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第22話 さらなる脅威

 アンデット群団相手にリーヴェ達の戦いは続く。


町人「た、助けてくれ~」

女性「坊や早くっ」

少年「うあぁぁん」

老婆「待っとくれぇ」


 広場を目指し逃げる人々。中でも子供の手を引く女性と、杖をついた老婆は遅れていた。彼らのすぐそばまで迫る魔物の群れ。

 両者の間を阻むようにラソンが立ちはだかった。足の遅い面々の姿を自身の身体で隠す。ヴァンガードでダメージを軽減して敵の攻撃を引き受け続ける。


ラソン「今のうちに皆をっ」

リジェネ「はい。お婆さん、僕に掴まってください」

老婆「あ、ああ」


 老婆がお礼? を言う間もなく、リジェネは老婆を抱えて飛び上がる。自分の翼で飛翔し町の中心にある広場まで運んだ。リーヴェも女性から子供を預かり同じように避難させた。戻ってきたリジェネが母親のほうを運ぶ。広場で不安や驚愕、安堵などとは異質な視線を感じたが気にしてられない。

 ダメージを受けるので、女や子供、老人、病人が優先だ。男衆のほうは護衛を引き受ければ、まだ広場まで自力でたどり着けるだろう。


娘「ひゃっ」

エルピス『ガルルッ』

娘「これ、毒?」


 コールファントの吐く息に直撃してしまい、運悪く毒状態になってしまった娘。動きの鈍った彼女をエルピスが庇う。


リーヴェ「リカバリー」

娘「あっ、ありがとう!!」


 屋根の上を移動してきたリーヴェは彼女の言葉に微笑んで頷いた。

 ラソンにも治癒をかけ、攻撃魔法の詠唱に入る。少しでも早く数を減らさないと前衛の2人がもたない。リジェネには、継続して避難のサポートをして貰っていた。攻撃に参加していない訳ではないが手数は控えめだ。


娘「まだまだ行くよっ。火月閃(かげつせん)、からの突牙(とつが)!」


 娘はボーン1体にまずローキックを当てて俊敏力を下げ、そのまま回転を交えて顎にアッパーカットを入れた。スキル同士を綺麗に繋げている。

 彼女のクラスはスキル毎のモーションが素早く、複数の技を繋げやすい特徴がある。また連撃性能が高く、自身のステータスを補強しながら攻撃するスキルが豊富だ。精獣拳にも、攻撃後に自身の俊敏力が上がるという付属効果がついている。

 娘は休む暇も与えない攻撃のラッシュを敵に浴びせていった。


新兵「わぁぁ、くんな。来ないで~」

ラソン「でぇりゃああ」


 無茶苦茶に剣を振りまわしていた新兵をラソンの剣撃が援護する。新兵の青年は涙目だ。


新兵「殿下ぁ~」

ラソン「情けない声出すな。行くぞ!」

新兵「りょ、了解っすぅ~」


 ラソンは大剣を肩に乗せた構えで魔物の群れに向かっていく。新兵も彼の後に続いた。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 町の中央広場には大勢の人々が避難して来ていた。円形の広場の至る所には松明や大きな焚火が焚かれ、通路の接続部分に兵士が陣形を組んで防衛にあたっていた。他にも簡易的なバリケードを作り、少しでも戦いやすく工夫している。

 広場周辺の上空には偵察中の鳥精が飛び交い、一部は敵の進行を巧みに風を用いて妨害していた。バリケードを障壁にし、弓を構える兵士と槍を装備した騎士達。


士官「来たぞ。弓構えー」


 通路の向こうから避難民を追ってきた数体のアンデット達を視認した。小隊指揮官が号令をかけると、弓兵達が弓を構え矢に妖精の風を纏わせる。


士官「撃てっ」


 一斉に矢が放たれた。風を纏った矢はかなりの距離を飛び、的確に魔物の頭部や胴体に命中する。妖精の力で命中、飛距離、威力を補強しているのだ。数体の魔物らが次々と倒されていく。

