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第49話 いざ、オーグラシア公国へ!

リーヴェ「なら、残る可能性は……」


 何かあるだろうか。いち早く答えを出したのはクローデリアであった。


クローデリア「暗黒人(イヴ‐オグル)しかおりませんわね~」

セレーネ「ええー、まだ異世界人がいるの!?」

ラソン「いい加減に慣れて来たな。で、ソイツらはどんな奴らなんだ?」

クローデリア「えっと、わたくしが知る限りでは角や尻尾を持つ人達ですわ~。中には獣っぽい方もいらっしゃると聞きますぅ」


 角や尻尾って、もはやそれは……。


セレーネ「あはは、天使に精霊の次は鬼や悪魔……ね」

ラソン「おいおい、オレらが知ってるおとぎ話の連中が全員実在してるって……マジかよ」


 頭が痛くなりそうだ。もうツッコム気力すら起きない。

 クローデリアに、暗黒人についてもっと詳しく聞いてみたが彼女はそれ以上は知らなかった。どの異世界であろうと、異世界人が他の世界を頻繁に訪れることは稀。特に暗黒界は高い塀や扉、神樹などの関係で行き来が容易ではなかった。


 水精人種(アクーエリア)なら水中から行けるのではと思うかもしれないが、塀は特殊な力を持っていて水中でも生物が通過できないようになっている。

 精霊界から暗黒界へ通じる大扉が東西にあるが、精霊界側からは開くことが難しい。特別なアイテムが必要だとかとも言われている。本当かどうかはわからない。だが、扉の前まで行っても開けられないのは確かだ。特に行く理由もなかったけれど。


 この場に暗黒人について正確に知っている人物はいない。これ以上話していても始まらないとリーヴェが切り出して次の行動に移る。

 話が切り替わったのを見計らい、クルイークが口を挟んできた。


クルイーク「嬢ちゃんらは、これから何処へ行くんだい?」

リーヴェ「オーグラシア公国を目指してるんだ」

セレーネ「問題はキャラバンよね。歩いて行っても良いけど」


 一行の間に微妙な空気が流れた。少しくらい楽したいという感情が渦巻いている。

 仲間達の中にはリーヴェの身体を心配する心情も含まれていた。先を急ぎたいが、無理もさせられない。キャラバンを利用できれば多少は休めるのではないか。


クルイーク「んなら丁度いい。俺達がキャラバンの護衛を務める事になって、明日から運行を開始するってよ」


 まだ20年前ほどは無理らしいが、少しずつ運行を再開するらしい。

 リーヴェ達は徒歩で行くか、キャラバンを利用するかを選択することになる。


セレーネ「本当っ。ねぇねぇ、乗せて貰おうよ」

リーヴェ「クルイーク、頼めるか」

クルイーク「おうよ、任せときな。キャラバンの連中には話を通しとくから」

リーヴェ「ありがとう」


 彼からキャラバンが出る時間帯を後で教えて貰う約束をして、リーヴェ達は宿へ戻ることにした。明日の出立に備え準備をする。陽が沈んだ頃、クルイークが宿へ訪ねてきて出立時刻と場所を聞いた。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 翌朝、リーヴェ達はキャラバン隊の人々とともに町を出立した。クルイークを始め、牙内でも腕利きの戦士達が護衛を請け負っている。

 砂漠での移動に慣れた人々のおかげで、道中は比較的に安全で魔物との遭遇も少なかった。途中「レ・ク村」で補給し、順調に進めたのは「ガルビィダ湿原」に入るまでだった。レ・ク村で、引き手をラクダから馬へ変更する。砂漠を出るまでは、馬に砂地用の装備をつければ事足りるからだ。


男性「ダメだ。完全にハマってやがる」

青年「馬の用も準備オーケーです」

商人「よーし、やるべ」

クルイーク「オメーら、気合入れろ」


 せーの、と掛け声とともに馬車を押す。

 湿原に入って何度目かの事態で、車輪がすっかりぬかるみに沈んでいた。ガルビィダ湿原は基本的に舗装されていない。リーヴェ達も、見張り組と馬車押し組に分かれて協力していた。

 水分を多量に含んだ地面は良くぬめる。おまけに注意して足場を選ばないと、浅沼に浸かることになるのだ。水辺と地面の境が見分け辛い。


 前を引く馬も鼻息を荒くして踏ん張っている。車輪がゆっくりと動いていき、やっとの思いで馬車を救出した。

 湿気の所為で嫌な汗を掻いて気持ちが悪い。肌にビッタリと張り付くような、粘つくような嫌な感覚だ。無性に水浴びがしたくなる。


セレーネ「お疲れ~。はい、お水」

リーヴェ「はぁ、はぁ、堪えるな。ありがとう」

ラソン「なにもお前まで推す側に加わらなくても、いいじゃんか」


 女性に力仕事をさせた事に居心地の悪さを感じるラソン。

 だが、セレーネから水を受け取ったリーヴェは「どちらでも同じ事だ」と気にしなかった。万が一に魔物が襲ってきたら、見張り組が戦う手筈になっている。大変なのは変わらないだろう。


 近くで青白い毛並みをしたキツネの妖精が身体の泥を落としている。クルイークの相棒「テマリ(メス)」だ。妖精の中でも美人の部類であるテマリは、泥がつくのも厭わずに馬車押しを手伝ってくれた。

