表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/619

第33話 砂漠の怪物

 リジェネ達は、所々にすり鉢穴のあるエリアに足を踏み入れていた。

 あの後に2・3回の戦闘を挟み、セレーネはLv25になっている。その際にスキル「炎襲回脚(えんしゅうかいきゃく)」を習得。このスキルは、炎を帯びたバックスピンキックを敵1体に食らわせヒット時に防御力を下げる効果がある。


リジェネ「結構歩きましたけど、姉さんもあの時の大きな生物もいませんね」

セレーネ「うーん、でもなーんか嫌な予感がするのよねぇ」

ラソン「え、それってどういう……」

魔物「フシャアー」


 突如響いた魔物の声に全員の視線が吸い寄せられた。

 先ほどまで何もいなかった穴の中心から、ミミズに似た2mほどの魔物がこちらを睨んでいる。セレーネの顔色が一気に青ざめた。


セレーネ「ギャァー出たぁ。ヘビニョロ嫌い~」

ラソン「あれって、まさか」

魔物「シャッ」


 ミミズに似た魔物が口から砂の塊を発射する。塊はまっすぐこちらに迫ってきた。


ラソン「逃げろー」

クローデリア「きゃあっ」


 ラソンの言葉で一斉に走り出す一行。魔物は巣から動かないが、砂の塊を正確に飛ばしてくる。塊は後方のクローデリアを掠めるように着弾していった。


リジェネ「こんなに離れてるのに、なんで攻撃してくるんですかっ」

ラソン「確か図鑑じゃ、巣にさえ近づかなければ襲ってこないんじゃなかったか。どうなってんだよ、セレーネ!」

セレーネ「いやー、ウネウネしないで気持ち悪い~」

クローデリア「あ~ん、どうしてでしょう……わたくしを睨んでいるような気が……」


 必死に巣から離れるよう移動を続けるリジェネ達。上空のカナフシルトが塊のいくつかを風圧で弾いてくれるが、魔物の攻撃速度のほうが早い。すべてを弾くのは無理だ。

 ミミズ魔物に詳しそうなセレーネは、なにを質問しても悲鳴を上げるばかりで話にならない。

 しかも他の魔物も周囲を徘徊している。さすがにこの状況で相手をするのは厳しいので、上手く捕まらないように進む。



 息を切らせながら、どうにか巣のあるエリアから逃れたリジェネ達。視界から外れたことで巣に戻って見えなくなるミミズ魔物。

 歩きずらい砂の上を全力疾走し続けたせいで、全員が疲れてぐったり座り込んでしまった。上手く逃げ切ることができたことに安堵する。


ラソン「さすがに、ここまで来れば大丈夫だろ」

リジェネ「はい……」

セレーネ「うう、ウネウネベビニョロ怖い」


 言葉のニュアンスは違うが、ここにも魔物をあだ名で呼ぶ人がいた。


クローデリア「先程のちっちゃいニョロニョロちゃんは魔物なのですかぁ?」

ラソン「ああ、アイツは多分砂漠の怪物だ」

リジェネ「砂漠の怪物、ですか」

ラソン「オレも噂でしか聞いたことがないからな……おーい、セレーネ」

セレーネ「…………」


 セレーネはまだブツブツ言っている。

 話が進まないので、強めに声をかけて注意を引いた。ようやくセレーネがミミズ魔物について教えてくれた。

 ミミズ魔物の名前は「サンドロンブリス」で、別名「サンドワーム」という。基本は夜行性の魔物でサソリなどの虫を主食とし、巣に近づかない限りは滅多に地表へ現れず襲いもしない魔物だ。

