第63話 大河を越えて
翌朝、普段通りに起床し準備を整える。
パロン「皆さん、出発される前に装備や薬の補充はいかがですか?」
リーヴェ「そうだな、きちんと準備していくか」
この場に行商人のパロンが即席で店を開いてくれた。
以前に立ち寄った町などで仕入れているので、通常は売っていない薬類も取り扱っているぞ。先日のボス戦で消耗したアイテムなどを補充することにした一行。
リジェネ「あ、エリクシールが売ってますよ」
セレーネ「本当ね、今までずっと品切れだったのに。買っていきましょう」
エリクシールは蘇生アイテムだ。魔法薬ため主な生産地は精霊界で、ドワッフ商会を通して各地に売り出されている。
今までは生産側の事情で一時販売ができなくなっていた。しかしこれからは、各地の町や都市でエリクシールが常設発売されるようになっていく。
現在の資金状況と相談してアイテムの購入を行う。
パロン「お買い上げありがとうございました。どうかお気をつけてー!」
リーヴェ「そっちも道中気をつけて」
パロンに別れを告げ、リーヴェ達は川越えへと足を踏み出した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
浮き島の道は、増水と激流で避難していた魔物達がすっかり戻って来ていた。
さすがにすべての戦闘をスキルで回避するのは消耗するだけなので、可能な限りスキルには頼らずに川を渡ることにした。
何度となく強敵と戦ってきたので、今後の事を考え戦闘経験(レベル上げ)も積んでおきたい。まぁ、レベルが上がるかどうかはわからないが。
ラソン「おわぁ、し、沈む!」
セレーネ「ほらほらしっかり。浮き島はササッと渡らないと」
ラソン「オマエはまだ身軽だからいいけどさっ」
中間の島と島の間には、水草でできた大小の浮き島がある。
草の根がしっかり伸びているおかげで、川の流れにも負けず同じ場所に浮き続けていた。が、やっぱり草なので、上でジッとしていると確実に沈む。一度沈んだ浮き島はしばらく経つともとに戻る。
川はそこそこ深く、流れもあって魔物まで徘徊していた。意地でも水没は避けたい。
俊敏なリーヴェやセレーネは、ひょいひょいと飛び移るがラソンは相当苦戦していた。常時飛行しているリジェネや水中移動が得意なクローデリアは論外だ。
ニクスも割と安定して飛び移っている。水草の沈み具合は彼が一番酷いのだが。
フラフラと危なっかしいラソンを手伝いながら進むリーヴェ達。
クローデリア「落ちてもちゃ~んと助けますからぁ」
ラソン「いやいや、こんなトコでびしょ濡れは勘弁だから!」
リーヴェ「ラソン、言ってる間に沈みかけてるぞ」
足元に水が触れる感覚を感じ、小さな悲鳴を上げるラソン。1人だけ非常に騒がしい。
リーヴェがラソンに手を貸している間、リジェネとニクスは周囲の警戒を行っていた。
リジェネ「浮き島の上では襲ってきませんね」
ニクス「奴等とてバカではない。足場の悪い所で戦う事はしないさ」
知能は人よりも下だが、本能的に危険な場所くらいは判別できる。
アズゥルードに生息しているショールトータスは重いので、足場の悪い所ではまず戦わない。水に強くて泳げようが関係ない。奴の最大の武器を生かすためにも、浮き島での戦闘はご法度だった。
飛行できる魔物が生息していれば危険度は増していただろうが。
何とか最初の浮き島群を渡り終えたラソン。
ラソン「はぁ、はぁ、キツ……」
魔物「シャァァァァ――!」
ラソン「わっ、ちょっと待て」
ニクス「泣き言は後だ」
