第49.5話 サブイベント回収05
「それぞれの行動」で仲間達が別行動をしていた時のエピソードを集めました。
パーティが解散しているからこそ起きるイベントだらけです。
【崩壊舌グルメ】※条件、リーヴェ操作不可時&リジェネ操作時のみ。
リーヴェの看病のために宿屋に残ったリジェネ。他のメンバーが皆外出しているので今は1人だ。
リジェネ「ふあぁぁぁ……いけない、眠気が」
大きなあくびをし、首が船を漕ぎそうになっていた事に気づく。昨日からずっと傍についていてさすがに疲れを感じてきた。静かな部屋で話し相手もいないから眠気が増す一方だ。
眠気を飛ばすために一度席を外し、顔を洗いたくて階下へ降りる。小さな宿なので、洗面やお風呂などの施設は1階に集中していた。風呂場も交代制ですべて共同スペースだ。
小さなあくびを繰り返しながら降りて行き、水場で顔を洗うリジェネは帰りがけにふと調理場の人々の様子が目に入った。なんだか困った顔をしている。
リジェネ「どうかしたんですか?」
料理人「ん、ああ。何でもないんだ」
とても問題がないようには見えない。
客に遠慮しているのは十分伝わってきたが、気になって仕方がなかったリジェネは少し強引に事情を聞いた。ちょうど身体を動かしたいと思っていたのだ、と無理に推す。
すると最初は渋っていた料理人が、遠慮がちに困ったことが起きたと話し始めた。
料理人「いやね、今泊まっておられるお客さんが変わった味覚の持ち主で……先ほどお出しした料理が気に入らないらしいんだよ」
リジェネ「そ、そうなんですか」
小声で耳打ちしてくる料理人の話に、嫌な汗を掻き始めるリジェネ。よりによって食事面の、しかも味覚の話だ。
リジェネ自身は不服だが、仲間達から禁止令が下される程の料理センスを持つ彼には荷が重すぎる。皆からは「実は味覚が変なんじゃないのか」だのと言われてきた。……ん?
リジェネ(ひょっとしたら、上手くいくかもしれないんじゃ……)
この場に他のメンバーがいたら絶対止めるだろうけど、僕だって「料理くらいできるんだ」と内心思っていたリジェネは気合を入れて切り出した。
リジェネ「あの、僕に料理を作らせて下さいませんか?」
料理人「ええ、君が? 出来るのかい?」
見たところ騎士の格好はしているが、貴族の坊ちゃんっぽい品の良さを感じるし……大丈夫なのだろうか。味比べをする訳ではなく、料理をするのだと不安になる料理人。
リジェネは負けじと強気でお願いし、渋々料理を作ることを承諾させる。本当に大丈夫なんだろうか。かくしてリジェネは、特殊な味覚を持つという客に料理を振舞うことになった。
グルメ客「うおおー、素晴らしい! 感激だっ」
料理人「ええぇぇぇ」
ウェイター「追加をお持ち致しました」
グルメ客「ありがとう。んー、この独特の味と食感が実にいい!!」
次から次へと追加を注文する客は、リジェネの作ったヤバい料理を絶賛する。毒でないとはいえ、どういう味覚をしているのだろう。客は目に涙を浮かべる程喜んでいた。
こっそりガッツポーズをとるリジェネに、食事を終えた客が歩み寄り手を握ってくる。
グルメ客「君がこの素晴らしい料理をした人だね。ありがとう、ワターシは実に満足した。最高だよっ」
リジェネ「ありがとうございます」
グルメ客「これは料理のお礼だ」
何度も頷いている客から、天使像のついたブレスレットを渡された。
リジェネは装備「成長のセフィラ」を入手。これは装備者の獲得経験値を少しだけアップさせる装備品だ。
ヤバい料理で、凄いレアなアイテムを手に入れてしまったようである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【少年探検隊】※条件、リーヴェ操作不可時&ラソン操作時のみ。
町の人々に事情説明を行うため、各地を歩き回っていたラソン。
少年「おい、お前」
ラソン「なんだよ」
乱暴な言い方で呼び止められ、ちょっぴりイラっとしながらも振り返った。声の感じから想像していたが、相手は完全に年下だとわかる外見をしている。年齢は11~3歳前後か。
少年はラソンの外見を観察し、納得がいった感じで頷いた。
少年「やっぱりここらの奴じゃないよな。けど、強そうだし合格!」
ラソン「は? 合格って」
相手は完全にラソンを同じ年の子供だと思っている。
身長だけみれば、ラソンは彼よりも大きいし年上に見えなくもない。だが、顔立ちが完全に幼いのだ。少年は顔の造形から同じ年だろうと勘違いしている。
ラソンが言い返す前に手を引かれ、ぐいぐいと強引に連れて行かれてしまう。どこへ連れて行く気だ。結構な速度で走らされ、まともに言葉を紡げない。下手に喋れば舌を噛みそうだった。
ラソンが連れてこられた先はこじんまりした路地裏の広場で、そこには既に数人の子供達が集まているのが見えた。皆、同じくらいの年頃だ。
