表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/619

第62話 野営時の雑談

リーヴェ「ニクス、ちょっといいか」

ニクス「何だ」


 自由行動の際、自分の野営地に向かうニクスを呼び止める。足を止め振り返るニクスに、リーヴェが口を開きかけた時。


ラソン「なぁ、何で戦闘に関わることを黙ってたんだよ」

ニクス「……すまない」

ラソン「いや、謝罪よりもオレが知りたいのは」


 口ごもるラソンに代わってリーヴェが言った。


リーヴェ「言えない理由でもあったのか?」

ラソン「そうソレ。オレ達は一緒に戦ってんだ、1人倒されれば劣勢になる可能性だってあるだろ」


 リーヴェ達から見て、彼がその辺を考慮していないとは思い辛い。

 ニクスと一緒に戦った時間は長くない。必要最低限でも、互いに声を出し合ってはしている。それでも攻撃がどうにか噛み合うのは、彼がこちらに上手く合わせてくれているからではないか。

 それなりに長く一緒に戦ってきた仲間達とでも攻撃を合わせるのは難しいのだ。今でも外すことはある。


 実は、再会した時にスキルの確認をしていた。何故、その時に教えてくれなかったのか。言いそびれたにしても他に言う機会はあったはずだ、と言葉を繋げる。

 ニクスはしばし沈黙し、たった一言。


ニクス「俺の個人的な思い込みだ……本当にすまないと思ってる」


 これ以上、彼は何も言わなかった。彼の雰囲気から、事情がありそうだという事だけは感じ取れる。今の関係ではこの辺が限界だろう。

 リーヴェは話題を変えて、魔物について聞いてみる事にする。先程戦った異様な魔物だけではなく、地上界では今狂暴化が問題になっている事。旅をしている彼の考えを聞いてみたい。


ラソン「魔物の分布移動は、異様な魔物が影響してるとは思うが」

リーヴェ「ああ、だからと言って狂暴化にまで関係があるとは限らない」


 学者ではないし詳しくはわからないが、意見は多い方がいいだろう。


ニクス「俺にもよく解らない。だが、魔物にはどこか近しいモノを感じるな」

リーヴェ「近しいって、君は魔物とは違うだろう」


 ニクスはどこからどう見てもヒトだ。魔物だなんてことはないと思うし、共通点があるとして魔物と共通するモノが人に備わるモノだろうか。

 例えばクローデリア、彼女は地上人や天空人とはかなり身体の造りが違う。でも彼女は人だ。それと同じ事だ。


リーヴェ(彼はいったい、なにを言っている?)

ラソン「ますます訳わかんねぇー」


 ニクスも上手く説明できないようだった。彼の言葉で余計に謎が深まってしまった2人。もう話す事はないと言わんばかりに、ニクスは軽く会釈して歩き去って行く。



 その後、ニクスとパロンから距離をとって集合するリーヴェ達。


リジェネ「ニクスさん、どうでしたか?」

リーヴェ「謝罪してくれる以外は特に」

ラソン「けど、何か事情がありそうだったな」

リーヴェ「ああ」


 結局彼は何者なんだろう。妙な事も言っていたと伝えるリーヴェ。

 内容を聞いたセレーネ達も怪訝な表情を浮かべる。


セレーネ「え、ええ? どーいう事?」

クローデリア「本当に彼がそうおっしゃったんですかぁ」

リーヴェ「ああ」

リジェネ「魔物に近しいモノ……なんのことでしょう」

ラソン「うーん、さっぱりわかんねぇ」


 悪い奴ではない筈だ。隠し事も謎が多いのも問題じゃない。魔物に近しいものを感じるって何なんだろう。魔法にめっぽう弱いって大事なこと、どうして言ってくれなかったんだ。


