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外伝1‐1話 寄り道、首都ラ・パルタへ

 南へ進み、「首都 ラ・パルタ」にやって来たリーヴェ達。


セレーネ「首都ラ・パルタに到着だよ」

リーヴェ「ここが砂漠の都か」

リジェネ「思っていたより綺麗な町並みですね」

セレーネ「まぁ、見た目はね……」


 首都ラ・パルタは白石をくり抜いたような家屋が建ち並び、赤や青、黄、紫など色とりどりの垂れ幕うが屋根みたく連なる街だ。フィクションで言うところの「アラビアン」にアレンジを加えた感じに近い。

 ホテルや大きな施設は屋根が丸く、他の小さな建物は屋根がなくて四角い。少ないながらも、背の高い木々やサボテンが各所に植えられていた。目立たない路地や住宅区には木製の家畜小屋などもある。


 都の最も南には国会議事堂があり、その裏手には大きなオアシスが湧き出していた。

 オアシスは観光名称になりそうなくらい美しいアクアブルーの水で、底が見えるほど透き通っている。ひとつ問題があるとすれば、綺麗なオアシスには食用になる魚の類がいない事だろうか。美しすぎるのも問題である。

 とはいえ、砂漠の人々にとっては貴重な水。オアシスには年中大勢の人が詰めかけ、非常に大切にされているのだった。


ラソン「うーん、妖しい噂が流れている割に町の中は普通だな」

ラソン(別に気になることはあるけど)

リーヴェ「心なしか、人々に活気がないように思えるな」

リジェネ「あ、やっぱり姉さんもそう思いますか」

ラソン「こりゃ、意外と来てみるもんだな……」


 ラソンは何となく、この国が今までしてきたことを思い出しているようだ。

 リーヴェ達は、出来るだけ単独行動をさせて都内を散策してみることにした。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 大通りから離れた路地を歩く一行。場所的には大分外れのほうに来ている。

 道端には座り込んでいる人が結構いて、中には粗末な布などを敷いて雑魚寝している人もいた。皆疲れたような顔でふさぎ込んでいる。

 どこからか大泣きする子供の声。なにかを取り合っている騒音。各所でスリや引ったくりも横行しているようだった。なのに兵隊の姿を全然見掛けない。この国では軍兵の一部が警察を担当しているのに変だ。


リーヴェ「ん? なんだ」

セレーネ「どうしたの」

リーヴェ「しっ、静かに」


 割と近くから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。声は少し上の方から聞こえてくるようだ。


ニクス「そうか、やはりアズゥルードか」

シャンヌ「……はい、間違いないようです」

ニクス「了解した。様子をみて行ってみる」

シャンヌ「二……君、それで……その……」


 話している相手は誰だろう。聞き取りづらい。


ニクス「わかっている。サリナの事は、こっちも気に留めておく」

シャンヌ「よろしく、お願いします……」

ニクス「そっちも十分気をつけろよ。……特にライエルには用心しておけ」

シャンヌ「? ……はい、わか……した」


 小さな機械音とともに会話が途切れる。足音が微かに響き、扉が閉まる音。気配も消えた。

 リーヴェ達は顔を見合わせる。今の声は、間違いなくニクスだった。彼もこの都に来ていたのか。


リジェネ「随分と気になる内容の話でしたね……盗み聞きみたいで気が咎めますが」

クローデリア「ニクスさんというのは、どなたなのでしょう?」

セレーネ「前に行動を共にした知り合いなんだって」

ラソン「ああ、けど相手は誰だろう」

リーヴェ「わからないが、深刻そうだったな」


 ニクスはいったい何者なんだろう。気になることが増えたが、この場は移動することにする。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 リーヴェ達は国会議事堂前にやってくる。

