表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/619

第26話 セーブポイント

 次のフロアに上がり探索を続けるリーヴェ達。

 遺跡内は思っていたより明るくて、床や壁もそれほど脆くなかった。明るいのはマナの結晶が至る所に配置され、周囲のマナに呼応して発光していたからだ。

 結晶の色は赤、炎のマナが結晶化したもので風のマナの影響を受けて光っている。さすが風の王国というだけあって緑色の風マナが多いのだ。


 炎のマナ結晶だからと言っても熱くはない。強い衝撃を与えると爆発する性質を持ってはいるが、遺跡内の結晶は衝撃による爆発を防ぐ処置が施されていた。これは古代の技術である。

 リーヴェ達の足音やカナフシルトの羽音が反響していた。

 ――カチッ。


リーヴェ「今、音が聞こえなかったか」

リジェネ「セレーネさん、足」

セレーネ「えっ」


 全員の視線がセレーネの右足に集中する。正確にはその足元、床が一部へこんでいた。

 これって、まさか。身構える一行。


ラソン「……アレ?」

リーヴェ「なにも、起きないな」

セレーネ「はぁ~またやっちゃったのかと思ったよ」

リーヴェ(また?)


 前にも似たような経験があるのだろうか。リーヴェは気になりはしたが、特に追及はせず先へ進む。しかし、先程のスイッチは決して無意味ではなかった。


リーヴェ「行き止まりか」

ラソン「けど、隙間風が吹いてるぜ。コレ、扉なんじゃねーかな」


 本当だ。灯りでしっかり照らしてみると、確かに奇妙な隙間や段差がある。横にスライドするタイプの扉らしかった。周囲を探してみる。


リーヴェ「これか……」


 リーヴェが壁にあった、つなぎ目がくっきりしている長方形の中心を押した。鈍い音を響かせて扉が開く。するとどこからか、別の低い音が響いてきた。目の前の道を進んでいく。

 しばらくして小部屋に出た。右側に通路があるのでそちらに行くとまたもや。

 ――カチッ。目の前の扉が勢いよく閉まった。同時に背後の壁が開き、そこから魔物が出現する。


リジェネ「わあぁ」

セレーネ「きゃあっ」


 魔物「クロスファントム」×3と「ボーンソルダ」×3体が出現した。クロスファントムは、布を被った幽霊のような魔物だ。全長は約0.4mで、もちろんアンデットだ。

 言い忘れたが、ボーンソルダの大きさは人間の子供くらいで、大人サイズのコールファンテよりは小さい。


 リーヴェ達は魔物のバックアタックを食らう羽目になった。

 前衛と後衛の位置が乱れた状態で戦闘開始。妖精の召喚や騎乗で対応が遅れる。まともに敵の初撃に対応できるのはリーヴェだけだ。

 体勢の不安定なセレーネとリジェネにボーンソルダ達が迫る。リーヴェが拳銃でボーンソルダの動きを封じた。一時的に足止めをしている内に3人が戦闘態勢を整える。


ラソン「はあぁ、精風刃」

セレーネ「あたしも行っくよー」

リーヴェ「これから詠唱に入る。援護してくれ」

2人「了解」


 前に出ていたリーヴェが後衛に下がり、ラソンとセレーネが前衛に上がった。リジェネがカナフに乗って敵陣の背後に回る。狙いは、戦闘開始直後から詠唱に入っていたクロスファントムだ。

 少し火力を抑えてプレスを浴びせる。勢いよくやると部屋中が火の海になってしまう。ファントムに炎は効果抜群だった。上手く弱点を付けたようだ。直撃を食らったファントム2体が倒れる。


セレーネ「こいつ等、そんなに強くないかも」

ラソン「だからって油断すんなよ」

セレーネ「わかってるって……火月閃っ」

リーヴェ「そこだ。エルメキア・ランス!」


 セレーネが攻撃したボーンソルダに、リーヴェが魔法でとどめを刺した。ラソンが相手をしているボーン2体にはリジェネがフォローに入る。


リジェネ「地龍槍(ちりゅうそう)

ボーン「…………っ」


 騎乗状態から体勢を傾けて、槍を魔物の足元の地面に突き刺した。槍を通して地にマナを流し地を通って属性を帯びたマナが、見えない圧力となって槍を突き刺した周囲の敵を攻撃する。円形の小範囲に攻撃する地属性攻撃だ。

 完全に怯んだボーンにラソンが翼閃連斬を叩き込んで倒した。残った1体も集中攻撃で無事撃破する。


 リーヴェ達は魔物の群れを倒した。

 リーヴェはLv20になった。リジェネはLv20になった。ラソンがLv21になった。


ラソン「ふぅ、一瞬ヒヤッとしたぜ」

リーヴェ「迂闊だったな」

セレーネ「もう、後ろからなんてタイミング悪すぎ」


 リーヴェ達は冷や汗を拭い、気持ちを落ち着けてから開閉が切り替わったもう一方の扉を進む。ここの遺跡は、スイッチで開閉が入れ替わる扉の仕掛けがあちこちにあった。

 複雑に入り組んだ通路を右へ左へ行き来しながら探索していく。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード17  罠と宝箱】