セレーネ「けど弓使いが打たれ弱いのって、考えてみたら普通じゃない?」


 ニクスは銃も使うが、弓を使う人で打たれ強いっていう話は耳にした覚えがない。


リジェネ「僕の国でもそうですよ」

クローデリア「わたくしの所も変わりありませんわ~」

ラソン「やっぱり、そうなるよなぁ」

リーヴェ「いろいろと気にはなるが、今はこのくらいにしておこう」

ラソン「魔物の事を調べる為にも王都へ急がないとな」

リーヴェ「もちろんだ」


 ニクスの事も、きっと追々わかってくるだろう。


セレーネ「そう言えば、エルピス達はどこ行ったのかしら」

リジェネ「妖精石の中にいないんですか?」

セレーネ「いないよ、ね」

ラソン「ん、ああ。食事の時に出してそのままだな」


 話はお開きにして妖精達の姿を探す。持ち物や金銭の整理をしているパロムの横を通り、野営地内を歩いていく。


リーヴェ「あそこにいるのがそうじゃないか」

ラソン「みたいだな。クライス~」

クライス『キキッ』


 ニクスの傍で毛づくろいをしていたクライスが飛んでくる。腕に止まった相棒に、ラソンはそっと耳打ちする。


ラソン「ひょっとして人払いしてくれてたのか」

クライス『キキィー』


 どうやらそうらしい。ラソンがクライスに礼を言って優しく撫でる。

 セレーネもエルピスを呼ぶが、彼はニクスの傍から一向に離れる気配がなかった。銃のメンテをする彼の傍にピッタリとついて寛いでいる。


リジェネ「随分懐いてますね」

セレーネ「どうして!? いつもはもっと人見知りが激しいのに……」


 セレーネの大声に、ニクスがこちらに気づいて視線を向けた。


ニクス「お前達か。丁度いい、こいつをどうにかしてくれ」

エルピス『グルルルル……』


 エルピスが喉を鳴らしてニクスの腕や肩に身体を擦りつけている。こりゃ、離れる気がないな。ニクスはちょっと迷惑そうだ。身体の大きな妖精だし、ずっと張りつかれるのは疲れるだろう。


リジェネ「好きな匂いでもするんでしょうか」

クローデリア「炎の妖精ですから、火薬の匂いに心惹かれているのかもぅ」

セレーネ「ええ、まさか。そんな筈は」


 ないとも言い切れない。けど……。


リーヴェ「純粋にニクスの傍が落ち着くんじゃないか」


 しつこく構われるのが嫌いだとセレーネ自身が言ったじゃないか、とリーヴェがつけ足す。

 エルピスの視点から見ると、いつも騒がしくて振り回される事が多いセレーネやリジェネの傍は疲れるのかもしれない。クローデリア相手だと、水の性質があるから落ち着かないだろうし。リーヴェやラソン相手には比較的に素直だ。

 うん、割とはっきりしているな。


セレーネ(生まれた時から一緒のあたしより、ニクスのほうが良いってどういう事よ)

セレーネ「仕様がないなぁ、もう。ほら、そろそろ離れようよ」


 セレーネが目線を合わせて手招きしていた。けれどエルピスは強情だ。

 ちょっとイラっとなりつつ、根気よく呼び続ける。ニクスもそっと場所を移動したりするが、ヒヨコの如くついて行ってしまう。君はいつから鳥になったんだ?

 やがて痺れを切らしたセレーネは、エルピスと少々派手に一戦を繰り広げてしまうのだった。


 

