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第72話 各々の休息

 唐突に脳裏へ響いた声は、暗示しているようで酷く不気味だった。


リーヴェ「誰なんだ。いったい何の事を言ってる」

???「…………」

リーヴェ(ん、やはり空耳だったのか?)


 姿を見せない声の主は、今もリーヴェの背後に立っている。突然の沈黙に軽い恐怖を感じていると、一層低い声音で部屋中に声が響いた。


???「今はまだ、その時ではない。でも必ず、必ず」



リーヴェ「はっ……夢?」


 額や頬を濡らす汗を拭い、リーヴェは身を起こして周囲を見回す。誰もいない。時刻を確認すると夕刻だった。今しがたまで見ていたのは夢、だったのか。随分と鮮明に覚えている。

 結局、アレは誰だったんだ。声の感じは同じ年頃の女性らしかった。


リーヴェ(あの声、以前にも聞いた事がある)


 王都パラムエールの国立資料館で聞いた声にそっくりだ。マナの声とも違うし、既視感を覚えたのにも心当たりが思い至らない。

 声の口ぶりからして、自分に何かを思い出させようとしているようにも感じる。まだ忘れている事があるというのか。それに何故今なんだ。


リーヴェ(やっぱり思い出せない)

リーヴェ「なんであんな夢を見たんだ……」


 瞼を半ば伏せ、深く息を吐き出す。

 すると部屋の扉をノックする音が響いた。寝具に座り込んだまま扉に目を向ける。


リジェネ「姉さん、起きてますか」

リーヴェ「リジェネか。ちょっと待ってくれ」


 リーヴェは手早く身支度を整えて扉へ向かいリジェネと対面した。ちなみに、リーヴェだけは部屋の都合で1人だ。

 よく眠れたのか、すっきりした彼の様子に安堵を覚えながら用事を聞く。


リジェネ「体力も回復したので、ちょっと外の様子でも見ようかと思って」


 一緒に行かないか、と誘われる。

 気分を変えたい気分だったので、リジェネの誘いを受ける事にして連れ立って歩き始めた。移動中、他の皆の様子は知っているかと尋ねる。どうせなら皆で見て回りたいがまだ休んでいる可能性もあるな。


 その辺はリジェネも既に試みたらしく、同室のラソンは起きていたが断られ、別室にいるセレーネとクローデリアは返事がなかった。何度もノックする事はせずにそっと立ち去ったらしい。

 2人は宿屋の近場を見に行くべく、外へと繰り出した。



 リジェネの誘いを断り、1人部屋に残ったラソンはクライスの怪我の様子を見ていた。警察署にいた時、警官に頼んで医者を呼んで貰い、彼が事情聴取を受けている間に治療を受けたのだ。

 さすがに今回は、自分1人の手当てでは心もとないと感じたからである。

 クライスは、ふかふかのクッションの上に乗って身体を休めていた。起きてはいる。


ラソン「たくっ、あんな無茶して心配したんだぞ」

クライス『クルル……』


 クライスは相棒の顔を見上げて鳴いた。首をひねり、傾げているように見えるがちょっと可愛い。

 このくらい大した怪我じゃない、と言われている気がしてラソンは口調を強くする。


ラソン「もう絶対、無茶は止めてくれよ。オマエが帰ってこなかったらと思って、怖かったんだからな」

クルイス『キィ』

ラソン「そりゃ助かったけどさ。もっと自分の身体を大事にしないとダメだぞ」

クルイス『キキィ』

ラソン「よしよし、今回はホントありがとな」


 ラソンはクライスの頭を撫でて一緒に休むことにした。

 オレももっと頑張らないとな。王族として、あの少人数を上手く誘導できない不甲斐なさに反省する。



 町へ繰り出した2人は、止まっている宿屋のある西エリアを散策していた。

 外から来た人々がすぐに立ち寄る西と南側は、人通りも多く市場もあって非常に賑やかだ。夕刻という時間帯でありながらも活気がある。


 豊かな彩色の光源が照らす中を歩き、露店に並ぶ品々や不安な中で明るく振舞う人々の様子を眺めた。魔物の脅威はどうにもできないけど、陽光が射せば少しは人々の心も晴れる筈だ。早く、かつての世界を取り戻さないといけないな。

