第139話 危険が増した道中
ラソン「オレは王国がいいと思うな。状況も気になる」
セレーネ「ええっ、アタシは断然帝国! 皇帝陛下にお礼言わないとっ」
セレーネ(それ以外もあるけど……。まったくどうして戦場に)
協力してくれたのは有難いけど、まさか戦場に乗り込んで来るとは思っていなかったとセレーネは思う。てっきり軍を出してくれるとか
リジェネ「けど、最初に話をしたのは国王陛下です。皇帝陛下はまだ戻っていない可能性がありますし」
クローデリア「ですが国境は空いているのでしょうか? 確か封鎖されている筈でしたわよねぇ」
ラソン「だから王国だろう!」
セレーネ「ううん。帝国っ」
リーヴェ「……おいおい」
予想外の展開だ。ここまで揉めるとは想像してなかった。
やや興奮気味の仲間達を宥めて話を続ける。どちらも引く気はない様子だ。両方に行く事もできるが、行く順番は決めなくてはならない。争いになった原因を解決しなければ意味がない上、今後に起きる事を話し合わないといけないだろう。
神樹の問題は皆で考えないと。いい加減に話し合わないとならない。
リーヴェ「わかった、ならこうしよう。まず王国に行き、その後帝国にも報告へ向かう」
2人「…………」
リーヴェ「それでいいか?」
ラソン「あ、ああ」
セレーネ「わかった」
リジェネ「ふぅ、やっと決まりましたね」
安堵しているリジェネ達。話が終わった所へニクスが戻ってくる。本当にいいタイミングで帰って来たな。戻って来た彼が「話は終わったか」と聞いてきたので頷いて答えた。
目的地を定め、一行は歩き始める。
首都を燃やした炎は無事に消化され、現在は戻って来た人々による復興活動が始まっている。戻って来たと言っても、殆どが戦場に駆り出されていた兵士なのだが。火事による被害は北側が酷い。
リーヴェ達が止まった宿も、被害のなかった南側で、且つ宿屋の息子であった兵士が代行していた。止まっている客も復興活動に集まった兵士が多い。議事堂はいろいろとヤバい物資が多くて、整理が終わるまで仮宿舎にするのは難しいのだ。
ラソン「無事に消えてよかったな」
セレーネ「うん。クローデリアは大活躍だったよね」
クローデリア「えへんっ、ですぅ」
そう、戻ってきた一行がまず行ったのは消火活動の手伝いである。
まだ若干炎が収まっていない区画を奔走した。特にクローデリアの活躍は凄まじく、オアシスの水のみならず空気中の水分までもを操って雨を降らせたのだ。規模は魔法でできる範囲だったが。
クローデリアにとって砂漠という最悪の環境下でよくやり遂げたものである。
リーヴェ「……大分燃えてしまったな」
リーヴェ(くそっ、もっと早く止められていれば)
復興を手伝いたい気持ちはあるが、今はそれをしている暇はない。他にやるべき事を優先させねば。
リーヴェは僅かに俯き、周りに悟られぬよう手に力を込めた。服の一部を握り込んでやるせなさを飲みこむ。
この世界(惑星)にただ1人の御子なのに、この程度の力しかないとは。力を持っていてもできない事が多すぎる悔しさ。無力ではないが、力の足りなさは十分に感じていた。
戦争なんてダメだ。今は、こんな事している場合じゃなかったのに……。
――ヒトは愚か。彼らは滅びを望んでいる。
リーヴェ「っ!?」
唐突に思い浮かんだ言葉。不思議とよく馴染む感覚。
なんだこれは、嫌な感じがする。一瞬、自分の声に聞こえたのは気のせいだったのか。いや、そんな筈はない。絶対に。
背筋が凍るような感覚を覚えて思わず足を止める。
リジェネ「姉さん? どうしたんですか」
ラソン「おーい。行かねーのかよ」
急に足を止めた彼女を仲間達が呼ぶ。
リーヴェは今しがた感じた感覚を強引に振り払った。
リーヴェ「ああ、なんでもない。今行く」
きっと気の所為だろう。今はそう思って先に進むのだ。
仲間達のもとへ戻り、改めて首都ラ・パルタを立つのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一行が首都を旅立った後。暗黒界、シュバルツブルグの城内。王の間では。
