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第27話 幻影の翼

 翌日、リーヴェ達はア・ルマ遺跡の3Fを探索していた。外観の感じから、ここがおそらく最上階だと思われる。しかし、現れるのは普通の魔物ばかりだ。

 おかげでセレーネもレベルが上がり、Lv21になっていた。

 ――ガラガラ、ガシャンッ。


セレーネ「ひゃあ、何よコレ。危うく串刺しになる所だった」


 このフロアの扉は鉄柵に似た形状をしている。ただ切り替わるだけの仕掛けも、扉の形状が変わっただけで凶器だった。スレッスレの所で扉の先端を回避したセレーネが、閉じた扉に悪態をついていた。無駄だとわかっていても言わずにはいられなかったらしい。

 3Fでも扉ひとつに翻弄されて探索するリーヴェ達。随分と回り道をして奥地を目指す。だが、魔物と遭遇する度に気になることができた。

 ――(超音波みたいな高い音)!! また聞こえた。聞き取りずらいが奇妙な音だ。


ファントム「♪♪(バアァ)」

リーヴェ「魔物だ。戦闘準備」

3人「了解」


 魔物、クロスファントム×5が出現した。

 まず最初にラソンが前へ飛び出す。縦一列に並ぶファントム2体を狙って剣を振り被る。


ラソン「烈風断滅砕(れっぷうだんめっさい)っ」


 ラソンが振り下ろした剣から直線1方向に烈風の刃が地を走った。詠唱中だったファントムの妨害に成功する。リーヴェの背後に突如ファントム1体が出現した。音もなく移動しているのでリーヴェは気づかない。


セレーネ「危ない、避けて」

リーヴェ「っ……」

セレーネ「炎撃拳」

リジェネ「颯針槍っ」

ファントム「……!!」


 セレーネとリジェネの攻撃が上手く重なった。クリティカルが出て大ダメージを与える。ファントム1体を倒した。


リジェネ「姉さんは、ラソンさんを」

リーヴェ「わかった」


 2人が次の敵に向かうのと同時に、リーヴェはラソンの援護に入る。アンデットにリーヴェのスキルは有効だ。クライスがラソンと対峙していた2体の動きを封じている内に、リーヴェは拳銃を構え「フォトン・ブレッド」を使用。

 このスキルは、着弾と同時に膨張する光の球体で範囲内の敵を攻撃する技だ。小範囲なので、足止めしておかないと当てずらい。


 今回の敵も難なく撃破した一行。

 セレーネの炎攻撃は、アンデット相手に本当に頼りになる。リーヴェ1人では対処しずらいが、彼女が仲間になってくれて良かったと実感した。リーヴェはまだ、効果的な範囲攻撃をもっていないから数で押されると困るのだ。

 仲間の治癒もしなくてはならないので、他に弱点をつけるメンバーの存在は大きかった。


リーヴェ「皆、怪我はないか?」

ラソン「平気だぜ」

セレーネ「怪我してないよ~」

リジェネ「問題ありません」


 治療が必要ないことを確認して探索を再開する。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 その頃、ハ・グネの町では。


兵士A「隊長、配置完了しました」

指揮官「バリケードと火壁の用意は」

兵士A「問題ありません。隙間なく配置しました」

指揮官「よーし。見張り台、敵影はどうだっ」


 指揮官が、簡易櫓から望遠鏡と妖精で周囲を警戒中の兵士に向けて叫んだ。兵士は再度確認をしてから返答する。


見張りA「まだ視認できる範囲にはありません」

見張りB「ですが、確実にこちらへ近づいて来てます」


 見張りの報告では直に視認できる位置にまで到達するだろうという事だった。指揮官をはじめ、騎士や兵士全員が手に汗を握っている。

 いよいよ、町での防衛戦が始まろうとしていた。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 リーヴェ達は遺跡内でも一際大きな両開きの扉前まで来ていた。扉の向こう側から異様な気配を感じる。ほぼ間違いなくボス部屋かなにかだろう。

