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第21話 アンデットの脅威

 リーヴェ達が王都を出立し、魔物の遭遇に苦労していた頃。地上界、暗黒軍の駐留基地でのこと。


親衛隊A「デリス郷、お暑くないですか」

デリス郷「ええ、問題なくってよ」

親衛隊B「デリス郷、お飲み物をお持ちしましたっ」

デリス郷「ありがとう」

親衛隊C「デリス郷、新作の甘味でございます」

デリス郷「あら、美味しそうだこと。いただくわ」


 そこそこ広い1室に、大勢の親衛隊こと数多の男性陣に囲まれているデリス郷の姿があった。立派なソファに座る彼女に、次から次へと最上の奉仕が振舞われている。まるでホストクラブだ。少しでも好かれようとできうる範囲で着飾り、彼女が望むものを率先して叶えにいく男性達。ある意味では魔境と呼ぶに相応しい光景だった。


 男達の奉仕に、デリス郷は淑やか且つ妖艶な微笑みで応じていた。彼女が微笑むたびに、周囲から歓喜の声が上がる。

 もう一度言うが、一応ここは先遣部隊が駐留する前線基地だ。


親衛隊D「デリス郷、先ほど領地より最新の衣装が届きました。かなりの力作です」

デリス郷「まあ、嬉しい。後で確認させていただくわね」

親衛隊「我々も楽しみです!!」


 デリス郷のみならず、周りの男衆も嬉しそうだ。というかコイツら、なんでノコノコこんな所にまでついて来ているのだろう。ここにいる他の兵士達はまさにこの心中である。彼らにとっては、何故デリス郷が先遣部隊の指揮に選ばれたのか疑いたい気分だった。

 上機嫌な奉仕が続く中、唐突に扉をノックする音が室内に響いた。デリス郷が入室を許可する。


兵士「失礼致します! デリス郷、先方の内通者及び使者殿が到着なさいました」

デリス郷「わかったわ。下がりなさい」

兵士「はっ、失礼致します」


 手短に用件だけをやり取りして兵士が退出した。

 扉が完全に締まった後、デリス郷が優雅に起立する。親衛隊の1人が、この場に似つかわしくない彼女のセクシーな衣装の上に羽織るものを着せかけた。手鏡を取り出して化粧を整えるデリス郷。その間、親衛隊は彼女を見ない。

 デリス郷が手鏡をしまい、周囲を1度見回した。


デリス郷「さぁ、行くわよ」

親衛隊「仰せのままにっ」


 腰をくねらせ、美しく歩く彼女を先頭にして一同は移動を開始した。



 同じく基地内の1室。


デリス郷「お待たせいたしましたわ。この基地を預かるデリス領領主、アレイシア・シーズと申します」

使者「おお、貴殿が噂の……いやぁ、お美しい」

デリス郷「ふふっ、ありがとう。本題に入りましょうか」


 互いに交渉じみた会話が繰り広げられる。だが、結果はほぼ既に確定してるのだ。交渉自体は随分前から行われていて、後は互いの確認と意思を共有するだけである。


デリス郷「では、同盟の件は締結という方向でよろしいのね?」

使者「はい。首相からも承諾を得ております」


 話は決まった。次に互いの現状を情報交換する。先方のほうは大分良い塩梅のようだった。暗黒界側にとっては。

 一通りの会合が終わり、使者と内通者が基地を出ていく。内通者は引き続き両者の情報共有にいそしむこととなるのだ。デリス郷は安堵の息をこぼす。だがすぐに不機嫌な顔になり――。


デリス郷「ところで、ここにはもう1人指揮官がいるはずだけど?」


 デリス郷が兵士の1人を流し見る。視線を向けられた兵士は肩を震わせ頬をわずかに赤らめた。


兵士「はっ、エルヴ郷でしたら現在別件にて外出なされております」

デリス郷「すぐに探して呼び戻しなさい。あんまり遅いようなら迎えに行くとも伝えて」

兵士「はい。承知しました」


 兵士が敬礼して捜索に出ていく。手で髪を払うデリス郷。

 別件だというが、どうせ私用だろうと女の勘が告げていた。


デリス郷「まったく。いくら陛下の信頼が厚いからって……生意気な坊やだこと」



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 数日かけてようやっと「ハ・グネの町」にたどり着いたリーヴェ達。あの後も10回以上もエンカウントし、リーヴェはLv16、リジェネがLv17、ラソンはLv18になっていた。


リジェネ「はぁー、やっと着きましたね……」

リーヴェ「さて、まずは……」

女性「きゃああぁぁぁ!!」


 安心もつかの間、突然響いた女性の声。3人の表情が一気に切迫したものに変わる。


リーヴェ「皆、行くぞ」


 2人が応じるのと同時にリーヴェ達は走り出した。


 町の中心部まで来ると、人々が大量の魔物に襲われて逃げ惑っていた。

 魔物の種類は「ボーンソルバ」と「コールファンテ」。いわゆるアンデット魔物だ。外見の特徴は、ボーンソルバが骸骨の盾もち剣士で、コールファンテが屍の歩行兵である。それがパッと見で40~50体くらいいるので、悪寒が走るほどの地獄絵図になっていた。

 おまけにコールファンテのほうは、うめき声っぽい音を常に発していた。気味が悪すぎる。


リーヴェ「これは」

リジェネ「酷い」

ラソン「おいおい、こんなのいったい何処から」


 この魔物達は本来、砂漠方面の墓地・霊園地帯に出現する個体だ。ムートリーフ王国内で彼らの出現が確認されたことは過去に1度もない。移動してきたにしても距離的に不自然過ぎた。