 リーヴェはそんな事を考えながら歩いた。


リジェネ「わぁ~、この町の妖精は魚なんですねぇ」

リーヴェ「ん、リジェネ」

リジェネ「すみません。ちょっと気になって」


 道端で会話をする人々の傍らに、カクレクマノミやハリセンボンに似た姿の妖精がいるのを見て言う。ずっと妖精を呼びっぱなしにする人はいないし、ドタバタしていてあまりちゃんと見ていなかった。

 言われてみないと細かい所までは割と気づかないモノである。


露天商「ちょっとちょっと、そこのお兄さん。見て行かない?」

リーヴェ「え、あイヤ……結構です」


 突然通りかかった小物店の人に声をかけられた。匂い袋や容器、筆記類など様々な品を販売している店だった。今は間に合っている品ばかりなので、リーヴェは戸惑いがちに遠慮する。

 リーヴェが露天商に引き留められている間に、リジェネは近くから香ばしい匂いが漂ってくるのを感じた。フラフラと引き寄せられ、気がついたら売られていた串焼きを購入してしまう。


リジェネ「すみません。朝から何も食べてなくて、つい」

リーヴェ「美味しそうだな」

リジェネ「姉さんも食べますか?」

リーヴェ「そうだな」


 リジェネが持っていた串焼きをいったん預けて、追加購入をしに行った。自分で買いに行く、という言葉をいう隙がない程行動が早い。彼が買ってきた物と交換して一緒に食べ歩く。

 うん、美味しい。食感は鶏肉に近い感じか。だが鶏肉ではなさそうだ。


リジェネ「改めて見ると不思議なモノが多いですよね」

リーヴェ「確かに変わった魔法の使い方をしているな」


 魔法を使うことができない彼らは、道具で魔法に近い現象を生み出すことが上手い。

 香りのする泡を発生させている水晶球や、空中に浮かぶオブジェがあり、容器のないプールには妖精たちが優雅に泳いでいる。彼らが水浴びをする場所として各所に備えられた設備だ。実は前の街にもあった。

 この国は、水を使った表現や発想が豊かである。


リジェネ「僕達の世界では、魔法をこんな風に使わないですし」

リーヴェ「身を守ることに使うのが主だからな」

リジェネ「クローデリアさんが見たらはしゃぎそうな景色です」


 二人が知らないだけで、実際にはしゃいでいたんだけどね。

 改めて町の風景を楽しむ2人。今度はちゃんと景色に意識を向けた事でいろいろな発見があった。

 町の人達は意外とお洒落好で、服装だけでなく皆から香水の匂いがするとか。絵も壁に描いてあるモノだけでなくガラスや布で表現したものがあったり、街路樹のカッティングも芸術品っぽくしてある。

 お屋敷とかで見かけるような動物型の樹とか手入れが非常に大変そうだ。この国の人は、物を造形するのが好きなのかもしれない。


 しばらく歩いていると、進行方向に人だかりができているのを発見する。


リーヴェ「なんだろう」

リジェネ「行ってみましょう」

リーヴェ「ああ」


 気になって人だかりを覗いてみる事にした。凄い賑わいだ。

 出し物などをやっているのだろうか。2人は人の合間をかき分けて前へ進む。前のめりに前へ飛び出した2人が見たモノとは――。


2人「え……」

リーヴェ(あの見覚えのある姿って)

クローデリア「ふふふ~、行きますよぉ」


 ――バシャンッ、チャプン。

 空中に浮かぶ水場の中を楽しそうに泳ぐクローデリアの姿がった。むろん人魚形態で。子供達が、人魚姫だ、と歓声を上げている。ショーだと思っている人もいた。

 どうやら、リーヴェ達よりも早く外出していたようである。


 クローデリアが水中からジャンプして、また水中に戻り、魚の妖精達とダンスを披露。魔法を使って音や光の演出までして見せた。本人はかなり上機嫌だ。

 彼女が泳ぐのに邪魔だと置いた上着や荷物の中に、通行人がチップを入れていく。本人に意図があったかは知らないが、完全に旅芸人の公演会場となっていた。


 調子が上がったクローデリアが自作の歌を披露。物語調の内容を語る歌だ。リーヴェ達も、初めて聞く歌に思わず聞き入る。

 しばらくして歌が終わり、水から跳躍して着地した彼女が丁寧に礼をした。周囲から盛大な拍手が響く。演技の終了を感じた観客達が散っていく中で、2人は客に笑顔を振るまう彼女へ近づいた。