 国会議事堂の外観はホワイトハウスに似ていて、こちらも色とりどりの垂れ幕が下がっていて綺麗だ。広い庭が鉄策塀の合間からよく見える。

 日中の間は門も基本的に開いており、入り口付近には見張りの兵士が警備していた。さすがにここには兵士がいるようだ。


 厳かに立つ立派な外観に見とれていると、入り口付近に変な人物を見掛ける。

 正門から少し外れた塀の傍から中を見つめる男性。気になったのは、ちょっと不審な動きをしていることだ。

 不審人物っぽい男性へ慎重に近ずくリーヴェ達。


リーヴェ「そんな所で何してるんだ?」

男性「うわあぁぁ!!」

リーヴェ「っ」


 男性が間近で大声を上げたので、うっかりこちらも驚いてしまった。男性がこちらを振り返る。


 男は真っ白な服にターバンを巻いた30代くらいの人物。ダブダブの服装からはわかりずらいが、結構ひょろっちそうな優男だ。白い肌に丸い眼鏡をかけ、肩から大きなカバンを下げている。ターバンから覗く髪は黄褐色、メガネの下に見えた瞳の色は黒かった。

 普通の人に見えるが、リーヴェには少しだけ違和感を覚える容姿の男だった。男がややずり下がった眼鏡を治す。

 

男性「ああ、なんだ旅の人か」

ラソン「いったい何だと思ったんだよ」

男性「コホンッ、失礼。で、君達は僕に用ですか?」


 話している最中も、ちらちらと国会議事堂を気にする男性。地元の人っぽいのにそんなに気になるのか?

 リーヴェ達はあんまりに変な動きをしていたので、不審人物かと思ったのを素直に話した。男性が苦笑いを浮かべる。


男性「ははっ、そうでしたか。僕はね、別の用事で近くを通ったので、ここに居る友人を訪ねようと思って来たんですよ」

リーヴェ「すみません、勘違いしてしまって」

男性「いえいえ、気になさらずに」

セレーネ「けど、じゃあなんでこんな所をうろついてたのさ。友人には会ってないの」


 男性が思いっきり肩を落とした。いなかったのか、と思ったがそうでもないらしい。


ラソン「なんだよ。とっとと会いに行きゃあいーじゃねぇか……いるんだろ?」

男性「え、ええ……まあ。ただ、いざ会いに行こうって思ったらなかなか踏み込めなくて……」


 男性の顔が少し、いやかなり赤い。ソワソワと落ち着きもない。

 リーヴェとリジェネは首を傾げたが、ラソンとセレーネは察した様子で目を細めた。2人の内心では「友人ではないな」という言葉が浮かんでいる。相手が女性かどうかまではわからないけど。


セレーネ「ねぇねぇ、悪いことは言わないから会うか会わないか早く決めちゃった方がいいよ。ここでうろうろしていると警備の人に捕まるかも」


 セレーネが入り口の兵を控えめに示す。しばし沈黙した後、男性は観念したように項垂れた。


男性「そうですね……首都(ここ)に来てもう6日、もうすぐ7日目になりますし今回は諦めます」

ラソン(そんなにいたのか……)

セレーネ(よく捕まらなかったね)


 男性は名残惜しそうにもう1度議事堂を見て、項垂れた姿勢のままゆっくりと歩き去っていった。リーヴェ達も国会議事堂を後にする。



 国会議事堂から、人気のない所まで歩いて来た男性は不意に足を止めた。周囲に人が居ないことを確認する。


男性「ふぅ、さすがに疲れますね」


 深呼吸をして自身にかけた術を解く。途端に、男性の姿がみるみると変わっていった。

 何もなかった背中からは大きな鳥の翼が生え、白い肌には不思議な模様が浮かび上がる。伊達メガネは外し、黄褐色の髪は桑色、黒かった瞳はピーコックブルーに変化。髪と翼には白い部分が入り混じっていた。体格と肌の色は変わらない。

 男性の正体は言うまでもないがベリーニ郷である。


ベリーニ郷「本当に地上人の姿は不便ですね。空は飛べないし、血の気が多い割に身体能力はさほど高くないし」


 術で人の姿に変装するのは骨が折れる。幻惑系の魔術だが、デリス郷と違ってベリーニ郷のは変身に近い。上から幻を被せるだけのほうが楽だけど、ベリーニ郷は翼を体内にしまえないのでぶつかった時に困るのだ。