少女「レン君遅-い」
レン「悪りぃ、悪りぃ。でも強そうな助っ人を連れて来たぜ」
ラソン「いや、オレは別に助っ人って訳じゃ……」
少年A「やるじゃないですか」
少年B「さすが、オイラ達のリーダーだな!」
ダメだ、全然話を聞いてくれない。もう意味がわからなくて仕様がなかった。
彼らは「少年探検隊」と言うグループらしく、これから探検に行くため戦えそうな面子を補充したかっったという。大人にはナイショだと言っていたので、ラソン1人で行動していないと声をかけられることはきっとなかった事だろう。
探検隊の装備は貧弱で、唯一短剣を持っているレン以外は刃物を持たせては貰えなかったようだ。
少年はそれぞれに手作りの棍棒と弓を持っておいる。少女は武器らしい物は持っておらず、代わりにロープや食料などが入ったカバンを背負っていた。
ラソン(棍棒はともかく弓はな……)
素人が作った弓が、果たして使える代物なのか怪しい所だ。ここは同じ年齢を装ってついて行ったほうがいいな、と判断したラソンは彼らの探検に同行することにした。
ラソン「おりゃー、せいっ」
魔物「グガガガッ」
ラソンが遭遇したボーン系の魔物を倒す。町の近くという事もあり、遭遇した数は2体と少なった。
少年達は全然戦力にならない。その後はラソンが助言しながら、できるだけ魔物と遭遇しないように移動を続けた。
レン「ホント、お前強いな」
少女「うん。頼りになるね」
ラソン「ちょい待ち。迂闊に進むな、また魔物に見つかるだろ」
レン「あ、うん悪い」
ずんずん前へ行ってしまうレン達を強めに制止しておく。
クライスに索敵をして貰いながら進むこと数時間が経過。賢そうな少年が控えめに声を上げた。茂みの先を指さして促す。
少年A「いました。あそこです」
レン「大人達が言ってた通りだったな」
茂みの先には珍しい動物の住処があった。
オアシスの傍にある僅かな緑の中、人に気づかれないよう巣を作る鳥に似た小型の動物。名前は「コルネアカモバシ」と言う。鳥に似ていると言っても鳥類ではなく哺乳類だ。
風船のような尾には大量の水が蓄えられていて、激しい暑さに強いと言われている。長く平らな嘴で、人が食べることができない小魚を主食として生活している大人しい動物だ。この辺りにしかいない希少種である。警戒心が強いので、なかなかお目にはかかれない。以外にも探検隊は運が強かった。
ラソンは「コルネアカモバシの隠れ巣」を名所図鑑に記録した。
ラソンと少年探検隊はそっと動物の鑑賞を行い無事に町へ帰る。少年探検隊と別れを告げ、再び歩き出すラソンであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【道場破り】※条件、リーヴェ操作不可時&セレーネ操作時のみ。
食材の調達中にとある道場前を通りかかったセレーネは、たまたま道場から出てきた若者とぶつかってしまった。
荷物をぶちまけて派手に尻もちをつくセレーネ。若者のほうはぶつかった衝撃で扉の角に頭をぶつけ、よろけた先にあった玄関脇の壁に勢いよく肘と背中を激突させていた。
セレーネ「いったーい。ちょっと何すんのよ」
道場主「くぅ、それはこっちのセリフだよ……」
エルピス『ガウ……』
エルピスは呆れてモノも得ない。不注意だったのはどっちもどっちだ。
セレーネのほうは大した事はなかったが、若者の怪我は結構痛そうだった。自分も酷い目に合ったが、ちょっぴり悪い気がしてきたセレーネ。
セレーネから謝罪すると、バツが悪くなった道場主もしっかりと謝ってくれた。若者の手当てをするために道場へお邪魔することになったセレーネとエルピス。
急いで拾い集めた荷物を部屋の端に置いて治療にあたる。手際よく怪我を治療するセレーネに若者がお礼を言った。
するとそこへ、荒々しい足音とともに敵意を含んだ叫び声が外から乱入してくる。
道場破り「頼もう。道場におわす強者よ、私と戦え!」
セレーネ「もう何っ、こんな時に」
道場主「よりにもよって今来るなんて」
セレーネ「もしかして、知り合い?」
道場主「そんな訳ないじゃないかっ。ただ最近噂されているってだけで」
僕の知り合いが数日前にヤラれたんだ、と言う若者。
道場に入ってきた屈強そうな男は、最近道場という道場を荒らして回っている見境のない奴だった。別に一方的に戦いを挑んでくるだけだが道場側は迷惑でしかない。
先程怪我を負ってしまい戦える状態ではない道場主。苦虫を噛み潰したような表情で道場破りを睨むが、強者を求める男の視線はなぜかセレーネのほうに向いていた。
道場破り「お主、出来る奴であるな」
セレーネ「な、何よ」
道場破り「私は強者に男女は問わぬ。娘、一騎打ちを所望するぞ」
断りずらい空気の中、両者を交互に見つめるセレーネ。