 取りこぼした敵は、騎士の槍がバリケードの隙間を縫うように通して突き刺した。一定の距離を保てば状態異常にはかからない。槍と弓ならその戦い方ができる。


 索敵係が的確に次の接近者を報告する声が辺りにこだまし、それぞれの通路を守護する兵が対応する。必要に応じて戦力の一部を移動させ、集中撃破をして確実にこの場を死守することに専念した。

 障害物をうまく利用すれば少ない兵力でも十分に戦える。敵側の移動速度がゆったりしているのも助かる要素だ。

 コールファントは標的を認識すると速度を上げて襲ってくるが、バリケードで上手く身を隠せば問題ない。ボーンソルダは率先して人を襲ってこないし動きも単調だ。


指揮官「よし、このまま落ち着いて対処すればこの場は死守できるぞ。なんとしても踏ん張るのだ」

兵士達「おおー!!」


 兵士や騎士達の結束は割と高かった。避難してきた民達が生還を祈る中、勇敢な戦士達の防衛戦は続く。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



リーヴェ「うぐっ」

リジェネ「くっ、これはなかなかに応えますね」


 町中を移動しながら、自前の翼で避難を助けるリーヴェとリジェネ。しかしその代償はかなり過酷だった。

 1度の使用が短くても、回数を用いれば相当のダメージが蓄積される。おかげで2人のHPはイエローゾーンに入ってきていた。


ラソン「オマエら、あんまり無理しすぎんな。いったん下がって回復しろよ」

リーヴェ「あ、ああ。そうするよ……」

リジェネ「すみません。しばらく頼みます」

ラソン「任せろ。さ、早く」

クライス『キキィッ』


 ラソンに後を任せて一時後退する2人。戦闘参加人数が減るのを察したクライスが、風を生み出して魔物の進行速度を落とす。

 比較的安全な場所に移動し、持っている回復薬でHPを回復した。リーヴェは長期戦を想定してMP補給薬も使っておく。彼女が魔法を使えなくなったら継戦は厳しくなるからだ。


 十分に回復した2人。大丈夫、まだ戦える。リーヴェはラソンのもとに復帰した。一時的に前衛を彼から引き継ぐ。後衛に下がったラソンはHPとMPの回復を行う。

 態勢を整えたところで、突然遠くから悲鳴じみた声が近づいてきた。


娘「ぃやーー! 無理無理、いくら何でも多すぎぃ!!」

エルピス『ガゥ……』


 角を猛スピードで曲がり現れたのは、大量の魔物に追われた娘とエルピスだった。魔物の数はザっと20体程だろうか。密集したアンデットらの形相が怖い。一緒にいた新兵が情けない悲鳴を上げる。


リーヴェ「まだあんなにいたのか」

ラソン「くそ、キリがねぇな」

リジェネ「でも、あれが最後っぽいですよっ」


 上からリジェネの声が聞こえた。いつの間にかカナフシルトに騎乗している。上空から一通り町を見回って来たらしい。さすがに戦闘させるには障害物が多すぎて難しいが、上空からの状況把握ならこっちの方が効率がいいのだ。