 デリス郷は骨格を器用に組み替えて、見事にやってのけるから本当に凄いと思う。種族によって特徴が大きく異なるのが暗黒人の特徴である。

 精霊人にも種族があるが、あちらは彼らほど派手な違いはない。基本的に身体の造りは同じだし。


ベリーニ郷(はぁ、結局今回も彼女に会いに行けなかった)


 こんなんでは、いつ気持ちを伝えられるかわからない。自分でも言わなければ、とは思う。でも、彼女を前にしてしまうとどうしても……どうしてもダメなのだ。


ベリーニ郷「昔はもう少し素直に話せたのにな……」


 ベリーニ郷とデリス郷は幼い頃からの仲だ。幼馴染、というのとは違うが割とよく一緒に遊んだ。幼い頃の彼女はいろいろとあって、それが2人の出会いだったな、と思いをはせるベリーニ郷。

 あの頃が懐かしい。あの頃に戻りたいな、と思うこともあった。


ベリーニ郷「ああ、アレイシア……君の心が知りたいよ」


 ベリーニ郷は、光のない暗い空を見上げながら物思いに耽るのだった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 商店が比較的多いエリアにやってきたリーヴェ達。

 ここも不思議なほど活気がなく、道を行く人々もどこか暗い。露店に売られている品も、他の町や国で見かける物よりも品薄で高値だった。


リーヴェ「ここも大分暗いな」

セレーネ「まあ、上が完全に放置だからね……皆、どうしたらいいか分かんないんだよ」

ラソン「ネメア村はまだマシだったよな」

セレーネ「うん、あそこは隣国の町が近いからギリギリ物が入ってくるのよ。魔物の事があって、ますます砂漠越えが厳しくなったからね」

クローデリア「うう、確かに砂漠はキツイですわよね~」


 クローデリアは熱そうに服をパタパタさせている。陽が射していない今でも気温が高いのは、彼女には堪えるようだ。

 しばらく通りを歩いていると、商店の近くで妙に盛り上がっている数人を目にした。


商人B「はぁ、こう人の行き来が少ないと萎えるねぇ」

商人A「まったくだよ。人が来ない、物がない、ホント嫌になるねー」

客A「霊園に眠る財宝があればなぁ」

商人達「財宝?」

商人C「なんだ、なんだ財宝って」


 財宝という言葉に近くの露店にいた商人が集まってくる。そっと聞き耳を立てている人すらいた。リーヴェ達も気になって、さり気なく人だかりに混ざる。

 彼らの話は気にせず続いた。


客A「あくまで噂だけどよ。ヌアビス霊園ってあるじゃん? あそこの地下に、すんげぇ宝が眠ってるんだと」

商人B「それでそれで、どんな宝なんだ?」

商人A「早く教えてくれよ」

客A「焦んなって。と、言ってもオイラも知らねーんだ。ただ、手にしたら莫大な富を得られるって話だ」

商人達「莫大な富!?」


 商人達の目が輝く。声も自然と大きくなった。

 だが、すぐに気持ちが沈む。


商人C「けどよ、ヌアビス霊園はアンデットの巣窟じゃないか」

商人A「オラ達にゃあ無理だよな~」

セレーネ「ぬふふ……財宝♪」

リーヴェ「お、おい、セレーネ?」


 一同が一斉に嫌な予感を覚えた。特にリジェネが瞬く間に青ざめていく。


リジェネ「ま、まさか行かないですよね……アンデットの巣窟とか、ホント無理……」

セレーネ「別にすぐに行くとは言ってないでしょ」


 それって、いずれは行くって意味では、とリーヴェとラソンは思った。クローデリアはというと、「面白そうなところですねぇ」とズレたことを言っている。

 いやいや、霊園って違いはあるが一応墓地だから。面白いからと行くところではない。

 なんとも言葉をかけづらいリーヴェであった。

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