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TIPS There are two souls in the human body. ~Side : Kiyoshi~ その3 ※名前変更 新間 一郎 ⇒ 佐々江 清心(ささえ きよし)

 清心は頭上にクエスチョンマークを浮かべて球磨川にこっそり訊いた。

「あの、男性ホルモンと女性ホルモンが両方体の中に存在するなんて、ありえるんですか?」

「……あ?」


 球磨川はまじまじと清心の真顔を見やった後、「はあぁ」と盛大なため息を吐いて言った。

「オマエ、よく医者になれたな」

「ど、どういうことですか、それ?」

「人間は男であれ、女であれ、男性ホルモンと女性ホルモンの両方を持っている。これは医学会じゃ太陽は東から登って西に沈むってぐらい常識だぞ」


 清心は「へー」と呟きながら、聞いたことをスマホにメモした。

 その間も至里は機械的な響きの細い声で話を進めている。


「男性ホルモンと女性ホルモン――その量の偏りが性別を決定づけている。近年は女性が社会進出したことで男性ホルモンを多く有する女性、女性ホルモンを多分に持つ男性が出てきたという話も聞く。しかし真実は、より私達の常識とはかけ離れた場所にあった」


 スマホをしまった清心が目を上げると、スクリーンに映された紙が別のものになっていた。

 紙面には人間のシルエットが描かれ、周囲にドイツ語で様々な文字が書かれている。

 そこには清心の知る身体の構成要素たる単語が並び、それに未知の言葉がいくつか混じっていた。


「ここに書かれているものを全て知っている者はいないだろう。見知らぬ単語は私や他の研究者が便宜的につけたものだからだ」

 初めて会場内にざわめきが起こった。

 今の発言が意味する事実は、彼等に驚きをもたらすのに十分すぎた。


「私はここ五年間、男性ホルモンと女性ホルモンについて米国と共同で研究を進めていた。そこで面白い事実が発覚した」

 至里はポケットからポインターを取り出し、スクリーンの文字を赤い光線で示した。

「男性ホルモンと女性ホルモンが有機的にかかわる体内成分を比較し、再分類した結果、男性と女性の間にホルモン量の差はほぼ同程度だったのだ」


 誰もが呆気にとられる中、清心がおずおずと挙手をした。

 本来、発表中の質問は禁じられている。

 しかし異常な空気が満ちた現状では注意する者は――マナーなど平時の常識を意識できる者など――おらず、至里も気にした風もなく、彼に問うた。

「なんだ?」

 発言を許された清心がちらりと球磨川を見やると、彼は鼻から息を吐き出して、立てよというようにジェスチャーを送った。

 清心はぎこちない動作で立ち上がり、どもりがちな調子で訊いた。

「つっ、つまり源先生は、男性ホルモンと女性ホルモンはその、えっと……男女どちらも同等の量を有しているというわけですか?」

「そういうことだ」


 会場内が再びざわめきで騒がしくなる。

「……そ、そんなバカな」

「男性ホルモンと女性ホルモンが……同等?」

「いくら源先生でも、それは……」


 至里は聴衆に軽くうなずいてみせて言った。

「信じられぬのはもっともだ。しかし事実である」

 初老の医師らしき者が、挙手して発言した。

「ですが、現にこうして男性と女性で体の作りは大きく違いますよ」


「君は働きアリの法則を知っているか?」

 医師が怪訝そうに眉根を寄せる。

「ええ、まあ。一般的常識の範囲内なら」

「なんですか、それ」

 問うてきた清心を至里は無機質な目で見やり、聴衆に向けて話す時とまったく変わらぬ調子で説明しだす。


「働きアリというのは、真面目に働いているのは全体の2割程度だ」

「えっ、働きアリなのに!?」

「そうだ。次いで適度に働く個体が6割。残りの2割のアリはずっとサボっている」

「へー。なんかズルいですね、サボってるヤツ。追放されたりしないんですか?」

「実はサボってるアリってのも必要なのだが……後は自分で調べてくれ」

「あ、はい。わかりました」

 清心がスマホを取り出すのを横目に、医師は質問を再開した。


「その働きアリの話が、先ほどのホルモンの話と何か関係あるんですか?」

「ああ。照らし合わされば、おのずと答えは出るはずだ」

「照らし合わせればって、……えっ!?

 はっと誰もが目を見開いた。清心もその空気を感じ取り、スマホから顔を上げた。

「……それってつまり」

 消え入りそうな声を出す医師に、至里はうなずいてみせて言った。

「男性ホルモンがサボっていると、女性になり。また女性ホルモンがサボっていると男性になるというわけだ」


 ドクンと心臓が耳元で鳴るのを清心は訊いた。


「男性と女性の違いは――、ホルモンの働き具合の差でしかない」


 繰り返すように至里が言った途端、聴衆は円く開いた目で周囲を見やった。

 会場内には男と女が混じって座っている。

 二つに区分された存在――しかしその境界を隔てている壁は、彼等が思っていた以上に薄いものだった。


 清心はごくりと唾を飲みこみ、震える手を肩まで上げ、至里を見やって言った。

「あの、も、もう一つ……いいですか?」

「なんだ?」

 明瞭な心臓の収縮音を耳で聞きながらもどうにか気持ちを落ち着けようとしつつ。

 乾いた喉から声を発し。

 湧いて出た質問を、至里へと投げかけた。

「もしもそのホルモンバランスが崩れたら、性別の反転もありうるんですか?」


 しんと場が静まり返る。

 誰もがじっと至里へと視線を向けていた。

 清心は固唾を飲んで、答えを待った。


 やがて至里は、ゆっくりと口を開き、回答を発した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この物語はフィクションです。

実際の医学・科学的な根拠に基づいて書かれているわけではないことをご承知ください。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


魔光「目覚めよ、我が身に宿りし深淵なる闇の力よ。ダークネス・オブ・ブラッド!!」

ハルネ「わー、なんかカッコイイねー」

魔光「ククク、そうか?」

ハルネ「うん! ねえねえ、そのだーく……なんとかって、ハルネにもあるのかな?」

魔光「我が眷属となる契約を結べば、すぐさまそなたも目覚めるだろう。常闇とこやみに生きる術とその力に」

ハルネ「わーい、結ぶ結ぶ!」

真古都「……そういういたいけな少女をたぶらかすんはやめてくれへん?」

魔光「何を言う。我は真実を述べているだけであるぞ」


乙乙乙「……次回、『TIPS There are two souls in the human body. ~Side : Kiyoshi~ その4』

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