 リーヴェは扉に手をかけ、周囲にいる仲間達を順に見た。覚悟は十分だ。


リーヴェ「行くぞ」


 扉を開いて慎重に歩みを進める。互いの距離を縮め、視界を補い合いながら部屋の中央へ。

 急に辺りが明るくなった。部屋にあったマナ結晶が、開いた扉から流れ込んだ風に反応して部屋の大部分を照らしている。しかし何もない。


ラソン「原因はどこだ」

リーヴェ(そんなはずは……)

???「…………」

リジェネ「ひっ!!」


 リジェネはビクッと全身を震わせ、古いロボットみたいな動きで背後を振り返った。全員がリジェネの背後に注目する。

 陰に潜むように現れたのは、約2mの幽霊っぽいコウモリの魔物だった。


魔物「――(人には聞き取りずらい声)!」

リーヴェ「来るぞっ」


 魔物「ファントム・ニュクテリス」が出現した。

 ファントム・ニュクテリスのバトル開始時スキルが発動。ボスの呼び声に「ボーンソルダ」×5が参戦した。これはバトル最初の1度のみに発動するスキルだ。

 率先して人を襲う事のないボーンソルダ達は、ニュクテリスに操られるままリーヴェ達を強襲する。


リーヴェ「やはり、コイツがアンデット達を」

リジェネ「そうみたいですね」

セレーネ「あんたの所為で皆酷い目にあったんだから! 許さないっ」


 向かってくるボーン1体にセレーネが突っ込んで引き付ける。ラソンがニュクテリスの前に進み出るがボーンが邪魔だ。


ラソン「くそ……デカいのとチビ、どっちもは厳しいな」


 ラソンが飛行するクライスを呼ぶ。彼の意図を読み取ったクライスが、ボーンソルダに向かって急降下した。ラソンがタイミングを指示する。


ラソン「クイックコンフュージョン」

クライス『キキィッ』

ボーン「ΔΦ∂※……」


 クライスが標的の周囲をグルグルと回り風で巻き上げる。素早く回転された魔物は目を回して混乱状態になった。このスキルはダメージがない代わりに、余程のことでない限り確実に混乱をかけられる。

 続いて近くの1体にも同スキルを使って混乱させてから急速離脱した。混乱したボーンがランダムで同士討ちを始める。おかげで敵の陣形が崩れた。

 セレーネが敵に向かいながら叫ぶ。


セレーネ「リーヴェ、混乱してない奴を先に倒すよ」

リーヴェ「ああ、任せろ」

リーヴェ(とにかく数を減らさないと)


 リーヴェはリジェネにも声をかける。ラソンの近くにいたリジェネがこちらを振り向く。


リジェネ「ラソンさん、しばらく……」

ラソン「いいぜ。デカいのは任せとけっ」


 ラソンがニュクテリスに何度目かの「ハウリング・ヴォイス」を発動。奴のHPはまだほとんど減っていない。

 混乱していないボーンソルダ達を集中攻撃で各個撃破していく。3体を無事倒した頃、ちょうど効果が切れかかってきたボーン達がラソンに向かっていった。ラソンの背後からボーン2体が迫る。

 ラソンは背後を気にしながらも、身体はニュクテリスに向けたままだ。大丈夫だ、きっと仲間が助けてくれる。ラソンは信じていた。


ラソン「っ……」

セレーネ「はあぁ、連蹴乱舞(れんしゅうらんぶ)!」

リーヴェ「とどめだ」


 ガード崩しの5連続蹴りがヒットする。無属性攻撃だが、ダメージは通るし足止めには十分だ。リーヴェが「セイクリッド・バスター」の連射でとどめを刺した。僅かに怯んだだけの敵には、魔法よりこっちの方が効果的だ。

 ボーンが倒されると、ファントムニュクテリスに動きがあった。翼を外套のようにして本体を包む。嫌な予感だ。


リーヴェ「エルメキア・ランス」

リジェネ「颯針槍」

セレーネ「火月閃」

ラソン「烈風断滅砕」


 一斉攻撃を食らわせる。だが、全然ダメージが入らない。特に魔法攻撃は無効化してしまっていた。

ガード状態に入ったらしいニュクテリスに何度も攻撃を当て続ける。しかし崩せないまま一定時間が経過し――。


ニュク「――(高くて嫌な音)!」

全員「ぐあぁぁ」


 翼を広げ、ガラスを引っ掻いたような不快音とともに闇の全体魔法を放ってくる。

 ニュクテリスのスキル「弱攻(じゃっこう)の風」が発動したのだ。小ダメージとともに、被弾した敵全てに攻撃力ダウンを付与してくる。リーヴェ達にとっては初めてのデバフ攻撃だ。

