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第25話 ア・ルマ遺跡と開かずの扉

 森で遭遇した戦士達に連行され、彼らの住処「ホルルッカ族の里」にやって来た一行。

 この里はムートリーフ王国では珍しく、木材とレンガを上手く組み合わせた造りの町並みだった。重量のあるレンガを土台や塀などに用い、高床式の木造建築が上に建築されている。里の周囲を柵と堀で囲い、東西南北それぞれに見張り櫓が建っていた。

 里の至る所に、この国でとれるほどんどの果実の木が栽培されている。コポムやオランジア、ブドウなどの果樹が茂っていた。


 中には樹木と一体になっているものもあり、バルコニーが家屋の周りに備え付けられている。わざわざ下に降りなくても寛げるようになっているようだ。

 リーヴェ達はリーダーの戦士に促されるまま里長のもとを訪れていた。


里長「えー、つまりお前達はこの先にある遺跡に用がある訳じゃな」

リーヴェ「遺跡? いや、私達はこの森にアンデットを呼び寄せるものがないかを調査しに来たんだが」


 戦士達と違い、随分と流暢に会話をしている里長。しかしなぜか会話が繋がらない。意味は通じているはずだが、重要な部分が抜けているような気がする。他のメンバーも意味がわからない、といった様子だ。

 顔を歪めるしかないリーヴェ達と里長の会話に、助け舟を出してくれたのは以外にもリーダーっぽい戦士の男だった。


戦士A「長……話、抜けてる」

里長「んん、おおすまんのぅ。大事なことを伝えとらんかった」

リーヴェ「はい、それで遺跡になにか秘密が?」

里長「ううむ、数日くらい前じゃったか……この先のア・ルマ遺跡に不審な影が飛んでいきおった」

リジェネ「不審な影って、ま、まさかオバケですか?」


 リジェネが急にソワソワと落ち着きをなくす。ジッと座っているのも辛そうだ。


セレーネ「いくら何でも怖がりすぎでしょ。まだ詳しく聞いてないじゃん」

リジェネ「そ、そうですよね。すみません」

リーヴェ「こほんっ、長殿話を続けて下さい」

里長「うむ、さすがにワシ等もアレが何じゃったか知らん。じゃが、あの遺跡には昔から天よりもたらされた宝物が眠っておると言われておる」

セレーネ「え、お宝」

リーヴェ「セレーネっ」


 まったく、これでは話が進まない。静かに聞いているのはラソンくらいじゃないか。リーヴェの眉間に思わずシワが寄った。なんだか疲れる。ようやく話が繋がってきそうなのだから、率先して話を脱線させないで欲しい。


 ひとまず宝物の話は置いておくとして、長の話によると最近遺跡に飛来した何かを大勢の里人が目撃したという。しかもこの1件以降、森の魔物や動物に異変が起きたのだ。狂暴化のことを抜きにしても、これほど急激な変化はあり得ない。

 普通に考えれば、この飛来したなにかが森の魔物やアンデットの侵攻に関係している可能性が高かった。一応、他に奇妙なことがなかったかを聞くが心当たりはないようだ。


リーヴェ「では、私達がア・ルマ遺跡を調べてきます」

里長「おお、是非頼んだぞい」


 里長は里の者に今回の件は誤解であり、今後は客人として扱う旨を伝えてくれると約束してくれた。リーヴェ達はなんとか身の安全を確保して長のもとを後にする。

 長宅を出た時に、リーダーの戦士は無礼を詫びてくれた。こちらも森への侵入を謝罪する。意見の食い違いで争いにならなくて本当に良かった。


ラソン「そんじゃ、さっそく遺跡に向かうか?」

リーヴェ「うーん、私は一度態勢を整えたほうがいいと思う」


 里側の反応を知りたくて、近くにいた戦士に視線を向けるリーヴェ。


戦士A「じき日ガ暮れる。そうしろ……歓迎、する」

リーヴェ「礼を言う。皆、どうだ」

リジェネ「僕は構いません」

セレーネ「あたしもいいよ」

ラソン「ま、言われてみれば一理あるな」


 ラソンは時刻計を確認して納得したようだった。他の皆もそれぞれ了承してくれる。

 リーヴェ達は今晩、里のお世話になることにして一旦自由行動することに決めた。パーティが一時解散する。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード16  占い師の助言】

 1人里を散策するリーヴェは、入り組んだ道の隅にいる女性に呼び止められた。恰好から占い師のようだ。彼女の手元には水晶球が置かれている。


占い師「ちょいと客人さん、こっちこっち」

リーヴェ「悪いが占いは結構だ」

占い師「うんにゃ、これは里のもんが迷惑かけた詫びさね。それに、ちょいと気になるもんが見えたじょ」


 独特な口調で話す占い師。あまり乗り気ではないが、妙に気になるものを感じてしまいうっかり立ち寄ってしまう。


リーヴェ「気になるものって?」

占い師「うんにゃ、教えてやるじょ。お前さんア・ルマ遺跡に行くんだじょ」

リーヴェ「ああ」

占い師「水晶が告げとる。‐影に潜む者、彼の者が衣を纏いし時、砕くは繋ぎし力。衣を奪わば道は開けん‐」

リーヴェ「ん? どういう意味だ……」


 なにかを暗示している、のは察しがつくが意味はわからなかった。でも、意味は必ずあるはずだと信じ心に留めておくことにする。

 リーヴェは占い師にお礼を言ってその場から離れた。立ち去る時、ついでとばかりに占い師が意味深な言葉を残す。「お前さんの行く先には、大きな分かれ道があるじゃろう。闇とあっても、友を信じなされ」と。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 日が昇る時間になってから、リーヴェ達は里を出て「ア・ルマ遺跡」へと向かった。道中、不思議なほど魔物には遭遇せず逆に恐ろしい予感を感じる。嵐の前の静けさに似ていた。


