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外伝15‐6話 伝説の継承

アネルセリア「ぜってぇ許さねえ。コイツをぶっ倒す、あんた達も手伝っとくれ」

リーヴェ「もちろんだ」

フランジュ「当然よ」

ランパード「このままじゃ気が収まらねぇしな」

リジェネ「はい、皆で戦いましょう」

アルラート「同感。行くよ!」


 各々に武器を抜き、眼前の強敵(ボス)「命を食むモノ」との戦いに挑む。

 敵は出現した場所から動かない。本体が根を張ってしまっているのか、下のほうは未だ地面の中に埋もれていた。露出した部分が無数の触手を出して暴れ狂っている。

 乱雑で力任せに叩きつけられる触手。ソレを掻い潜って一行は攻撃を繰り出す。


アネルセリア「いくよ。絆の歌(ラソ・カンツォーネ)


 演奏が始まる。基本の部分は同じだが、クローデリアのものよりも激しい旋律。

 彼女の勇ましさを孕んだ歌が響く。歌詞も微妙に違うのかもしれない。精霊言語なのでなんと言っているかはわからないがそんな気がした。

 その音色が仲間達を鼓舞し、全体の能力を大きく底上げする。


フランジュ「炎よ! 我の意志に応えよ」

ランパード「でりゃあっ」


 フランジュが炎の魔法を放ち、ランパードが大槌で敵の触手を潰す。

 リーヴェとアルラートも魔法で応戦。リジェネは上空から手薄な所を見定めて狙う。龍の火炎が敵の触手を焼き払った。

 攻防を繰り返す中で演奏が終わる。それと同時にアネルセリアが前に出た。触手が彼女を狙う。


アネルセリア「あたしはそこらの術師とは違うよ。アクエリアス・ウォー!!」

命を食むモノ「――ッ」

アネルセリア「ほらほらほらっ」


 この魔法は「タイダルウェーブ」の派生スキルだ。

 音色によって生み出された水の塊を刃の如く飛ばす。しかも条件を満たす事で追撃を連続して出せ、追撃が成功する度に任意の方向へステップ移動ができた。

 魔法陣は最初の発動時のみで追撃時は発生しない。図柄は3重円にクロスさせた剣と泡。


 ヒット&アウェイといった具合に、攻撃をしては右へ左へステップして回避。

 ステップする方向は任意に選べ、動作も早くて敵の攻撃がかすりもしない。むろんステップ移動をしないという選択肢も選べる。

 5連続で追撃を浴びせ、あっという間に敵の後方近くまで移動してしまう。


アネルセリア「ちっ、強化が切れちまった。さすがに6連撃目は不発か」

リジェネ「す、凄い。攻撃しながら避けてる」

アルラート「彼女は接近戦もこなせるんですね」


 基本的には回避で攻撃を防ぐ。だが、どうしても間に合わない時は水の障壁を作り出して防御(ガード)した。

 物理的な攻撃に弱いのは術師っぽい。それなのにガンガン前に出てしまう癖があった。おかげで防ぎきれずに少なからず傷を負ってしまう。


フランジュ「癒しの焔よ。彼の者を癒し給え」

アネルセリア「サンキュ」

フランジュ「気をつけて! 前に出すぎちゃダメよ」

アネルセリア「そんなの相手次第だろ。あたしぁ、後ろでコソコソしてるのは好かないんだよ」

ランパード「ガハハハッ。相変わらずの暴れっぷりだな」


 こいつは術者にしておくのがもったいない、と言いつつ武器を振るった。

 自己判断で的確に戦ってくれる2人の存在は大きい。仲間が分散している今は有難い戦力だ。彼らと協力して必死に敵の猛攻を食い止める。


リーヴェ「エルメキア・ランス」

アルラート「カオス・エクスキューション」


 2人の魔法が敵を容赦なく切り刻み貫く。

 それでも謎の存在は怯む様子がない。敵をむき出しにし、いよいよ狙いを定めてきた。それまでハチャメチャにぶん回していただけの触手が一行を集中攻撃する。

 こちらの攻撃はちゃんと通じているようだ。だが、どのくらい攻撃すればいい。倒せるのか?