 砂漠のどこかには、サンドロンブリスの巣穴が密集している場所があると言われている。


リジェネ「僕達、巣には近づいてないですよね」

クローデリア「では、何故襲ってきたのでしょう」

セレーネ「うーん、アレ? 確か、純粋なマナの塊に反応するとか聞いた事あるような……」

ラソン「おいおい、そーいう事は先に言っといてくれよ」

セレーネ「ごめん、忘れてた」


 ということは、奴はクローデリアに反応して出現したということだ。本当にもっと早く思い出して欲しかった。

 これは、ますます急いでリーヴェを探さなければ不味いかもしれない。


 リジェネ達は魔物との遭遇をできるだけ避けながら先を急いだ。今はレベルを上げることよりも、合流を優先することにする。砂漠のど真ん中で道具を切らす訳にもいかない。

 先を見据え、気が遠くなりそうになる。すると――。


魔物「フィギャアァァ!!」

リジェネ「っ! 奥へ行ってみましょう」

ラソン「ああ」

セレーネ「うん」

クローデリア「ええ」


 一行は凄まじい声がした方向に向かって走り出した。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【タルシス辞典  プロフィール編】

 名前 クローデリア

 性別 ? 身長 180.3cm 体重 69.8kg 外見年齢 25歳(実年齢500歳) 右利き

 職業 吟遊魔導師(バルドソーサリー)  種族 精霊人(ニームファン) - 水精人種(アクーエリア)  仲間加入時レベル Lv25


 ファラ砂漠で生き埋めになっている所を助けた精霊人特有の魔法使い。

 光と闇以外の全属性魔法を覚え、ハブや状態異常など多様な魔法を使いこなす。MPと知識力に特化しており、範囲や持続性の高いスキルを多く使えるが非常に打たれ弱くて移動が遅い。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 リーヴェは巣穴が密集していた場所を無事に突破し、砂丘が段差を作っているエリアに来ていた。所々にサボテンが自生している。ここまで来るのに結構な時間が経過した、と思う。


リーヴェ「っ、魔物だ」


 リーヴェは咄嗟に小さな岩陰に隠れた。基本的に砂だらけなのは変わらないが、ギリギリ隠れられそうな岩場もちらほらとある。自生しているサボテンも比較的に大きく隠れるのに丁度いい。

 上手く物陰を利用して隠れながら移動しよう。すぐ近くを魔物が数匹歩いている。


リーヴェ(今だ!)


 魔物の視界に入らないように、素早く物陰から物陰へ移動した。幸いすり鉢穴はないのでリーヴェの俊敏さをフルに活用して進める。下が砂なので足音も響かない。


 タイミングを見ながら妖しいと感じる方向を目指す。しかし、後少しという所で困ったことが発生した。進行方向を塞ぐように魔物が徘徊しているのだ。避けようにも隠れる場所がない。

 これは戦うしかないか。魔物の数は……アイルカクタス2体、背後から不意を衝けば行けそうだ。サボテンの影に隠れてタイミングを計る。


リーヴェ(ここだっ)


 リーヴェは、荷物の中から数個の「炎照球」と取り出して敵に投げつけた。一撃は無理でも2・3個当てれば十分なダメージになる。カクタス1体を撃破。残ったもう1体がリーヴェに気づいて襲い掛かる。

 魔物アイルカクタスが現れた。


リーヴェ「後はコイツだけだな。行くぞ」


 リーヴェは戦闘開始と同時に「炎照球」を1つ使用する。

 1人では魔法の詠唱時間を稼ぐのが難しい。残量も限られているのであまり多用は出来ないが、ある程度敵のHPを削っておかなくては厳しいだろう。

 効果抜群なだけあって、カクタスのHPを3分の1くらい削ることができた。


リーヴェ「ホーリー・ガンスワード、クレセント・ソニック」


 すり抜けで敵の背後をとり、中距離からクレセント・ソニックを飛ばす。続けてもう一撃、クレセント・ソニックを放つ。


カクタス「ボボーン」

リーヴェ「くっ、まだまだ」


 カクタスの飛ばした棘を剣で弾き、右ストレートを回転して躱す。敵の真横をとった。攻撃後でカクタスの動きが鈍っている。今がチャンスだ。


リーヴェ「これで決める! 虹華星空斬(こうかせいくうざん)!」


 素早い動きで翻弄し、全方位から敵を斬りつけ最後に切り上げる。1回切り付けるごとに刃にはマナの輝きが集まっていった。最後の一撃は特に強く、アイルカクタスのHPを削り切る。