リジェネ「素敵な演技でした」

リーヴェ「私は特に最後の歌がよかったな」

クローデリア「ありがと~、2人とも見て下さってたんですねぇ」

リーヴェ「歌っていた物語のタイトルは何ていうんだ?」

クローデリア「アレは『勇者の旅路』と言いますわ~」


 クローデリアの話では、地上界の人々には勇者や英雄の冒険譚を歌ったものに人気があるらしい。偉業を成した人の伝説などに憧れるからだろう。

 カンディテーレ共和国ではあまり公演の場を設けられなかった。治安が悪かったからだ。


リジェネ「また聞きたいですね。今度はラソンさん達も一緒に」

リーヴェ「いいな。クローデリア頼めるか」

クローデリア「わたくしで宜しければ、喜んで!」


 荷物をまとめたクローデリアを伴い、リーヴェはもう少し散策を続ける。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード36  暗黒人について】

 サリナ戦を終えた一行は、今回戦った2人の暗黒人について考えていた。


リジェネ「あの人達が暗黒人、なんですよね?」

リーヴェ「その筈だな」

ラソン「クローデリア、本当に暗黒人だったのか」

クローデリア「おそらく間違いありません」

セレーネ「まあ確かに、最後のほうは変身したりで納得できなくはないけど」


 最初は自分達とさほど変わりがないように見えた。ふと対峙したホッヴォ郷の事を思う。

 警察に連行されてから対面させては貰えてない。それ以前に、無事意識が戻ったのかさえ不明だ。


リーヴェ「日を当たらめて、面会できないか頼みたいな」

リジェネ「会わせて貰えるでしょうか?」

セレーネ「別に警察所から出る訳じゃないし大丈夫じゃない」

ラソン「だが、問題は意識が戻るかだろ。そんなに待ってはいられないぜ」

全員「確かに……」


 リーヴェ達は、準備が整い次第王都へ向かわなければならない。明日目覚めてくれれば問題ないが、かなりの激闘だったし楽観はできないだろう。

 ならば、一度王都へ行った後に改めて訪れるか。時間をおけば面会しやすくなるかもしれない。


リーヴェ「彼女、大丈夫だろうか」

ラソン「おいおい、敵だった奴の心配かよ」


 皆も気持ちはわからないでもなかった。後半は明らかに様子がおかしかったし、敵とはいえ人殺しは気分のいいものではないからだ。

 できれば一度、ちゃんと話をしたいと思うリーヴェ。暗黒人について、知らない事が多すぎる。彼女に話を聞ければ少しは解決するだろう。


クローデリア「彼女の事は確かに気になりますが、やはり当初の目的通りに行きませんかぁ?」

セレーネ「でも気になるのよねぇ」

ラソン「そんな事言ってたら始まらないだろ」

リジェネ「ま、まあ皆さん。ここは冷静に」


 別に落ち着いてる、とラソンとセレーネが口を合わせて言った。あわわ、とリジェネは慌てている。

 拉致が明かないと、全員の視線が口を開いていないリーヴェに集中した。リーヴェは慎重に思案をして答える事にする。


リーヴェ「今は先を急ごう」


 ここまでの道中で大分時間を取られている。リーヴェ達じゃなくても同じくらい時間がかかっただろうが、少しでも早く王都に行く努力をしなくては。一応明日、面会できないかを聞く事にはする。

 他の細かい事は、追々考えていけばいいと皆を納得させて話は終了した。

 投稿が遅くなりました。ごめんなさい。

 うぬぬ……、ゲストキャラの詳細設定を考えるのに熱中しすぎた。でも、まだまだ足りない。

 細かい部分を考えるのにだんだん迷走し始めてしまってます……ポンコツなのに、自分で話のハードルを上げてしまう愚かしさが……。

 今後も、応援の程をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新お疲れ様です! そういえばリーヴェさんの見た目ってイケメンでしたね、自分は女だって否定しないんでしょうか?(←だけどそこがまたカッコイイ!) [一言] これからも応援してます!
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