リーヴェ(だが、此処で食い止めないと被害が……)


 本体から伸びる手足は消してもまた生えてきた。

 鞭のようにしなり、無尽蔵に生え変わるのではキリがない。


アネルセリア「こう数が多いと埒が明かないね」

アネルセリア(見た感じ、魔法のほうが効いてるみたいだけどコレじゃあ)


 どうにかして弱点を見つけるか、何かしらの手を考えないと。

 本体に大きなダメージを与えるにはどうしたらいいか。奥義でもみるか。いや、現段階で行使するのは考えたい所だ。

 奥義は一度放つと再度放てるまでに時間がかかる。もしも効果がなかったら打ち損だろう。


ランパード「セリちゃん、上!」


 鬼気迫る声が届く。ハッと上を見上げれば複数の触手が間近まで迫っていた。

 アネルセリアはやられるものかと楽器を掻き鳴らす。


アネルセリア「ブリザードストームッ」


 激しく奏でられた音色に呼応し、吹雪が術者の周囲に壁を形成する。

 この魔法も派生スキルだ。足元に浮かび上がった魔法陣は、ひし形の中に氷の結晶と暴風の図。

 こいつには限界まで音色を鳴らし続けて壁を持続させる追加効果がある。それだけでなく、彼女は壁を出現させたままの状態で移動を始めた。

 吹雪の壁に触れた敵が、接触した部位から凍結していく。


リジェネ(自分から当たりに行ってる)


 魔法を扱う者とは思えない行動だ。打たれ強くないのに敵に向かっていくとは。さっきからずっと思っていたが、何故前へ前へ行こうとするのだろうか。

 しかも、誰がなんと言おうが戦い方を改める気はないらしい。


 魔法を継続状態で突撃しながらアネルセリアは策を考える。

 すると、自分の奏でる音に混じって何かが聞こえた。最初は勘違いかとも思えたが、敵に近づく度に不思議な音色が耳に届く。

 他の者には聞こえていないようだから、厳密には「音」ではないかもしれない。


アネルセリア(気の所為、じゃない!)


 そう感じた瞬間、彼女は叫んでいた。


アネルセリア「皆、少しの間あたしを守っとくれっ」

全員「わかった」


 足を止めた彼女は瞼を閉じて意識を研ぎ澄ませる。

 急に動きを止め無防備な彼女を敵が狙うのは必然。攻撃が集中するのを仲間達で受け止めた。その間にアネルセリアは音として認識した何かを探っていく。

 何か、大切な事を伝えている。そんな気がしてならない。


アネルセリア「…………」

命を食むモノ「――ッ!!」

リーヴェ「させるか」

リジェネ「颯針槍」

フランジュ「せいっ」

ランパード「どりゃあっ」


 仲間達の息が合った防衛が彼女を守る。

 そんな中、焦る気持ちを必死に鎮めて探り続けた。

 旋律のように聞こえるコレはなんだんだ。いったい何を伝えようとしている。


 音色のようなコレは……マナか。

 マナが互いに干渉しあって振動のようなものを発している。属性は多分、炎、水、地、風の4つ。炎のマナの気配が若干強く感じるような。

 アネルセリアの感性が、マナから生じた特殊な音色から情報を読み取る。


アネルセリア「――ッ!?」


 なるほど、そういう事か。

 ようやくわかった。この音色が伝えようとした切り札を!!