ボーン「…………っ!!」

娘「やあぁっ」


 こちらに気づいたコールファンテ1体が向かってくるのを拳の一撃が阻止する。助けてくれたのは、リーヴェよりも小柄な女性だった。傍には炎を纏った立派な体躯の虎獅子精(フェー・ライガー)を連れている。

 彼女は短いスロトベリーブロンドの髪を振り乱し、短い掛け声を発しながら魔物の進行を妨害していた。少し離れた所には常駐の兵士達もいる。

 リーヴェ達は、驚愕で停止していた思考を引き戻し武器を構えた。


リーヴェ「とにかく加勢するぞっ」


 2人が応じると同時に敵陣へ突撃する。

 娘がリーヴェ達の参戦に気づき、応戦しながら声を張り上げた。


娘「こいつ等は炎と光に弱いの。後、コールファンテの視界に住人を入れないで!」

リーヴェ「わかった」

リジェネ「姉さん、聖天魔法はアンデットに有効だった筈です」


 聖天魔法の殆どはアンデット特攻を持っているのだ。

 リーヴェは頷き詠唱に入る。だが、詠唱中に死角からコールファンテが襲ってくる。標的を見つけたコールファンテは素早い。辛うじて躱すが詠唱が解除されてしまった。


リーヴェ(数が多すぎる)


 これでは詠唱時間の守備を仲間に頼むのも困難だ。

 ならばと、リーヴェは白羽天翔を使って高所まで移動する。周囲を確認。よし、敵はこない。気づく個体もいるが壁は登れないらしい。


リーヴェ「‐聖なる光の粒子よ。我が手に集いて邪を貫け‐ エルメキア・ランス」


 建物の屋上から光の槍を飛ばす。標的にしたコールファンテと周囲にいたボーンソルダ2体を瞬殺。続けて次弾の詠唱に入るリーヴェ。


 一方で下にいるラソンとリジェネは苦戦していた。

 ラソンが周囲によって来たボーンソルダ数体に翼閃斬を放つ。が、ダメージが薄く破損個所をすぐに再生されてしまった。この技は牽制目的で放つことも多いが、今回の魔物にはそれすら難しいようだ。

 思っていた以上にダメージが入らないし怯まない。魔物のレベルも少し高いようだった。

 リーヴェが魔法の効果射程ギリギリの位置に移動して、適度に治癒をかけてくれるのでなんとか継戦できる。


ラソン「くそっ、物理攻撃は効きづらいのか」

ラソン(魔法は使えねーし、どうしたら……)


 ボーンの攻撃をガードしながら考えるラソン。無属性で、しかも単体威力がやや落ちる範囲攻撃での一掃は無理か。攻撃力がアタッカー寄りでないのも大きい。なにか有効打はないものか。


リジェネ「懐迅槍! ぐっ……まだだ、颯針槍っ」

ラソン「もしかして。旋風連斬(せんぷうれんざん)

ボーン「ガガガッ」


 敵1体に風を帯びた刃による3連撃を叩き込む。本来は5連撃スキルだが、大剣のために攻撃回数が少ない。

 このスキルはLv14の時に覚えていたが、大剣での連撃はかなりの隙を生むのであまり多用したくなかった。特に敵が複数いる時は。しかもこっちは単体対象で、攻撃寄りのスキルだから牽制には向いていないという理由もある。

 風属性攻撃を受け、バラバラと崩れ落ちるボーンソルダ。再生することなく消滅する。やっぱりだ、とラソンは確信した。


ラソン「リジェネっ、属性技メインで攻撃しろ」

リジェネ「は、はいっ」



 リーヴェ達から少し離れた所で、娘と虎獅子精(フェー・ライガー)は奮戦していた。


娘「炎撃拳(えんげきけん)っ」

ボーン「ガガッ」


 ボーンソルダ1体に炎を纏わせた拳の右ストレートを叩き込んだ。HPが僅かだったボーンが倒される。補足すると、このスキルは確率で火傷を付与可能だ。

 続いて猛スピードで迫るコールファンテを、見事なミドルキックで弾き飛ばす。再び炎撃拳でとどめ。流れるように魔物の猛攻撃をさばいていった。


子供「わあぁぁー」

娘「エルピス、フォロー」

エルピス『ガヴッ』


 娘が子供を襲う魔物のもとに向かう。だが間に合わないと判断し、足の速い相棒に援護を頼む。

 エルピスは素早く反応し襲い来る魔物を体当たりで牽制。子供を咥えて退避した。子供を安全な場所まで運ぶため町の奥に走り去っていく。

 その間、娘は逃げまどう住民に呼びかけた。


娘「皆ぁ、町の広場へ! 兵士の人達が防衛線を張ってるからそこに避難して!」


 広場では残りの兵士や騎士たちが、炎を巧みに使って防衛エリアを設けている。名付けて「火炎防陣」とでも言おう。アンデットは炎を恐れて近づけないのだ。陽光さえあれば、防衛ももっと楽になるのだが。

 娘は繰り返し、避難誘導を行いながら応戦を続ける。それほど時をかけずに相棒が戻ってきた。防戦から攻勢に切り替える。


娘「エルピス回り込んで。行くよっ」

エルピス『ガーウッ』

娘「精獣拳(せいじゅうけん)!!」

コール「うがぁぁぁ」


 駆けながら相棒に呼びかけ、標的の反対側をとったエルピスと息を合わせて踏み込む。娘は腕を、エルピスは身体を捻って強靭な尾を合わせ敵にラリアットを繰り出した。コールファンテなので無属性でも効果があるし、この技は高火力だ。

 ドドーンッとエルピスが横に半回転しながら着地。だがその反動を利用して柔軟に方向転換し、次の敵に向かっていく。娘も負けじと地を蹴った。

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