 クルイークが褒めて頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細めて愛らしい声を発する。

 リーヴェ達は初めて見るテマリに思わず目が行ってしまう。


クルイーク「そういや紹介がまだだったな。コイツは相棒のテマリだ」

テマリ『クーン♪』


 上品に挨拶するテマリにリーヴェ達も丁寧に返す。

 アラビアンサハルの騒動では誰も妖精を出していなかった。クルイークの見た目とは正反対の相棒だと思ってしまうリーヴェ達。性格も大分違うっぽい。


ラソン「いいよなぁ~。オレのクライスは泥がつくのスッゲー嫌がるから、全然出てきてくれねーし」

セレーネ「あたしのエルピスも、湿気を嫌って機嫌悪いんだよね」

テマリ『クン?』

セレーネ「可愛い~」

クローデリア「可愛いですねぇ」


 2人の会話を聞いていたクライスとエルピスが、石の中から風と火花を出して仕返ししてくる。絶妙にスレスレを狙う制度と力加減が凄い。

 その様子を見ていた周囲から盛大な笑いが起きた。再び馬車を走らせ、一行は「魔法都市 キルファン」を目指す。



          ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【早すぎる突入】※条件、「開かずの間に潜む女性」発生後。キャラバンの運行開始&徒歩で行く場合。

 リーオ遺跡よりも西にある?????、内部にて。洞窟のようになっている場所に、魔物の咆哮と人の絶叫が木霊していた。


セレーネ「ぎゃあぁぁーー! 死ぬ死ぬ、殺される~!!」

リジェネ「うわー、まだ追いかけてきてますよっ」

リーヴェ「とにかく走れ。全力で逃げるんだ!」

クローデリア「ひえぇぇぇ、怖い所ですぅ」


 悲鳴を上げ、リーヴェ達は逃げていた。背後には屈強な魔物の群勢が迫っている。明らかにレベルが違うと直感する程に強そうな魔物だ。

 魔物は、自分よりも弱い獲物を見つけて狩りをする獣と化していた。いや、もとから獣みたいな姿だったが。追ってくる魔物の中には小振りだが竜種の類もおり、大きなモノは最低でも2mはあるだろう。


 言っておくが、こいつ等は全てボスではない。平均してLv50~70前後の群れが辺りを徘徊していた。リーヴェ達が今いるのはほんの入り口付近だが既にこの様である。


ラソン「見ろ、出口だ」


 急げと急かして何とか出口へ向かう。

 何故このような事態になったのか、それは数時間前にまで遡る。



 キャラバンが運行を再開したものの、徒歩で行くことを選択したリーヴ達。キャラバン隊より遅れてレ・ク村を目指している途中の事だ。


リーヴェ「あれは……」

クローデリア「リーヴェさん?」

ラソン「おい、ちょっと待てよ」


 砂漠を歩いていると、視界の端に見覚えのある人物の姿を捕らえる。リーヴェは仲間達の制止も聞かずに後を追いかけた。

 離れていたが間違いない。以前倉庫で出会った女性アティスだ。気に留める必要はなかったが、リーヴェにはどうしても無視できなかった。


 ラソン達もリーヴェの後を追って走る。まるで導かれるかの如く実に奇妙な追跡で、見失ったかと思えば視界の端に現れリーヴェ達を砂漠の奥へと誘ってゆく。

 そしてある扉の前まで来て完全にアティスを見失った。


リーヴェ「アティス……どこへ」

クローデリア「完全に見失っちゃいましたねぇ」

リジェネ「姉さん、いつの間に知り合ったんですか」

セレーネ「本当に知り合いなの?」

ラソン「どうにも、狐につままれた感じだな」


 リーヴェ達は周囲を探し、扉が半開きなのに気づく。中はダンジョンのようになっているようだったので、もしかしたら中に入ってしまったのかもしれないと思った。

 危険な予感がしたが、女性が1人で入って行った可能性を考えると放っておく事はできない。先が気になる好奇心も相まって、結局は扉の中に入ることにしたのである。

 中に入る時、「未熟な者、この先に入るべからず」と書かれた立て札を踏んでいた事とも知らずに……。



 全員が無事に出るの確認し、急いで出入り口に備え付けられていた重い扉を閉めた。古びた金属の鈍い音を響かせて扉が閉まり、魔物達の気配が遠ざかるのを感じて安堵する一行。腰が抜けて座り込む。

 しばし、荒い呼吸だけが繰り返される。


リーヴェ「た、助かった」

セレーネ「はぁ、死ぬかと思ったよ」

ラソン「あそこの魔物、以上だろ」


 どう考えても序盤や中盤に入る場所ではない。

 するとリーヴェの手に冷たい感触が触れた。何だろうと掴み、砂の中から引っ張り出す。出てきたのは札のついた太い縄だった。かなり古い物だが、鋭い物で切られた跡がある。


セレーネ「それって……」

リーヴェ「扉を封印していたモノ、か」

クローデリア「強引に斬り裂かれた跡がありますね~」

リジェネ「道理で、でも誰がこんな事を」


 悪戯だったら度が過ぎている。

 封印を治してやりたい気持ちはあるが、封印の方法など知る由もないので諦めるしかない。閉じられた扉が、しっかり閉まっている事を何度も確認してからこの場を後にした。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【タルシス辞典  旅人の守護星】

 天空神樹(セフィロト)信教が根強い地上界では、旅する者を守護すると言われる「ダルトア」と言う星がある。

 強い光を放つ10の星の、ちょうど中央付近に赤く輝く気まぐれな星だ。気まぐれと言うのは、輝きの強さが一定ではないため。

 この星に祈ると、旅の安全と成功が守られると言われている。

 実はこの星、天空界の「宝物神殿 ダーアルト」がある場所に輝いているとか。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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