陛下「いったい何をしておるのだ。まだアスタリスクは見つからんと?」
アルフレド郷「はっ、申し訳御座いません」
この間にいるのは彼ら2人のみ。
アルフレド郷は陛下の前で膝をついて謝罪していた。イラついた様子の陛下は立った姿勢で、腕を組み足を鳴らしている。
陛下「もはや我がもとにいる幹部はお主とホレスト郷のみ。計画の殆どが邪魔者によって露と消えた今、残る手はアレを用いる他ないのだぞ」
正確にはデリス郷もこちら側の筈だが、彼女は今となっては役立たずだ。内々に始末するつもりでいたのだ。それをまさかベリーニ郷が防ごうとは思わなかった。
いったい何処で情報が漏れたのか知らぬが、敗者である彼もお払い箱なのは事実。どっちみち結果は変わらないと言ってもいい。
アルフレド郷「左様で。しかし、恐れながらあの剣はある王族にしか使えないとも聞いております」
例え手に入れても使えないのでは、と言外に告げているのだ。さすがに神滅剣アスタリスクの情報は得ているようである。
彼らはいったい、剣を何に使うつもりなのか……。
陛下「くくく……、詰めが甘いぞ」
アルフレド郷「陛下、それはどういう?」
低く笑った彼に怪訝な顔を向けるアルフレド郷。
そんな彼に陛下は天井を仰いで口を開く。
陛下「彼の剣はかつて英雄と呼ばれし男が使ったという。地上界の民であったにも関わらず、な」
アルフレド郷「であるならば……」
陛下「うむ。天の王族でない者でも使う術が、何かしらあるという事だ」
アルフレド郷「して、その方法とは?」
問いを投じながら思わず唾を飲む。
陛下が考える思惑の真意はわからぬ。彼の計画の全貌も。しかし、神の力が宿るという剣があれば我々を苦しめる恐怖の源を消し去るのも容易の筈だ。最強の力を得る事さえも。
これは是非とも聞いておきたいと感じた。だが――。
陛下「ふん、所詮は本体がなければ意味のない事よ。急ぎ見つけるのだ!」
アルフレド郷「っ!? 御意のままに」
鋭い一声を投じられ従うしかなかった。結局、質問の答えは聞けずじまいに終わる。
部屋を退室した直後、またもやホレスト郷とすれ違う。いつぞやを思い出す状況に心底嫌気がさしつつ、アルフレド郷は手短かに会釈をして通り過ぎた。
アルフレド郷と入れ違いに入室したホレスト郷。
陛下と対面し、会釈をした後に「お願いがあります」と申し出る。単刀直入に言い出した彼の様子に疑問を抱きつつもそれを許す。
しかしその前に、と陛下はホレスト郷にある問いを投じた。
陛下「神滅剣アスタリスクを王族以外が用いる術を知っているか?」
ホレスト郷「ん? 何故、そのような事をお聞きになるのです」
とぼけた調子で返したホレスト郷に陛下は笑い声をあげる。
陛下「予が知らぬと思うな。お前は知っている筈だ、隠さず申せ」
ホレスト郷「…………」
真顔で沈黙する彼に、陛下は鋭い視線を閉じたまま口を開く。
陛下「何とか言わぬか。あまり予を待たせるでないぞ」
ホレスト郷「…………」
陛下「まだ黙秘すると……ならばっ」
言うが早いか、陛下の凄みが増していく。みるみると強敵感の溢れる気配を発していった。見ているだけで怖気づきそうな程だ。これ以上黙ってやり過ごすのは無理か。
命が惜しかったホレスト郷は、ふぅとひと息吐いた後で観念した。
ホレスト郷「やれやれ、何処でお知りになったのか。いいでしょう」
陛下「早く申せ」
ホレスト郷「そんなに焦らずともお教えしますよ。といってもボク自身、そこまで詳しくはないのですが……」
陛下「ええいっ、もったいぶるでない!」
前置きの長いホレスト郷に彼は激怒を示す。
いよいよ身が危うくなった彼が慌てて二の句を言い放つ。
ホレスト郷「かつての英雄は儀式の地にて、さる王族の祖から一時的な加護を得たと言われています」
陛下「ほう。それでこの儀式の地とやらは何処にあるのだ?」