若者は道場破りに打ち勝って欲しいと頼み込み、道場破りは戦いを強引に迫ってくる。ちなみに断ったら、と聞いたのに対し、地の果てまで追いかけるのみだと答えた。質が悪い。
つきまとわれるのは嫌だと感じたセレーネは、渋々決闘を受けることにする。
若者が立会いの下、セレーネと道場破りの戦いが幕を上げた。道場破りもまた拳闘士である。
セレーネ「こうなったら、先手必勝よ!」
道場破り「ぬぅ、甘いわっ」
セレーネ「きゃあっ」
開始早々に力強く踏み込んで敵の懐に飛び込む。しかし、セレーネの突き出した拳は難なく返されてしまった。後方に弾き飛ばされ膝をつく。けれどすぐに立ち上がって攻撃を続けた。
一騎打ちという言葉通り、妖精の力に頼らない技の攻防が炸裂する戦いだ。スキルは使っていない。
だが、戦闘や鍛錬で培った動きは技を繰り出すには十分だった。特殊な効果を生むスキルがなくたって戦う事はできる。派手さはないけれど、確実に相手にダメージを与えていった。
道場破り「どりゃあぁぁぁ!!」
セレーネ「負けるかー」
道場破り「ぐふっ」
数十分の戦いの末、セレーネの強烈な一撃が綺麗にヒットする。
道場破りは力なく膝を折り、素直に負けを認めるのだった。
セレーネ「はぁ、はぁ、やった……」
セレーネ(何とか、勝てた)
手ごわい相手だったと痛感したセレーネ。道場破りは、自分鍛え直すと言い残して慌ただしく去って行く。まるで嵐のような展開だ。
勝利はしたものの、すっかり疲れて座り込むセレーネに若者が近寄る。
道場主「ありがとう。本当にいい試合だったよ」
セレーネ「どーも」
道場主「君の戦いぶりに感服したよ。良かったら技の伝授を受けてくれないかな?」
セレーネ「何か教えてくれるの」
道場主「もちろん、是非君に使って欲しい」
セレーネは道場主から技の伝授をして貰う事になった。もちろん、彼の怪我に触らないよう気を使いながら練習を行う。
セレーネはスキル「投墜」を習得。このスキルは、敵1体に1本背負いを叩き込んで確率気絶を付与する無属性技だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【砂漠の踊り子】※条件、リーヴェ操作不可時&クローデリア操作時のみ。
1人でオアシス近辺を散策していたクローデリアは、野外ステージのある小さな広場に行き当たった。さほど広くない広場内にちらほらとダンサーや音楽家の姿が見える。
ここは音楽を嗜む人々の隠れ家的な場所だった。
広場の端々から軽快な音楽が流れ、踊りを披露する人々。
クローデリア「楽しい場所ですねぇ。ここで少し休憩しましょう~」
スキップに近い足取りで広場の片隅に腰を落ち着けるクロ―デリア。
聞こえてくる音楽や踊りにインスピレーションを刺激され、思わず楽杖器を手に取り音楽を奏でる。彼女の故郷を連想した精霊言語の歌。
水と豊かな緑、打ち寄せる波に浮かぶ家々や水精人種の仲間達。コポコポと湧き出でる泉や、魚と戯れる川の旋律が脳裏に浮かぶ。思い出せば、思い出す程に懐かしくなる。
即興で紡ぎだされたクローデリアの曲に周囲の人々が集まってきた。
踊り子A「神秘的な歌とメロディーね。聞き慣れない言葉の歌が素敵だわ」
音楽家「ああ、意味は分からないが……こう懐かしい思いが伝わってくるよ」
ダンサー(男)「素敵、素敵よ。あたし、もう我慢できないわっ」
お洒落な格好をしたダンサー(男)が曲に合わせて踊りだす。
他の人々も、それぞれにクローデリアの奏でる旋律に耳を傾けていた。
吟遊詩人「ん~、独創性に溢れた音色に導かれて新たな扉が開きそうだ。おお、光明が見える……見えるぞ!」
強烈に印象的な所作で、吟遊詩人が取り出した手帳に文字を書きなぐっている。
しばらくして彼女の演奏が終わると、聞き入っていた人々から拍手喝采が沸き上がった。笑顔で応じるクローデリアは上品にお辞儀する。
中にはまだ踊っている人が数人おり、クローデリアは彼らの姿を見て感じるモノがあった。
クローデリア「わたくしに、その素敵な踊りを教えて頂けませんか~?」
踊り子「ええ、いいわ。貴女の音楽もいくつか聞かせてくれない」
クローデリア「もちろんですわぁ。一緒に楽しみましょう~」
クローデリアは知り合った踊り子達と楽しく時間を過ごす。こちらの音楽は、とても興味深かった。
クローデリアはスキル「ステップモーション」を習得。このスキルは、バフの効果時間を延ばす効果があるパッシブ(常時発揮)スキルだ。効果発揮中はすべての演奏時に踊りの動きが追加される。
種族特性ではないパッシブスキルは、オンオフを個別に設定でき、オン状態にしておけば常時効果を発揮することができるぞ。種族特性は常にオンの状態から切り替えられない。
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