 モーションを解除したニュクテリスが超音波を発した。


ラソン「うっ、身体が……動かねぇ……」

リジェネ「マヒ攻撃ですっ」


 コイツは状態異常までかけてくるのか。厄介過ぎる。ニュクテリスのスキルでセレーネにもマヒが入る。

 マヒのほうは確率みたいだが、攻撃デバフは確定で入る効果っぽい。リーヴェがリカバリーでラソンのマヒを解除する。セレーネのほうはリジェネがマヒ解除薬を使用した。だが、デバフは打ち消せない。


 この世界には、戦闘で使うデバフ解除薬はないのだ。スキルで解除するしかないが、今は使えるメンバーがいなかった。


セレーネ「よくもやったわね。お返しよっ」

ラソン「コイツもくらえ」


 2人が突っ込む。遅れてリーヴェの魔法とリジェネの攻撃が直撃した。今度はちゃんと効いている。魔法も無効化されない。

 一番ダメージが入ったのは、セレーネの炎攻撃だった。次にリーヴェのアンデット特攻。適度に回復を交えながら攻撃を加えていく。ニュクテリスは影をつたって背後をとって攻撃してくる。

 広い部屋を激しく動き回りながら戦闘が続いた。例の如く物理と無属性は効果が薄い。

 再びニュクテリスがガードモーションに入る。不味い。


ラソン「シルトエコー」

クライス『キィー』


 クライスの放った波動がラソンを包み、彼の防御力と精神力を上げた。彼は受け止める気だが、これではダメだ。他に手はないのか。

 ニュクテリスの動きを見ていたリーヴェの脳裏にある言葉が閃いた。

 ――影に潜む者、彼の者が衣を纏いし時、砕くは繋ぎし力。衣を奪わば道は開けん。


リーヴェ「っ! セレーネ、連続攻撃でガードを崩せないか」

セレーネ「そっか。やってみるよ」

ラソン「オレも行くぜ」


 ラソンとセレーネがニュクテリスに突撃した。属性攻撃しか効かないことを念頭に入れてスキルを選ぶ。


セレーネ「炎撃拳、火月閃、続けて火十連撃(かじゅうれんげき)!!」

ラソン「旋風連斬」


 セレーネの火十連撃は、素早く拳で10連撃を食らわせる炎属性技だ。連蹴乱舞と同様にガードブレイク効果がある。

 連続攻撃スキルがあまりないリーヴェとリジェネも、モーションの短い攻撃で可能な限り連続攻撃をした。意識的に攻撃回数を稼いでいく。

 ファントム・ニュクテリスのガードモーションが崩れた。解除の反動で動きが鈍る。セレーネとリジェネが瞬時に数歩下がった。


セレーネ「チャンスっ、柔旺陣(じゅうおうじん)

リジェネ「攻気」


 セレーネは呼吸を整え、自身の攻撃力を一定時間上昇させるスキルを使う。

 リジェネは構えをとり、次に出す攻撃のダメージ量を上げる効果を自身に付与した。どちらも一瞬で終わるスキルだ。

 間髪入れずに2人が攻撃に転じた。2人の攻撃が始まると同時にリーヴェも詠唱に入る。ラソンは念のため自身に注目を向けるように対処していた。その後自分も攻撃に加わる。


リーヴェ「エルメキア・ランス」

ラソン「あと少しだ。弱点をつけ!」

セレーネ「オッケー。行っくよぉ、炎撃拳っ」

リジェネ「やった……倒した」


 ファントム・ニュクテリスを撃破した。大量の経験値が入る。

 リーヴェはLv21になった。リジェネがLv21になった。ラソンがLv22になった。セレーネがLv22になった。

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