表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/619

第30話 目撃情報を追う影

 セレーネとエルピスの案内で彼女の実家まで来たリーヴェ達。セレーネが中にいるだろう住人を呼ぶ。


おばさん「なんだい、もう帰ってきたのかい。旅止めることにしたの?」

セレーネ「そんな訳ないじゃん。途中で知り合った人と、オーグラシアに行くことにしたから立ち寄ったの」


 そう言ってセレーネが紹介を促した。互いに自己紹介をする。丁寧に挨拶をするリーヴェ達に、おばさんは気をよくして笑う。


おばさん「これはまた、よく来てくれたね。さぁさ、どうぞ上がんなさいな」

3人「お邪魔します」

おばさん「はいはい、すぐに食事の支度をするからね」


 急の来客なのにすんなりと受け入れてくれたおばさん。人当たりもよくていい人だ。おばさんの行為で、今日は泊めて貰えることになった。

 セレーネとエルピスも安心したように、各々お気に入りの場所で存分に寛いでいる。


 おばさんの料理はとっても美味しかった。味付けもセレーネに似ていて、彼女の料理はおばさん譲りだとわかる。色とりどりの果物が盛られた皿や、炒め飯、香辛料の効いた温かいスープと全体的に彩りが美しい。

 決して豪華ではないささやかなものだが、そう感じさせない料理の腕を感じられた。若干奮発もしてくれているのだろう。


 この国では基本的に匙は使わず、床に布を敷いて食卓をセッティングする。しかし異国からの客人用に、おばさんは匙も用意してくれた。食べやすいようにさり気なく配慮してくれるのが嬉しい。

 食卓に使う床も一段高く設計されていた。砂やゴミが食事に入らないようにだろう。


ラソン「そういえばさ、砂漠の夜って意外と暖かいんだな」

リーヴェ「確かに妙だな。天空界の砂漠は夜寒かったぞ」

セレーネ「ああ違う違う。今砂漠が熱いのは天変地異みたいなもんなの……でしょ、おばさん」

おばさん「ええ、昔の砂漠は夜だと結構冷え込むんだよ。今の気温は20年前からさね」

リーヴェ「なるほど、ここにも些細な変化が出ていたのか……」


 場が静まり返った。けれどおばさんが明るく切り出す。


おばさん「でも、悪い事ばかりじゃないよ。あんまり冷え込まないから冬は凍える心配もないし」


 暖かい気候で育つ植物の実りも悪くない。ここら辺の植物は気温が低くなると収穫が遅れたり、実らなかったりするのでこの点は助かっている。アンデット達が、昼間でも砂漠をうろつくようになったのは問題だが。


リジェネ「うう、あのアンデット達が砂漠をうろついてるんですか!? しかも昼間でも……」


 リジェネが震え上がる。ここまでの道中はアンデットと出くわさなかったので、てっきり霊園付近を根城にしているのかと思っていた。いや、太陽が消えるまではそうだったのだろう。


おばさん「大丈夫よ僕。村の周りにはアンデットを遠ざける炎照石(えんしょうせき)の柵で守られてるから」


 炎照石とは、近くの渓谷近辺で採掘できる篝火に似た光を放つ鉱石だ。

 石は風や衝撃が当たることで発光し、アンデット達は石の光を本能的に恐れる。僅かに熱を放つも触れられない程ではなく、炎とは違い放置していても火事になる心配もない。

 砂漠に生きる人々にとっては大事な生命線である。


 ただし、オアシスの周りは一部以外にこの炎照石はない。周囲の動物の貴重な水源でもあるためだ。

 20年前まではアンデットの出没しない昼間に水を得るのが原則だった。だが最近は魔物の活動時間が狂っているので、水を汲みに行って魔物に襲われる被害も多数出ている。

 本来ならば、国全体で対処しなけらばならない大事なのだが……。


おばさん「最近主都のほうはキナ臭い噂でもちきりでねぇ。おまけに都のお偉いさん達は、近頃様子がおかしいっていうじゃないか。ホント物騒なもんだよ」

リーヴェ「その話は本当なんですか?」

おばさん「いやね、あくまで噂だよ。ホントかどうかはあたしにゃあわかないさね」


 不安そうに聞き返したリーヴェ達の気持ちを和らげようと、おばさんは明るく返答した。

 この国の事情な気になる所だったが、とりあえず食事を進めて休息をとることにするリーヴェ達。迂闊な行動は禁物だが、気になるようなら主都に立ち寄ってみるのも良いと思うリーヴェだった。



 翌朝、目覚めた一行は本格的な砂漠越えに備えて準備をするべく、村を散策することになった。

 ある程度はおばさんも用意してくれると言ってくれたが、それでも不足する物を揃えておく必要がある。

 外への買い出しはリーヴェとセレーネに任せ、ラソンとリジェネはおばさんの手伝いをすることにした。一宿一飯の恩という程ではないが、今まで男手がなくて苦労してきたことを手伝うだ。