その地へ赴けば自分も剣を扱う術を得られるだろう。これは利用しない手はない。しかし、ホレスト郷は大げさに落胆した素振りを見せて……。
ホレスト郷「残念ながらそれは叶いませんよ。儀式の地は天空界にありますから」
陛下もご存じでしょう、とホレスト郷は怪しく囁いた。
彼の言葉を聞いて表情を曇らせる。期待していたのに残念でしかない。
陛下「うーむ。どうすればよいものか……」
悩みどころだ。今彼の地に行く事はできない。
計画の順序を誤ったか? いや、まだ他に手が残っていないとは限らないぞ。考えるのだ、手を。
ホレスト郷「ご安心を。ボクに手があります」
陛下「ほう、如何にするつもりだ?」
ホレスト郷「はい。では少々お耳を拝借して……」
ホレスト郷は近寄り、陛下に耳打ちする。彼の案を聞いてほくそ笑む。それは耳打ちした当人も同じだった。
陛下の用件が済み、ホレスト郷が願いを申し出る。その願いを快く受け入れるのであった。
最後に、回収してきた部品を献上して退室。1人残った王の様子には只ならぬモノがチラついていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
首都ラ・パルタを出立して王都パラムエールを目指す。道中のクローロン平原を歩いていた最中、初めて見る魔物と遭遇した。前に見た魔物も一緒にいる。
魔物「ワイズプラント」×2、「ブルーメホーク」×2と「ヘルバウルフ」×2が出現。
ワイズプラントはヘクセプラントが進化した個体。
大きさも後方で魔法を使う所も特に変わった様子はない、ように見える。強いて言うなら体色がやや変わっている程度。
しかし、侮るべからず。
魔物「♪~♪」
ラソン「うおっ! あいつ魔法の威力が上がってるぞ」
リジェネ「それに種類も増えてるみたいです」
以前は風系しか使ってこなかった。だが今は、水や光系も放ってくる。厄介なのはそこだけではない。
セレーネ「炎撃拳! ……効いてないっ」
魔物「♪」
リーヴェ「奴は炎の耐性を身に着けたのか」
そう、奴は風だけでなく炎にも耐性を持ったのだ。毒攻撃を使ってこなくなった代わりに常時HPを回復までしてしまう。
魔物の魔法攻撃にばかり気を取られていると、ブルーメホークが不意を衝く。こいつはエルブホークの突然変異種だ。こちらはやや大きくなった体躯で、回避力を若干犠牲にする代わりに攻撃力と移動速度を強化している。
クローデリア「スピラ・ケラヴノス」
セレーネ「今よ。お願い効いて!」
セレーネが空襲槌蓮を叩き込む。
炎属性の攻撃を受けて敵の羽毛が燃え上がった。こちらは弱点が変わっていないようだ。しかし――。
セレーネ「きゃあぁぁっ」
リジェネ「燃えた状態で突っ込んできます!」
ニクス「これは……」
燃え上がる奴は身体から毒素をまき散らす。奴の標的になったのは、最も精神力の低い相手=ニクスだ。進行方向にいるセレーネとリジェネも巻き込まれる。
負の活力の影響を受け強化された魔物らは非常に手強かった。
戦力差のあるヘルバウルフは早々に倒せたが、他の4体には手こずる羽目になる。
魔法を何とか防ぎMPが一定値を下回り体当たりを多用するプラント。比較的撃たれ弱いこいつ等から先に処理して、この戦いを切り抜けるのだった。
ここに来て魔物の勢力が増すとは予想外。道中の危険が増した事に不安を覚える。
リーヴェ(ここにも戦争の影響が……)
世界の異変もあるだろが、戦場が近かったのも影響しているに違いない。
早く世界を、神樹をあるべき姿に戻さなくては。魔物の脅威が消える訳ではないが今以上に酷くなる事はない筈だ。
強くなった魔物の脅威を感じつつも一行は歩みを進めた。
う~む……どこかに矛盾が生まれていそうで怖いです。書けば書くほどにボロが出そう……。著者は投稿する寸前まで不安に見舞われております。
ふとしたと時に「これって面白いのか?」と自問したりもして……。
今後も、どうか応援をよろしくお願いします!!




