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第126話 戦争を終わらせる為に

 【炎照の壁宝】※条件、避難地へ到達後~戦争の終結まで。作中では未回収。

 避難地で過ごす中、あちらこちらへ奔走する人々を手伝う事にした一行。物資の管理をしている人が頭を抱えている現場に出くわす。


リーヴェ「困りごとか?」

男性「ああ。実は炎照球の原料が切れちまったんだ」

リーヴェ「原料って何なんだ」

男性「イッルジオ渓谷で採掘できる炎照壁の一部さ」


 男の話では岩壁すべてが炎照石でできた一帯があるらしい。共和国内の名所と呼ばれる場所でもある。赤く輝く外観は非常に美しいとか。

 聞けば、普段取りに行っている連中が負傷してしまったようだ。人手が足りないと聞いたリーヴェ達は代わりに採掘する事にした。

 早速、目的の素材を求めてイッルジオ渓谷へと向かう。



 馬車を借り、道中はできる限り慎重に進む。先日まで派手にやり合っていたので、最新の注意を払わなければ。

 分かれ道の多い入り組んだ渓谷内を移動し、印をつけて貰った地図を頼りに目的地を目指す。途中で何度か魔物とも出くわしたが問題なく対処。もしも暗黒兵だったら隠れてやり過ごした。

 

 炎照球の原料となる炎柱壁は、ゼーレの塔とすり鉢穴の密集地を線でつないだ中間。少し南にズレた所にあった。上空から見るとU字になっている岩壁の真ん中だ。

 そのため、右を見ても左を見て赤い輝きが目に移る。聞いていた通りの綺麗な場所だった。

 リーヴェは名所「炎柱壁(えんちゅうへき)」を図鑑に記録する。


リーヴェ「ここが目的地だな」

セレーネ「あたし生で見るの初めて」

ラソン「来た事なかったのか?」

セレーネ「まぁね。特に最近は政府が立ち入りを禁止してるから」


 まぁ、暗黒人がいるような場所に人が近づいたら不味いか。

 それでも炎照石不足にならなかったのは、政府が特別に許可した人々が一部を横流ししてたからだ。本当は宜しくない行為だが仕方のない部分があった。国が正常に戻れば、そんな事をする必要はなくなるだろう。

 ここに来てカンディテーレ共和国の現状を知る一行である。


リジェネ「さぁ、見つからない内に用を済ませてしまいましょう」

リーヴェ「ああ」


 短く答え、各自で採掘作業に入った。

 採掘場と言っても深い穴が続いている訳ではない。壁面の形に添って平坦に削って行く。熱を発生させる特性があるので、穴上に掘り進み万が一があってはならないからだ。

 いくら触れる程度の熱でも危険がないとは限らないのである。


 交代で見張りをし、およそ1時間ほどで必要な作業を終わらせた。あまり時間をかけ過ぎては危険が増す。必要最低限の量を確保して馬車に積み込み、その場を後にした。

 帰りも同様に移動していき、無事に見つかる事もなく避難地まで帰還。馬車から下ろした荷をもって依頼人の所まで向かう。


ラソン「おーい、持って来たぞ」

男性「おお、ありがとう。どれ確認させて貰うよ」

リーヴェ「もちろんだ。……足りるか?」


 荷物を依頼人に見せて問いかけた。中身を確認した彼が満足そうに頷く。


男性「ああ十分だ。本当に助かったよ」


 そういって彼が報酬を渡す。金銭と晶砂、香辛料を入手した。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 適度な休憩を終えて再び集合した一行。

 全員がいるのを確認したリーヴェはニクスに向けて言葉を投じる。本題である今後の行動を話す前に聞きたい事があるからだ。


リーヴェ「気になったんだが、王族は本当に毒素が原因で乱心したのか?」

ニクス「どういう事だ」


 リーヴェは休憩中に考えて内容を伝えた。

 謎の毒素によって人々がおかしくなったのはわかる。だが毒素の蔓延している場所に、王族が立ち入るものだろうか。仮に王族が近づく場所に毒素が発生したとして、それを放置する事があり得るのだろうかと。


 王族ともなれば、外出時に護衛を連れ歩くのは当たり前。護衛がいながら危険を察知できないのはおかしい。出先で影響を受けたというほうが可能性は高いが、護衛される立場の者が自由過ぎる筈もないだろう。

 ならば城で例の毒素が蔓延しているのか。


ラソン「言われてみればそうだな。どうなんだ?」

ニクス「あり得ない。陛下乱心の後城を訪れた事があるが、少なくとも普段行き来する場所にはなかった」

クローデリア「普段行き来する場所には?」


 気になる言い方だ。宮殿や城につきものの隠し通路などの類を言っているのだろうか。それとも……。

 その疑問にはすぐ答えが返される。


ニクス「隠し通路とは違うが、城のどこかに王族だけが入れる部屋があるそうだ」


 正確には王に選ばれた者だが。


リジェネ「何をする場所なんですか」

ニクス「詳しくは知らん。何らかの儀式をする場所らしい」


 それも果たして本当かどうか。

 城のどこかに儀式をする場所があるのは聞いた事がある。しかし、それが王族だけが入れる部屋と同列かまでは知らない。状況から考えてそう思うだけだ。


リーヴェ「そうか。なら、王の乱心が毒素以外の可能性はないのか」

ニクス「すまん。他に心辺りはない」


 正直に言ってニクスはホレスト郷が一枚絡んでいるのでは、と思っている。だがそれは、あくまで仮定の話だ。陛下がおかしくなる前の言動や行動は大人しいものだったし、何よりも証拠がない。