へばっている様子のラソンを見ていたらしい魔物、「ショールトータス」×2と「ショールプラント」×3が出現した。
敵の先制攻撃が炸裂。トータス2体によるのしかかりとプラントの一斉魔法攻撃。
ラソン「はあぁぁっ、シュピーゲル・シルト!」
魔物「っ!!」
勇ましく突撃したラソンが、妖精の作った盾で魔法攻撃を反射。反射した魔法がトータス1体に命中。水属性は効果が薄いはずだが思いの他効いている。他の攻撃は上手く回避した。
ラソン「コイツ、魔法に弱いぞ」
リーヴェ「よし、魔法が使える者はトータス。他はプラントを処理してくれ!」
全員「了解」
ラソンはバフと敵の注意を集めて壁役を続行。他のメンバーは各々に敵を定め向かっていく。
リジェネとセレーネはプラント、リーヴェとクローデリアはトータスだ。ニクスは両者の中間位置で互いの支援を行う。
強靭なトータスの踏みつけを食らうのは、撃たれ弱い2人にはキツイので一定の距離感を意識的にキープ。一方でプラント相手の2人は詠唱の隙を与えないよう、間合いを詰めて連続攻撃で畳みかけた。
セレーネ「だあぁぁぁ、かかってこいやー!」
リジェネ「セレーネさん!?」
怖いくらいの凄まじい気迫だ。単発の攻撃スキルを間に挟みながら、上手く連続攻撃を繋げて猛攻を繰り広げる。アレは拳闘士系のクラスにしかできない戦い方だった。
攻撃の嵐でプラントが秒殺される。
セレーネ(もっと、もっと強くっ)
セレーネ「次行くよ」
リジェネ「は、はい」
リーヴェ「こっちも負けていられないな」
リーヴェとクローデリアも魔法で魔物へ攻撃を加えていく。ニクスの特攻攻撃や、クロスチェインが2人を援護。
ニクス(あれだけ騒がしいと、いい囮だな)
敵の注意が基本的にラソンとセレーネに集中している。おかげで、後衛組が絶えず攻撃を繰り出しても全然こっちに敵の注意が向かない。彼女への被弾がちょっと心配だが、リーヴェとクローデリアがしっかりと見てくれているので問題はなかった。
クローデリア「ライトニング・スフェラ」
リーヴェ「‐数多に輝く光の星々よ。天高く湧きいで、呑み込むすべてを浄化せよ‐ エトワール・ピラー」
魔物の足元から星の奔流が吹き上げ、流れに呑まれた者を攻撃する魔法。光属性の中範囲攻撃で、且つアンデット特攻あり。
魔法の連続ヒットでトータス1体撃破。
リーヴェ「私達も次だ」
クローデリア「ええ」
ラソン「バカ、マナの状態を忘れるな」
セレーネ「そうだった。リジェネ後宜しく」
リジェネ「了解です」
セレーネがいったん下がってアイテムを使用。
敵は残り僅かだ。互いに小さな連携を繰り返しながら戦闘を進める。この後も順調に敵を倒して戦闘終了。レベルが上がった仲間はいない。
ラソン「見計らったように襲ってきやがって……ビビったぜ」
リーヴェ「魔物だからな」
セレーネ「そうそう、さぁ先へ進もうよ」
楽しそうなセレーネは他所に、ラソンはまだまだ続く浮き島の道を眺めて肩を下げた。浮き島の道はまだまだ長く続いているうえに一本道ではない。
ラソン「冗談じゃねーぞ。沈むクセに入り組んでるって」
いったい何の嫌がらせだ。思わず文句を漏らしつつも、手堅く足場を選んで渡っていく。ある意味で綱渡りだった。
しばらくして分岐点に到達した。どちらの道へ進もうか迷っていると足場が徐々に沈み……。
セレーネ「あ、あっ、ああ、ちょ沈むの待って。あたし泳げないのよ~!!」
リーヴェ「皆落ち着け、ひとまず右だ。右へ行くぞ」
ラソン「お、おう」
リーヴェが右の道を腕で示して皆を促す。急ぐが、慌てずに次々と渡っていく一行。間一髪で沈まずに済んだ事に安堵する。