 アイルカクタスを撃破した。リーヴェはLv24になった。

 戦闘後、念のためHPとMPを回復してから奥へ進んでいく。



 リーヴェは開けた場所にやって来た。今いるのは丁度砂漠の中央付近だ。目の前にひときわ大きなすり鉢穴がある。

 周囲を観察するが、仲間の姿は見当たらない。


リーヴェ「皆はどこにいるんだろう……」


 このまま会えないなんてことはない、と信じたいが。

 不吉なイメージを振り払うように頭を振り、先を急ごうとしたまさにその時。


魔物「フィギャアァァ!!」

リーヴェ「コイツは、もしやあの時の」


 リーヴェの目の前にある大穴から、約5mもあるミミズ型の魔物が姿を現す。武器を構えて対峙するリーヴェ。そこへ、別方向から近づいてくる複数の影。


リジェネ「姉さん!」

リーヴェ「リジェネ、皆っ」


 こちらを睨む大型魔物に気を向けつつ、一行は合流を果たした。パーティが再編成される。

 大ミミズ魔物が再び咆哮した。


 魔物「マザー・サンドロンブリス」が出現した。


リジェネ「姉さん、無事でよかったです」

リーヴェ「感動は後だ。奴を叩くぞ」

リジェネ「はいっ」


 一行が前衛と後衛に分かれ、ラソンがハウリング・ヴォイスとシルトエコーを使用する。

 マザー・サンドロンブリスの攻撃、「渦巻き砂嵐」が口部から発射された。ホースから水が噴射するかの如く、前衛のラソン、セレーネ、リジェネに直撃。かなりのダメージだ。

 すかさずリーヴェがヒールをかける。追い付かない分はアイテムで補った。


クローデリア「皆さん頑張って~、エペ・ルトーアリア」


 クローデリアが勇ましい調子の独奏曲を奏でる。足元に輝く魔法陣の図柄は、円の中に納まった4本の剣が中央に刃を向けている形だ。

 味方全体の攻撃力が一定時間アップ。


セレーネ「はあぁ、炎襲回脚」

ラソン「翼閃連斬」

リジェネ「龍炎陣」

マザー・S「キャアァァ」


 集中攻撃にうろたえず、マザー・Sが大きな体躯を勢いよく叩きつけた。

 ラソンは刃を滑らせて受け流し、リジェネは上空に回避、セレーネも躱して乗り上げ攻撃を加える。魔物が怒って身体を起こした拍子にセレーネが宙へ飛ばされた。

 リジェネとカナフが彼女を受け止め地上へ。クローデリアが詠唱に入っている。バフ効果はまだ消えていないので攻撃を続ける一行。


クローデリア「‐凍てつく氷針。敵を刺し貫け‐ オルムアクス」


 クローデリアの周囲に生成された、無数の氷針が敵に向かって飛んでいく。彼女がLv7時に習得する魔法だ。

 マザー・Sが激しい悲鳴を上げた。効果は抜群だ。


リーヴェ「奴には水が効くのか!」

ラソン「クローデリア、そのまま水の魔法で攻撃してくれ」

クローデリア「はぁい、行きますよ~。‐蒼き翼の使者よ……」


 クローデリアの参戦により、リーヴェは治癒のほうに専念する。撃たれ弱い彼女に、攻撃が向かないよう前衛全員で上手く立ち回った。

 詠唱中のクローデリアを狙うマザー・Sを妨害しつつ注意を引き付ける。


クローデリア「……悪しき者に水の制裁を‐ アクア・スワロー」


 クローデリアが水のツバメを呼び出す。このスキルはLv12時に覚える、敵をランダムに3回攻撃するものだ。しかし、今回の敵は1体だけ。ツバメは迷わず、マザー・Sに連続攻撃を食らわせて消滅。

 こちらも水属性のため大ダメージだ。

 マザー・Sが再び、「渦巻き砂嵐」を噴射する。今度は的確に後退して直撃を避けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