おばさん「悪いねぇ、薪割りや小屋の修理なんかを手伝って貰っちゃって」

リジェネ「これくらいお安い御用です」

ラソン「おばさん、工具箱はどこですか」

おばさん「ああ、それなら……」


 資材を運んできたラソンがおばさんを呼ぶ。破損し、応急処置で済ませていた家畜小屋を治すのだ。リジェネは調理や暖房などに使う薪を割っている。

 手際よく作業していく2人に、おばさんはずっと気になっていたことを尋ねた。


おばさん「あの……セレーネは面倒をかけちゃいないかい?」

2人「えっ」


 2人が驚いて作業の手を止める。


おばさん「ああいや、あの子昔っからそそっかしくてね。皆さんに迷惑をかけちゃいないか心配で……」


 おばさんの様子から、心配しているのはそれだけじゃないのだろうと察しがつく。


ラソン「セレーネは強いし、料理も上手いから本当に助けられてます」

リジェネ「はい。たまに道に迷ったりするけど、すっごく頼りになるお姉さんです!」


 リジェネとラソンは笑顔で即答するのだった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 リーヴェ達がネメア村を散策していた頃、首都ラ・パルタの各地で変わった身なりの青年が目撃されていた。

 ――カラン、コロンッ。


青年「すみません。少々お聞きしてもよろしいでしょうか」

マスター「構わないよ。何を聞きたいんだい、お兄さん」


 扉のベルを鳴らしながら酒場に入ってきた20代半ばくらいの青年。青年はカウンターの前に立ちマスターに声をかける。酒場のマスターは青年の特徴的な容姿に目を引かれた。


 青年の後ろで束ねた長い髪は白銀色で、瞳の色は鮮やかな飴色。すらりと背が高く、透き通るように白い肌をしたなかなかの美形だった。明らかに異国のものと思われる変わった紫系統の衣服を外套の下に着ている。左の横髪だけをひと房分束ね、羽を模した金の飾りで止めていた。

 腰のベルトポーチには魔導書と思しき書物を入れて装備している。肌は白いが、オーグラシア人という雰囲気はしなかった。


青年「近頃白龍を見たという噂を耳にしたんだが、この辺りで見かけなかったかな」

マスター「龍、ですか?」

青年「ええ、大体5mくらいの龍です。噂では10代半ばくらいの子供が連れているとか」


 マスターは思案し、近くの客にも聞き込んでくれる。


マスター「すまんね。そんな変わった人はこの辺では見てないなぁ」

客A「ああでも、隣のムートリーフには最近そんなのが出たって聞いたことがあるよ」

客B「そうそう、何でも教会の連中が噂してたなぁ。変わった力を使う子供達がいるって」

青年「…………ほう」


 青年は口元に手を当てた。やはり噂は本当かもしれない。


青年(これは一度、ムートリーフ王国に行ってみる必要があるね)

青年「ありがとう。こちらは情報料です」

マスター「どうも」


 青年は金銭を数枚渡して店を出た。通りを歩きながら先程聞いた話を思い返す。


青年(不思議な力を持った子供達の噂を教会の者がしていた……急がなければならないかもしれませんね)


 青年は嫌な予感を感じながら、都の外へ向かって歩いて行った。数十分後、都の外れから大きな白い鳥らしき影が飛翔していくが、その様を目撃した者は1人もいなかった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 砂漠越え準備のために商店に来たリーヴェとセレーネ。


セレーネ「とりあえず食料とは別に果物を少し補充しておいて、アンデット用に炎照球(えんしょうきゅう)をいくつか持っておいた方がいいね」

リーヴェ「水はいいのか?」

セレーネ「水はこの国じゃ少し高値なの。それにわざわざ買わなくても、砂漠にはサボテンがあるしお誂えむきの魔物がいるんだよねぇ」


 セレーネの話では、倒すと水をドロップするサボテン姿の魔物が砂漠にはいるらしい。出現率も比較的多くて、きちんと撃破していけば水にはそれほど困らないという。便利な魔物がいるものだ。

 だが魔物である以上、一応聞いておかなければならないことがある。


リーヴェ「サボテンの魔物とやらは強いのか? 弱点はあるんだろうか」

セレーネ「特に強くはないよ。植物だから炎には弱いし、あ、でも水を与えると膨張して巨大化するんだよね」

リーヴェ「…………」


 それって結構不味いんじゃ。でも幸いなことに、リーヴェ達のパーティには水攻撃をするメンバーはいない。特別気を付ける必要はないかもしれないが、炎照球は少し多めに持っていた方がよさそうだ。後でリジェネ達にも伝えておこう。

 セレーネから聞いたが、炎照球は名前の通り火炎を爆裂させる球体だ。炎照石を加工して作った物で魔物に投げつけて使う。


リーヴェ「セレーネ、食料のほうを頼めるか」

セレーネ「オッケー。炎照球の扱いには気を付けてね」

リーヴェ「ああ」


 売り場が異なることも聞き、手分けして調達に行くことにして一時解散した。



 次の日、十分な準備を整えた一行はおばさんにお礼と挨拶を告げて出立する。おばさんは「セレーネをくれぐれもよろしく頼む」と頭を下げ、セレーネが恥ずかしそうに慌てていた。

 微笑ましい光景にほっこりしながらネメア村を後にする。


 ファラ砂漠、入り口。黄色いマナの光が漂う広大な砂の海。所々にはサボテンを見掛けることができ、ゆるゆると生暖かい風が吹いていた。いよいよ本格的な砂漠越えが始まろうとしている。

 リーヴェ達は緊張感を保ちつつ慎重に歩みを進めてく。


???「………………」

リーヴェ「ん?」


 ファラ砂漠に突入して早々、気になる気配を感じた一行は足を止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