにありそうな要素を小説に落とし込むのは非常に難しいです。細かい所を詰めていると、もう訳わからん事に……著者がこれで…
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