ランパード「おい、まだかっ」

アネルセリア「いいや。フランジュ、ランパード! ここからが反撃だよ」

フランジュ「えっ」


 2人の名を呼び、たった今感じたモノを説明する。

 音色を発していたマナ。それは取り込まれた精霊王と守護者の存在だ。

 彼らが伝えてくれた。この敵の力を弱め、こちらに勝利を呼び込む方策を。ソレを行うために2人の力が必要なのである。3人の精霊人の力を結集させる必要があった。


フランジュ「なるほど。私達が起爆剤という訳ね」

ランパード「波長を合わせ、外部からの刺激で内部のマナを爆発させるのか」

アネルセリア「ああ。そのためにもあたしらは互いの意志を合わせる必要がある」


 となれば、集中している間の護衛が必要だろう。

 考え方も性格も全く違う3人が息を合わせるのだ。当然だが集中している間は動けない。そんな彼らをリーヴェ達が守る。

 一ヶ所に集まり、集中力を高め、それぞれの意志と力を重ねていく。それはアネルセリアの持つ楽器に込められた。


アネルセリア「いくぜ」

3人「これが私達の力だあぁぁっ!!」


 全身全霊を込めた音色が敵を貫く。音波を浴びた瞬間に奴の全身から7色の炎が立ち昇った。精霊王の力を帯び、強化された浄化の炎だ。

 全身を焼き焦がす熱に悲鳴を上げる黒き存在。力が削がれているのか、輪郭がぼやけ端が崩れかかっている。今なら一撃を加えるだけで倒せそうだ。


リーヴェ「決めてくれ、アネルセリアさん!」

アネルセリア「おうよ。今こそあたしの奥義が鳴り響くぜ」

フランジュ「私達も援護するわ」

ランパード「当然よぉ。これで締めといこうじゃねぇか」


 仲間達の支援を受けてアネルセリアがギィーンと楽器を鳴らす。

 最高に高まった力が、この高揚が、己の心に秘めたすべてを乗せて贈る鎮魂歌(レクイエム)


アネルセリア「イルマーレ・マードレ!!」

命食むモノ「ギャアァァァッ」


 母なる海をイメージした曲。激しさと包み込むような優しさを宿す旋律。

 その音色とともに水流を操り、音と水の見事な演劇で敵を翻弄し攻撃する。音楽に合わせて水が様々な形をとっていた。

 狙った敵を抱き、決して離さない水泡の乱舞。これが彼女の奥義だ。


 アネルセリアが放った一撃を受け、精霊界を脅かした災厄は浄化された。

 激戦の末に彼らは「命食むモノ」との戦いに決着をつけたのである。断末魔の叫びを上げ美しい光の粒へと変わっていく。

 精霊界全土に光の波紋が広がる。新たな命を祝福する光だ。そして脅威が去った事を知らせるものでもあった。


 程なくして散り散りになっていた仲間達が集合する。

 黒き存在だったソレは、ニーファバオムとなり、そして取り込まれた者らはひとつの存在へと形を変えていく。その様を最初から、あるいは途中から見た一行は目を見開いた。

 人の形をとったその人物は……なんと木の精・ファオムだったのだ。


ファオム「災いは退きました。ありがとう」

アネルセリア「アンタは、師匠なのか? それとも精霊王?」


 ファオムは静かに首を振る。


ファオム「いいえ。どちらでもありません」

フランジュ「やっぱり皆死んでしまったの?」

ファオム「…………。ですが彼らの魂は、マナは私の中に存在している」

ランパード「どういう事でい」


 木の精・ファオムは語った。

 命を食むモノに襲われ、特殊な死に方をしてしまった5人の精霊人。

 浄化されても自然に帰る事が叶わなくなった存在。肉体を復活させる事も叶わず、意識だけがそこに取り残される。

 だが、ニーファバオムが彼らの残された意思と僅かなマナに力を与えた。これにより樹木を守る存在としての形を得たという。


アネルセリア「結局は別人って事か」

ファオム「ええ。……そうだ、皆さんに彼らからの最後の贈り物があります」

3人「んん?」


 己の中に宿る意思達の想いを今、この場に召喚する。

 木の精の手から生み出された光り輝くモノ。そう、これは精霊王が託す印だ。それが3人の手元にふわりと渡される。


ファオム「最後にこの言葉を贈ろう。尊き命らを救いし汝らに、新たなる精霊王の任を与える」 


 まるで別の誰かが乗り移ったかの如く告げられた言葉。

 試練を得ずして王の地位を与えられた3人。精霊王として同期となった者達。これが後に伝説として語られる精霊王の物語。


アネルセリア「あたしが精霊王かぁ」

フランジュ「そうよ。王になった以上、そのはっちゃけた服装は改めなさい」

アネルセリア「ええっ!?」

フランジュ「ええっ、じゃない。言葉遣いのほうもよ」

アネルセリア「……はいはい」

フランジュ「本当にわかったのかしら」

ランパード「ガハハッ! 精霊王になった後も、セリちゃんの手綱は変わらず握りそうだなぁ」


 印と王の座を託されたアネルセリアはふと背後を振り返る。

 だが、もうそこにリーヴェ達の姿はない。


アネルセリア(いつの間に行っちまったんだ?)


 王継承の段階で彼らの身体と魂は少しずつ引き戻されていく。一行は遠のく景色の下で歩き出した精霊の王の姿をただ見つめた。


アネルセリア「不思議な連中だったな」


 空をを見上げ、彼女はそう呟く。旅立って行った戦友を思って――。

 アネルセリアがパーティから離脱。そして物語をすべて見た事により、具現化リストに「アネルセリア」が追加された。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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