         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 【サブエピソード34  パロンの話】

 一緒に準備をしている最中、リーヴェ達は互いに情報交換をしていた。とはいっても、やっている事は雑談に近い。


リーヴェ「パロンはムーナムから来たのか」

パロン「はい。しばらくそこで行商するつもりだったんですが……強盗騒ぎが起きまして」

リジェネ「ご、強盗ですか。物騒ですね」

セレーネ「でも、パロンなら返り討ちにできそうだけどな」


 単独で各地を渡り歩く技量があるなら、並の泥棒に負けはしない気がする。彼が持っている大槌に目をやって、そんな気がしてしまうリーヴェ達。


パロン「普段なら確かにそうです。けれど、今回出た強盗は普通ではないという噂が」

リーヴェ「どんな風に?」

パロン「私もチラッと見かけた程度でしたが、あれは普通の地上人ではないですねぇ」

ラソン「オマエら何の話をしてるんだ」

リーヴェ「ムーナムに普通とは違う強盗が出たらしい」


 は? 、と言うのがラソンの返答だった。泥棒に普通も変もあるのか知らないが、とにかく今は残りの作業を一通り済ませてしまおう。すっかり手が止まっていたようだ。

 ラソンに促され、作業に一区切りがついてから会話を再開した。


パロン「強盗は町を去ったそうですが、しばらくアズガルブ方面へ行こうかと思いまして」


 パロンの話では、アズガルブへはベルルの森を抜けた先にある山道を通って行けるそうだ。山道へ行く前に、一度テールル村で補給や仕入れを行うと言った。

 テールル村には、「ゴルゴアの実」と言う精霊人に人気のある木の実がある。


セレーネ「でもあの実、食用じゃないわよ」


 ゴルゴアの実は殻も果肉も非常に硬いうえ、強烈に苦いのだ。おまけに微量の毒があり加熱せねばならず、加熱するとただでさえ強い苦みが増す。

 ウオカズラの好物とされ、村でも「灯篭送り」という行事で使うもので売り物ではない。ドワッフ商会が交渉の末、特別に売って貰っているのである。


パロン「僕達には害どころか、身体に良いんですよねぇ」

リーヴェ「味覚の違いもあるだろうが、いろいろと違う部分があるんだな」


 種族の違いからくる発見を目の当たりにするリーヴェ達だった。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 夜、皆が寝静まった頃。

 ――チュピピ、ピチュチュッ。と特徴的な鳥の高い鳴き声がひそやかに響く。


ニクス「……っ!」


 ニクスは目を覚まし、そっと野営具の敷居布を僅かに持ち上げる。

 ネズミ穴程の隙間を潜って小さな鳥が入って来た。渦巻き状の長いアホ毛が頭頂部に生えたカナリア似の青い鳥だ。瞳は幼馴染とそっくりのルビーピンクで、胸の辺りに同色の宝玉がついている。

 こいつはシャンヌの使い魔ファーネだ。いつもなら通信で事足りる筈だが、使い魔を使ってくるという事は……またか。

 よく見れば、ファーネの足には文筒がつけられている。すぐに中身を確認。

 ――ラジアスの花園にいる。相談がしたい。


ニクス「あいつ……」


 ニクスは専用の紙面と万年筆を取り出して手早く返事を書く。即帰還か、現場待機と。

 返答をもたせたファーネを送り出し、周囲の様子を確認してから静かに川の畔へ歩いて行った。川の向こう側を凝視しながら思案する。左から右へ風が吹き、ふわりと彼のロングケープが広がった。


クローデリア「あらぁ、ニクスさん」

ニクス「クローデリア、いたのか」

クローデリア「今はわたくしの時間ですもの。眠れませんかぁ?」

ニクス「いや、少し風に当たろうと思っただけだ」


 一度は彼女に向けた視線を再び川のほうに戻す。数時間前とは違い、静かなものだ。


クローデリア「明日はいよいよ川越えですわね~」

ニクス「楽しそうだな」

クローデリア「ふふ、そんな事ないですよぉ」

ニクス「…………」


 クローデリアが水辺で身を屈めて指を水に浸す。気持ちよさげに目を細めて微笑む。


ニクス「なぁ、もし……」

クローデリア「はい?」

ニクス「……いや、何でもない。お休み」

クローデリア「はぁい、お休みなさ~い」


 ニクスは再び自分の野営地へ戻っていった。

 何度か書き直したのにまだ不安が残りますが、何とかまとまったと思います。おかしな所があったらすみません……。

 粗が目立ちそうで不安どころか、自信を無くしそうです……投稿して大丈夫なのかと迷走してました。後書きを書いている段階でも迷ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