しかし、それもつかの間。再び見計らったように魔物が飛び出した。
ラソン「またかよ――!!」
リーヴェ「行くぞっ」
魔物「ヴォルメデューズ」×2、「ショールトータス」×2と「ショールプラント」×1が出現。
こちらの戦闘も前回と同様の手段で対処。しかし、魔物を半分程倒した頃に厄介な事が起きた。
魔物「シャァァァ」
HPが半分以下になったトータスが、頭や手足を引っ込めてスピン攻撃をしてきた。さほど広くない中間の小島を縦横無尽に滑りまくる魔物。スピードに乗っている所為かかなりの脅威だ。
ラソン「ぐっ、があぁぁ」
リーヴェ「ラソン!」
リジェネ「あのラソンさんが弾き飛ばされたっ」
セレーネ「このっ、イッターい」
残っている敵はトータスとヴォルメデューズの2体のみ。攻撃をまともに食らったラソンにリーヴェが治癒をかける。
ほぼ同時にクロ―デリアが楽杖器に手を添えた。。ニクスもトータスに銃を構える。
クローデリア「大地のマーチ」
ニクス(レーテル・クラウン)
リジェネ「今のうちにヴォルメデューズを!」
セレーネ「うん」
2人がトータスを足止め+攻撃している内にもう1体の対処に向かう。ラソンもすぐに参加して戦闘は無事に終了した。
ショールプラントが「水泡の種」を確立でドロップ。
ラソン「たく、ドイツもコイツも嫌なタイミングで来やがるぜ」
リジェネ「この調子では、小島に辿り着く度に襲ってきそうですね」
ラソン「勘弁してくれよ~」
リーヴェ「気持ちはわからんでもないが先へ進むぞ」
いつもよりも弱気な態度のラソンを励ましつつ移動を再開。
現在いる小島には宝箱があり、ニクスに鍵を開けて貰って装備「青水のシェルシールド」という水耐性のついた盾を入手した。盾はラソンが装備できるが、彼は基本的に盾を装備しないので保留だ。売っても良いし、今後の事も考えて保管しておくのもいい。
順調に探索を続けたが、右の道は行き止まりだった。でも、一番奥に宝箱を見つける。中身はMP補給薬であった。
浮き島の道を行ったり来たりしながら進み、中間地点で小休憩を挟んでから更に川越えを続ける。
クローデリア「また分かれ道ですぅ」
セレーネ「今度はどっち?」
例の如く、浮き島は沈んでいく。選択に時間はかけられない。
リーヴェ「中央だ」
3つに分かれた道の中央を進むリーヴェ達は、またしても行き止まりに到達した。行き止まりが多いな。
でも、先程みたく宝箱があるかもしれない思い嬉々として探索を行う。が、甘かった。
魔物「キキィー―ア!!」
リジェネ「ひあぁぁっ」
リーヴェ「しまった後ろだ!」
セレーネ「嘘、敵!?」
水辺に潜んでいたショールプラントが至近距離で奇声を上げ、間近で聞いてしまったリジェネが気絶する。ショールプラントが稀に使ってくる状態異常スキルだ。
直後、反対方向(後方)から敵の群れが強襲。リーヴェ達は魔物のバックアタックを食らう事になる。
(戦闘は省略)
開幕早々攻撃を受け、味方の1人が状態異常にかかった状態で戦闘開始になったものの、治癒や配置換えなどを行って対処し勝利した。
ラソン「なかなかに手ごたえのある敵だな」
ニクス「あまり嬉しくはないがな……」
リーヴェ「リジェネ、大丈夫か」
リジェネ「はい、皆さんすみません」
セレーネ「気にしない気にしない。よくある事だって」
状態異常を使ってくる敵には慣れてきている。今回は戦闘直前という事で驚いたが、珍しいものでもないだろう。
残念ながら、この一度には何もなかった。気を取り直して次だ。