 だからこそ今まで誰も追及できなかった。最も近しい位置にいたアルフレド郷でさえも。

 特に大した情報を得られなかったのを残念に思いつつ、リーヴェは話題を切り替えた。


リーヴェ「では今後の事を考えよう」


 まずは現状の確認だ。

 クルイークらの証言をもとに、一行が捕らわれてから数日が立っている。ここは驚くべき所ではない。投獄中に1日くらいは経っているだろうし、移動距離でも日数を消費する。

 問題はこの数日でどれだけ状況が悪化したかだ。戦場のほうはどうなっているのか、目的の人物である代表のその後の行方が知りたい。


ラソン「じゃ、まずはオレからだな」


 そう言ってラソンは、休憩中にクライスを戦場に飛ばしたと告げた。

 戦場の攻撃が飛んでこない位置での偵察なので、細かい所まではわからないと前推ししておく。その事を踏まえて判明したのは、大きく分けて3つ。


 まずは敵=カンディテーレと暗黒人の連合軍は、一時期押していたが引き戻されて砂漠で戦っているという事。軍事力では2番目に強い王国軍はともかく、公国側も兵が後退しているのは意外だった。

 それに関してはクルイークが補足を行う。


クルイーク「公国側は湿原での戦いに慣れてる。例の怪物の出現域に敵を誘い込んだという話だ」

リーヴェ「奴か……」


 嫌な思い出が蘇る。

 あの時リーヴェはまともに対峙できず、仲間を危険に晒してしまった。


リジェネ「でも味方側にも被害が出るんじゃ」

熱砂の牙「いえ、アチラさんは弱点や習性を熟知しています。ラジアスの花粉を全兵に常備させておけば問題ないかと」


 ラジアスの花は、香水の街コロ近くに群生している妖精の加護を受けた花だ。ただし、市販されている花粉玉は人口的に栽培された花が原料である。天然ものは貴重なので素材にはできなかったのだ。

 人口栽培で作った素材で大丈夫なのかと思うかもしれない。でも大丈夫だ。最後の行程に「妖精参り」というモノがある。


 妖精参りとは文字通り、妖精の加護を得るために指定の場所へ花を預けるのだ。預けると言っても受取人がいる訳ではない。ただ指定の場所に並べて置いておくだけだ。

 そうすると、数日後に取りに行った時には妖精が加護を与えてくれている。指定の場所を花園の近くにする事で花が枯れる心配はない。花の妖精が花の命を見捨てる訳がないのだ。

 そして、受け取りに来た時に妖精達へ感謝の品を捧げて帰る。昔からやっている儀式だった。


 さて、話を戻そう。

 クルイークらから細かい状況を聞き、ラソンの話は続く。


ラソン「まぁ、本当に追い詰められて後退してるのかはわからねぇ。とにかく、今は全勢力が砂漠に集結してるって事だ」

リーヴェ「なるほど」

ラソン「ただ少し気になる事が……」


 全員が意識を向ける。彼の話はまだ終わってなかった。

 気になる事というのは、戦場に漂う黒い気配だ。一行は戦場を突破した時にはまだなかった靄のようなモノが視界を塞いできたという。

 その気配には皆が思い至った。負の活力(エネルギー)だ。ラソンも間違いないだろうと肯定を示す。


 戦場には大勢の死者が出ているだろう。

 死者の存在は人に様々なモノをもたらす。その殆どはよくない感情だ。しかも原因は戦争によるもので日常のソレとは比較にならない。


リーヴェ「まさに奴らの思うツボか」

ニクス「……悔しいが、ここまで拡大してしまっては手に追えんな」


 ラソンの話を聞く限りでは相当の事態になっている。直視できない程の惨状が広がっているだろう。情報からの想像でしかないが、戦場に充満する負の活力は計り知れない

 

ニクス「実際に見た訳ではないが、もはや暗黒人(われわれ)の吸収限度を超える事態になっているのは明白だ」

リーヴェ「ならば私の力で……」

リジェネ「ダメですよ! さすがに規模が違い過ぎます」

セレーネ「そうよね。あたしが言うのもなんだけど、この国相当に広いのよ」


 戦場となっている北側の砂漠だけでいったいどれだけあるか。


ラソン「それ以前に、できるモノなのか?」


 アラビアンサハルの時とは訳が違うのだ。あの時と違うものがあるとすれば、ただひとつ――。

 リーヴェは腰に差した剣の柄に触れた。確かに不安はある。この剣に宿る補助を合わせてもどこまでやれるか。それはやってみないとわからない事だった。


リーヴェ「わからない。今までこんな規模の浄化はした事がないから……」


 範囲を一点ではなく、広く扱うのはかなり疲れる。そう簡単に倒れる気はないが、どこまで身体が持つか自分でも判断がつかない。

 要領を得ない彼女の言葉に不安しか湧かない仲間達。頼るべきではないのは明白だろう。しかし、浄化以外での消し方なんて誰も知らなかった。


セレーネ「えっと……負の活力の事は各自考えて行くとして、最後の問題を片づけない?」

クローデリア「そうですねぇ。もしかしたら中心人物を止めれば、解決するかもしれませんし」


 2人が強引に話題を切り替えて次の議題に移る。

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