ラソン「よっしゃ。アレを倒せば終わりってことだな?」

リーヴェ「ああ、一気に叩くぞ」


 気合十分で突撃していくリーヴェ達。


新兵「そ、そんなぁ~。さすがにあんなの無理っすよ! 死んじゃうっす」

ラソン「今は1人でも人手が欲しいんだよ。フォローしてやっから来いっ」

新兵「もーう、どうにでもなれっすよー」


 大声を上げながら新兵の青年も突撃していった。かなり危なっかしい。

 この町での最後の戦いが始まった。



 激戦の末、リーヴェ達は見事アンデット群団を討伐した。

 一括で事後報告すると、リーヴェはLv19になった。Lv18時にスキル「虹華星空斬(こうかせいくうざん)」と「フォトン・ブリット」を習得。

 リジェネはLv19になった。Lv18時にスキル「攻気(こうき)」を習得。

 ラソンはLv20になった。スキル「烈風断滅砕(れっぷうだんめっさい)」を習得。妖精スキル「シルトエコー」と「クイックコンフュージョン」を習得した。


 リーヴェ達は町の人々が避難している中央広場に来ていた。


リーヴェ「‐豊かなる生命(いのち)の輝きよ。彼の者に宿りて癒せ‐ ヒール」

子供「ありがとうお姉ちゃん」


 襲撃によって怪我を負った人々の治療にあたるリーヴェ。子供の怪我を治し、傍にいた親からも礼を言われる。

 そんなリーヴェを離れた所から見つめる聖職者2人と、物陰から覗くフードを被った謎の人影。聖職者のほうはなにやら会話していたが、当然リーヴェは気づかない。

 一方でラソンは騎士や兵士達と今後の対策を練っていた。そこに町周辺の偵察を行ってきたリジェネが戻ってくる。


リジェネ「ラソンさん、まだ距離がありますが魔物の群れが近づいて来てます」

ラソン「同じ種類か?」

リジェネ「はい。さっきよりも数が多いです」

ラソン「第2陣か……」

指揮官「どうしましょう。迎撃するにしてもいつまで持つか」


 頭を抱えるラソン達。話し合いの結果、町の周囲に防壁を作って炎を配置する方針で行くことになった。作業に取り掛かる兵士達とは別に、優先的な治療を終えたリーヴェと合流するラソンとリジェネ。


リーヴェ「あの魔物はどういった奴なんだ?」

ラソン「いや、オレもよく知らねーんだ」


 応戦した兵士や騎士達も、無我夢中で詳しくは知らないらしい。


リジェネ「あの魔物について的確に指示していたのは、一緒に戦ってくれた女性でしたよね」

リーヴェ「なら彼女に話を聞いてみよう」


 リーヴェ達は町のどこかにいるであろう娘を探し始めた。

 娘とエルピスは街路樹が建ち並ぶ大通りにいた。暖色系のレンガで構築された町並みの中、倒し損ねた敵がいないか確認していた様子で、妖精もそのまま同行させている。


リーヴェ「すまない、ちょっといいか?」

娘「ん? あ、さっきの……一緒に戦ってくれてありがとね」

リーヴェ「こちらこそ助かった」


 娘がこちらを振り返り、親し気に話しかけてきた。互いに自己紹介をする。


 娘の名前は「セレーネ・アンブレイス」と言った。クラスは妖精闘士(フェーゲリエ)である。

 改めて見るとこの国の人ではないらしく、褐色の肌にストロベリーブロンドの短髪。瞳の色はアッシュグレーで、足や腕、ヘソなどが露出した赤や黄の暖色系で統一されている衣服を着ていた。首には茜色の妖精石がはまったチョーカーをつけ、両手にはガントレット。身長はラソンと同じくらいだ。

 服装のせいもあるが、彼女のほうがリーヴェよりも肉つきがいいというか……胸が大きい。スレンダー体形のリーヴェとは全然違った。


 相棒の妖精の名は「エルピス」と言う。炎を彷彿とさせる美しい鬣をもったオスの虎獅子(ライガー)で、全身には見事な縞模様があり体毛の色は茜色だ。戦っている時とはうって変わって非常に大人しい。

 リーヴェはセレーネにアンデット達の情報を求めた。第2陣も接近して来ているとも伝える。


セレーネ「あいつ等はね、理性や知能は全然ないの。だから目的もなく大移動なんてしないよ」

リーヴェ「そうなのか?」

セレーネ「うん。コールファンテのほうは動くものを見つけると走って襲ってくるし、人を率先して襲うけどボーン系はそんなことないし」

ラソン「じゃあ、なんでまたこっちに向かって来てるんだよ」


 ラソンの疑問に、セレーネは顎に手を添えて考える素振りを見せた。エルピスのほうは、皆から距離を置いて静かにお座りしこちらを見つめている。態度に正反対の印象を受けるふたりだ。


セレーネ「よくわかんないけど、何か引き寄せるモノでもあるんじゃない?」

リジェネ「ええー、アンデットを引き寄せるものとか……勘弁して欲しいです」

セレーネ「あれ~、リジェネはこういうのダメ系なの」

リジェネ「普通に気味が悪いでしょう!!」


 セレーネの言葉に食って掛かるリジェネ。相当に恐ろしいようだった。まあ、襲撃の光景を見た後だから気持ちはわかる。リーヴェ自身もあの光景は2度と見たくないと思った。

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