 里の人々から教えて貰った、遺跡の場所が記された地図をもとに森を進む。警戒するリーヴェとラソン、怯えるリジェネとは違い、セレーネは神妙な面持ちで後ろをついてくる。同行してからずっと騒がしいくらい元気で、おしゃべりだった彼女なのにどうしたのだろう。


セレーネ「ねえ、リジェネ」

リジェネ「はい、なんですか」

セレーネ「リジェネは、もし自分の知らない所に、本当は血のつながった家族がいたって知ったら会いたい? たとえ会わない方が互いに幸せだったとしても」


 リジェネは突然の問いかけに瞼を見開き瞳を丸くした。疑問に思いながらも、リジェネは真剣に考えた末に返答する。


リジェネ「僕は会いたいですね。血が繋がってても、なくても、会えるなら会ってみたいです」

セレーネ「そう……」

ラソン「何の話をしてんだ?」

リジェネ「あ、実は」


 兄2人のことを思い出しながらリジェネは答えを出した。もしも2人が宮殿で暮らす事にならなかったら、今とは大分違っていただろうと思う。

 すると前を歩いていた2人が歩調を合わせて話に参加した。リジェネがセレーネに聞かれた内容をリーヴェとラソンに伝える。


ラソン「つまり、生き別れの兄弟とかがいたらってことだよな」

セレーネ「うん……リーヴェは? 会いたいって思う?」

リーヴェ「…………ああ、そうだな」

セレーネ「あ、ごめん。記憶が曖昧じゃあ、こういうの困るよね」

リーヴェ「そんなことない。私も、会いたいと思うよ」

ラソン「オレは、別に会えても会えなくてもどっちでもいいや。お互い元気ならいい」


 会えたらラッキーだけど、無理することはないというラソン。自分とイセスに、物事を置き換えて想像したんだろう。リーヴェも記憶が曖昧とはいえ、リジェネと再会できたことは嬉しかった。最初は戸惑ったし、今でもはっきりしない部分はあるが、それでも大事な家族で仲間だ。

 セレーネは全員の意見を聞いて再び黙り込んでしまった。待っても話す気配がなかったので、仕方なく先を進むことに意識を戻す。



 木の枝葉や背の高い草をかき分けて進んでいくと、やがて件の遺跡と思われる古い建造物が見えてきた。薄茶の石造りだ。長いこと放置されているらしく、壁や床石の間を縫うように蔦が伸びている。


リーヴェ「大きいな」

ラソン「ああ、めっちゃデケェーぞ」

リジェネ「これを探索するんですよね……骨が折れそう」

セレーネ「…………」


 ゆっくりと歩みを進め、ア・ルマ遺跡内に踏み込んでいく。入り口付近で立ち止まっていたセレーネをラソンが呼ぶ。セレーネは一旦考えるのを止め、快活な返事をして合流した。

 中の様子を軽く観察したリジェネが、一度遺跡の外に出て指笛を吹いた。空からカナフシルトが降りてくる。


リーヴェ「どうだ、入れそうか」

リジェネ「大丈夫です。十分な広さがあるので、ある程度飛ぶこともできそうですよ」


 カナフシルトが恐る恐る遺跡内に足を踏み入れた。

 遺跡の入り口も入ってすぐの部屋も相当に広々としているが、先に続いている通路も十分な広さがあった。天井も高いので、高度を上げすぎなければある程度は飛び回れるだろう。

 頑丈な石造りなので、飛行時の風圧でどうにかなるものでもない。というか、つなぎ目がよく見えない。間近まで行かないとわからないくらいだ。

 カナフシルトは少し窮屈そうだが、すぐに気にせず移動し始める。


リジェネ「久しぶりに建物の中に入って興奮してるんですね」

リーヴェ「悪いな。ずっと外で」

カナフ「ピィ」


 カナフシルトがリーヴェとリジェネに首をスリスリしてきた。本当に嬉しそうだ。

 機嫌がいい白龍を連れて、リーヴェ達は遺跡の奥を目指し歩き出した。



 通路を進んだ先に上へ行くための階段を発見する。ここまでの通路は1本道だった。階段がある部屋の左脇に奇妙な扉があるのを見つける。変わった装飾の非常に大きな扉だ。材質は石のようだが、取っ手の類はなく、押しても引いてもビクともしなかった。

 どうやら鍵がかかっているか、リーヴェ達では動かせない仕掛けが施されているようだ。


ラソン「あれ、開かないぞ。扉じゃないのか」

リジェネ「多分、扉だと思いますよ」

セレーネ「ねぇねぇ、あの模様なんだろう?」

リーヴェ「…………」


 確かに扉の中央に10個の●と棒線を組み合わせた模様が彫り込まれている。建物全体の経年劣化の具合を見た限りでも、この模様のほうは後から書き足された感じがした。掘り方も少し雑な気がする。

 首を傾げるラソンとセレーネ。しかしリーヴェとリジェネの反応は少し違った。リーヴェは模様を見てぼんやりと呟く。


リーヴェ「セフィロト」

リジェネ(なん、で……)

ラソン「セフィロトって?」

リーヴェ「え、あ……なんとなく」


 自分でもはっきりとしたことは覚えていない。ただ、模様を見て真っ先に浮かんだ言葉だった。この先に、とても重要なモノがある気がする。


リーヴェ(しかし、開け方がわからなければどうしようもないな)

リーヴェ「気にはなるが、今は階段の奥へ行ってみよう」

ラソン「他に道もねーし、行くか」

セレーネ「うん。ほらリジェネも」

リジェネ「ま、待ってくださいよ~」


 リーヴェ達は階段を上がって次のフロアに向かうのだった。

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