 ア・ルマ遺跡の探索途中、今までの物よりもずっと派手な装飾の宝箱を発見した。リジェネとセレーネが真っ先に反応して近寄る。宝箱を開けようとセレーネが手をかけた。


セレーネ「イタッ」

リジェネ「セレーネさん!? 姉さんっ」


 リーヴェがすぐさま「リカバリー」をかける。宝箱に仕掛けられた毒針に触れてしまったのだ。蓋を開けようとすると毒針が出る仕組みになっていた。


ラソン「また厄介なのが来たな」

リーヴェ「今度は仕掛けつきか……宝箱にもいろいろあるんだな」


 全員が顔を見合わせる。宝箱をちらちらと見ながら動きが完全に硬直した。


ラソン「どうするよ、コレ」

リジェネ「2度目があったりするんでしょうか?」

リーヴェ「この箱は諦めるか」

セレーネ「ええ、せっかくのお宝なのに!」


 セレーネは何とか宝箱の中身が欲しいので、箱ごと壊せないか試したり毒針を防ぐ方法がないかを模索する。だが、毒針の仕掛けを解除しないと開かない造りになっていた。

 ニクスがいたらな、とぼやくラソンにリーヴェも同意する。確か彼は、罠も解除できると言っていた。セレーネが「誰?」と言ってきたので簡単に説明するリーヴェ。


リーヴェ「そういえば、この森に来ているようだったが……」

セレーネ「本当! じゃあ、すぐに探して来ようよ」

ラソン「仮に森に来てたとしても、さすがにもう移動してるだろ」

セレーネ「ううぅ」


 セレーネが未練がましい視線を宝箱に向けて唸っている。そんなに中身が欲しいのか。仕掛けが施されているくらいだから、それなりに良いものが入っていそうだが。


リーヴェ(さすがに解除できるかも妖しい箱を、命がけで開けるのは避けたいな)

リーヴェ「セレーネ、残念だがこの宝箱は諦めて先を急ごう」

セレーネ「うう~ん……はぁ、了解」

リジェネ「セレーネさん、行きましょう」


 意気消沈する彼女を連れて遺跡の探索に戻った。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 数時間ほどフロア内を彷徨い、ようやく上へ続く階段を発見したリーヴェ達。

 階段を上がってすぐは大部屋になっており、その中央には大きな光る魔法陣があった。神秘的な白い光が魔法陣から柔らかく放出されている。


リジェネ「これは結界方陣ですね」

リーヴェ「結界方陣……魔物を寄せつけない安全エリアだな」

リジェネ「はい」

セレーネ「へぇ、便利なモノがあるんだね」


 結界方陣(けっかいほうじん)、別名セーブポイント。もちろんリーヴェ達にセーブという感覚はない。この上にいる限り、魔物に襲われる心配がない安全なエリアだ。こちらも古代の文明が残した遺物のひとつで、大抵のダンジョンや遺跡などにはほぼ確実にある。

 魔法陣は部屋全体に作用しているので、この大部屋からでなければ安全は確保できるだろう。魔法陣は焚火などで消える心配もない点も安心だ。


 時間帯も大分良い感じだったので、ここで今晩は野営することにする一行。事態は一刻を争うが、十分な休養を取らなければ危険だ。この後のことも考え態勢を整えておく必要がある。

 リーヴェ達は協力して野営の準備を行う。今回の食事はセレーネが作ることになった。


ラソン「うんめぇー」

リーヴェ「セレーネは料理上手だな」

リジェネ「すっごく美味しいですっ」

セレーネ「エヘヘッ、別に大したことじゃないよ」


 セレーネはここまで喜んでくれるとは思っていなかったらしい。少し大げさなくらいに照れている。

 彼女が作ってくれた食事は、今まで食べた中で一番美味しかった。こだわって作ったことが容易に想像できるほど手が込んでいる。非常に丁寧な出来栄えだ。

 ラソンはやっとまともな料理が食えると涙目である。食の凶器を回避できたことに感涙しているようだ。彼は積極的にお代わりを強請っていた。確かにこれは上手い。


ラソン「セレーネ、もう一杯くれ」

セレーネ「そんなに食べて大丈夫なの? まったく、今までどんなの食べてたのさ」

ラソン「頼むから聞かないでくれ。思い出しただけで……うぷっ」


 ラソンは、見た目も味も大崩壊している『凶器』を思い出してしまった。


リジェネ「ちょっと、どうして僕を見て不味そうな顔するんですか!」

リーヴェ「あはは……」


 今までの食事がヤバかったのは、紛れもなく彼が原因である。頬を膨らませ、不服顔のリジェネ。味覚は普通っぽいのに、なぜ作るものはああなってしまうのか……謎だ。

 リーヴェも料理は得意ではないが、ラソンからいろいろと教わって少しは上達してきたと思う。ラソンも料理ができるというだけなので、なかなか上手くはならないのだが。


 リーヴェは出された食事をじっくりと見つめた。

 綺麗に切られた野菜のスープに、程よい焼き加減のパイ。よく野営用の調理道具で作ったものだと感心する。彼女自身が持ち歩いていた道具も使っていたが、見事だとしか言いようがなかった。

 リーヴェは食事を見て決めたことをセレーネに伝えることにした。


リーヴェ「セレーネ、今度私に料理を教えてくれないか?」

セレーネ「んん、リーヴェは料理が苦手なの」

リーヴェ「ああ、今までやったことがなくて」

セレーネ「ふぅん、いいよ。今度一緒にやろっか」

リーヴェ「ありがとう。よろしくお願いします」


 セレーネから快い返事を貰えてほっとするリーヴェ。今度一緒に作ってみよう。

 ラソンの様子をチラリと見て、強く心に決めた。特に他意はないが、食事はやっぱり大切だと思った。ちゃんと喜んで貰える食事を作れるようになりたいと感じた。

 こうして、リーヴェ達は念願の「まともな食事」を手に入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